連載 平松慶のオフショアワールド vol.4
ジギング講習。青物攻略からジギング初心者への基礎知識まで。
PEラインに結束するリーダー素材について
オフショアジギングをする上で必ず、PEラインとリーダー、メタルジグの結束が必要になります。メインラインのPEラインは、糸の伸びが6~7%とされており、ほぼ伸びないと思って間違いないです。伸びないからラインから手元に伝わる感度は高く、さらにその伸びない性能から、ロッドやリールで操作する動きをメタルジグに伝えやすい。これにより、水中にあるメタルジグをよりベイトの様にアクションさせることができ、更には伸びが少ないことで、より深いエリアをメタルジグで探ることができるのです。今回は、メタルジグとPEラインとの間に結束するリーダーについて解説していきます。
PEラインの効果と、リーダーの役割り
PEラインは伸び率が低いことで、感度が良く、目に見えない位置でメタルジグがどのように動いているのか、水中の様子などもラインを通して知ることが安易になります。また深いエリアでのメタルジグ操作がしやすいということが言えます。この2つの要素が、現代オフショアジギングのスタイルを作り上げました。
PEラインは、水中で潮の抵抗を受けながらリーダーからジグへと動きを繋げていきます。ロッドをしゃくる事でメタルジグに命を吹き込むのですが、ただベイトがいるポイントでPEラインを直結すると、PEラインのシルエットが出てしまい、ターゲットの捕食欲を低下させてしまいます。またPEラインが発する水中での水切音が魚へプレッシャーを与える、とも言われています。ちなみにPEラインの直線強度はナイロンラインに比べ、比べ物にならない程の強度がありますが、弱さもあります。PEラインの構造は、細い素材の高分子ポリエチレンが編まれて出来ており、基本的には細い糸が集まり1本の線になり出来上がっています。そのため、擦れに弱い特性があるのです。そのようなことから擦れに弱いPEラインを、伸びない金属パーツ(うち抜きリングやジグのアイ)にダイレクトに結束してしまうと、本来持つPEラインの強度は発揮されません。テスト機器を使用しデータ取りをしましたが、この場合、リーダーを入れる、入れない(PE直結)での強度はあまりに歴然の差でした。こうした経験を基に、PEラインとリーダーとの結束スタイルが完成したといえます。
PEラインでキャスティングゲームを行う人なら理解出来ると思いますが、PEラインに小さなコブ(結び目)に気付かずに魚がヒットした場合、一瞬の強い衝撃でPEラインは簡単に切れてしまいます。これは、ラインに伸びがない分、パワーの衝撃が結び目へ一点に掛かってしまい、力(パワー)の分散が出来なくなるからです。また、根や魚体などにラインが擦れた場合、リーダーを付けておくことで擦れに対して、多少なら対応するということが言えます。擦れはPEラインの弱点でありますが、理解した上でうまく付き合っていくことでPEラインの効果を感じられます。
リーダー素材はナイロンか、フロロカーボンか? また結束は?
ジギングにおけるリーダー素材はどんなものが良いのでしょうか。ショックリーダーには、ナイロン素材とフロロカーボン素材が存在します。ナイロンラインの特徴は、扱いやすい、軟らかい。フロロカーボンの特徴は、張りがある、硬さを持つ。簡単に説明するとこのようなものになります。それではジギングにおける素材選びですが、ナイロンリーダーとフロロリーダーとをどちらを選択するか。ズバリ「フロロカーボン」にジギングでは分があります。ではなぜナイロンリーダーを勧めないのか。平松流の考えを解説したいと思います。
PEラインとリーダーとの結束は、摩擦系の結束が一般的に採用されており、PRノットやFGノットと言った結束方法になります。顕微鏡レベルの話ですが、この摩擦系結束をナイロンリーダーで行うと、結束時にナイロン素材に対してPEラインが締め込み過ぎてしまうことがあり、キズなどで強度が落ちると思っています。締め込み過ぎなければ…と思いますが、それではすっぽ抜けなどのミスに繋がります。また締め込み過ぎた結束は、ジギングを行っている際に紫外線でナイロン素材が膨れ、劣化を起こします。伸びがある分、ナイロン素材が水分を吸収してしまうことも起こります。これらは結んだ直後には発覚せず、使い続けることでどんどん結束強度が低下していくと感じています。
フロロカーボン素材は、いわゆる「ハリス」として使われて来た素材であり、ナイロン素材に比べ、伸びが少ない特徴があります。そして摩擦に強いのも特徴です。結束時に締め込んでしまうと、もちろんナイロン素材と同じ現象は起きてしまいがちですが、そもそもフロロカーボン素材は硬さを持っており、締め込む際にも適量の強度があります。これが私がフロロカーボン素材を選択する理由にもなっています。
また私はメタルジグを開発する際、ダイビングをして水中でメタルジグの動きを確認しています。その時に、太陽光が強く水色が綺麗な沖縄の海域でテストを行っているのですが、そこで人間の眼で確認したことを伝えたいと思います。
まずナイロンリーダーは、水中では太陽光を反射して認識することが出来ました。水中でジグの位置がすぐにわかるのです。それに対してフロロカーボン素材のリーダーは、太陽光を吸収し、透ける様な状態でした。人間の視野と魚類の視野とは違いがありますが、この時点で明らかにナイロンリーダーの方が「魚に気付かれやすい」と感じたのです。
また、水中でみるPEラインは、真っ黒ではっきりとした針金のようなシルエットが確認できます。水中でのPEラインの存在は相当なものでした。そのため、目立つPEラインの先に結束する素材は、できる限り魚に見にくいもののほうが良いのでは?と私は考えています。あくまでも人間の視覚によるものですが、ジギング自体、水中を想像し、PEラインから伝わる変化で攻め方を組み立てていかなくては成立しないゲームです。そのようなことから、自分が目で見て信用できる形を、自信を持って推奨することが出来るのです。
▼ ナイロンリーダーの水中(手元)の様子をご確認ください。
▼ フロロカーボンリーダー水中(手元)の様子になります。
船上でリーダーを扱う際、ナイロンラインはスプールから離れてもそれほどクシャクシャにはなりませんが、フロロカーボンリーダーは素材に張りがある分、スプールから解けたりした時は、リーダーがすぐにスプールから出てしまうことから、取り扱いが面倒です。ただ、アングラー側が魚を釣るために優先すべき事は、「いかに釣れるか」という部分のため、船上でのリールの扱い(スプール)は気をつけるようにしています。
またリーダーの長さですが、これは、私は最低でも6ヒロ弱(ひとヒロ150cm)9m弱は入れるようにしています。これも水中でPEラインの存在がこれほどまでハッキリと見えているのを知ったため、その長さにしました。慣れるまでは扱いやすさを考えると、4ヒロほどが良いのではないでしょうか。
平松流のマストパターン
ジギングを行う際、考えなければならないのは「船の下でメタルジグはどのように動いているのか」ということです。トップウォーターゲームなら、水面、または水面付近でプラグを演出して魚を誘い出すことが出来ますが、ジギングはそうはいきません。あくまでも想像でメタルジグの動きを演出してやらなくてはならないのです。
ジグをベイトのように演出する、ファイト時に心配せずにやりとりするには、リーダーへの信頼がないと成立しませんので、リーダーへの配慮が重要です。魚をヒットさせ取り込む。ジグを外して、再び海にジグを投入する。この時に、リーダーにキズがついていないかを確認する。取り込みで暴れる様なファイトをした後などは、船底塗料などがリーダーに付着していないか、そういった気遣いも大切です。
またジグとリーダーの結束ですが、私は2本をリングにかけて結ぶ結び方をしています。様々な結束方法がありますが、タックルを組む際に、自身のシステム強度も陸上で確認しておくことも重要です。安心してファイトが出来る準備をして挑んでください。
またPEラインとリーダーの太さの選択ですが、メインPEラインに対して、私は同強度から1.5倍までの強度を目安に使っています。例えば、PE4号であれば、同じ強度の60ポンドクラス。魚礁や根の荒いポイントはファーストインパクトで魚を上に向けたいこともあり、根ズレ対策したいので、少し太い物を結束します。それ以上となるとジグの動きにも影響が出ますので、結束しません。。その分、リールのドラグを信じてファイトします。逆に食いが渋っているような場面では、メインPEラインの号数よりもリーダーサイズを落とし、長さを通常よりも多く取ることもしますが、これはまた扱うためのテクニックが必要になります。あくまでも先に書いたようなセッティングで、結束技術の向上、船上でのラインチェックを徹底してもらうことが先決です。
今回は、ジギングで見えない水中の様子を一番感じ取れる「ライン」について解説しました。なぜナイロンラインリーダーを勧めないのか、どうしてフロロカーボン素材が良いのか、などといったことを理解した上で、アングラーが水中の様子がわかりやすくする事に焦点を絞りました。ロッドの硬さや長さ、リールのサイズやギア比、ドラグの重要性、ファイトの仕方、ジグのしゃくり方…。ジギングにはたくさんの覚えなくてはならない箇所があり、これらを理解できるようになった時に、もっと水中の様子が見えてくると思います。私も最初は、ワケがわからないままに、重いジグ、無茶なしゃくり、船上でのノーチェックなどをしては、大型魚にやられて来ました。この経験から得たノウハウをこの先もお伝えして行きたいと思っています。