オフショアワールドvol.20
オフショア実釣。春の長崎県対馬
もうすぐ春ヒラマサ本番! その攻略と
実感した対馬のポテンシャルの高さ
前回の連載では、1月中旬に入った長崎県対馬での真冬でのヒラマサゲームをお伝えしたが、桜が開花した3月下旬に再び入島。今回は真冬から春になり、海の状況がどの様に変化したか、そしてその状況にどのように対応して狙うか、などの課題に取り組んできた。ホームグランドの玄界灘、長崎県対馬海域。今回はその様子をお伝えしたい。
長崎県対馬。通い慣れたフィールドの匂い。
対馬の桜が開花し始めた。学業諸君らは区切りとなる卒業式を終え、新しい門出へと向かい。海も通い慣れた対馬海域が真冬からどの様に変わっているのかが楽しみ。「春の気候はオンナ心」。誰が言ったかは知らないが、気まぐれな天候に釣り人も振り回される時期である。出発前から毎日カウントダウンしながら天候をチェック。釣行4日前の予報は、予定していた3日間の海が絶望的であった。3日前になると1日はベタ凪の日予報が出た。2日前には2日は釣りが出来る予報。こんな具合に、毎日コロコロと天候が変わり天気予報に振り回される。出発当日、機内から玄界灘を見渡すと風波は白く見えるが十分に釣りが出来る様子を感じ取れた。現場に行くまで落ち着かない春らしい天候で、7人のアングラーは無事対馬入りとなった。
今回は通い慣れたベテランアングラーと、遠征釣行初めてのアングラーが半分ずつ。面白い組み合わせだ。船はいつもの春漁丸。狙いはヒラマサ、ブリをキャスティングとジギングとで狙う。朝2便で対馬入りをした私達は、お昼前から出船。東の風が強い初日は、風裏となる対馬西側沖へと向かうこととなった。
魚礁と瀬周りのジギングでの狙い方。
ウネリなし、晴れ、ベタ凪。このスペシャルな状況に同船アングラーは気持ち良さそうだ。スタートは西側沖上対馬美園沖の魚礁から。真冬のままの状況ならば、ボトムを意識して探るが、春になると中層も視野に入れての探りが必要となる。
皆、それぞれにジグを落としていく。狙い方はドテラ流しであるため、どの様に層をキープして探るかが重要となる。船はゆっくり流れていた。潮も良い具合に流れている。これはジグをしゃくれば自ずと把握できる。魚礁は反応があるものの、ヒラマサは口を素直に使ってくれない。早々に見切りをつけ瀬周りへと移動した。
水深70m前後の瀬を流す。水鳥が騒ぎ始め、水面は足の速い魚が右往左往に動き回っている様子を想像する。春の雰囲気を感じ取りながらのゲーム展開だ。このシチュエーションでは、層を広く探るようにメタルジグを操作していかなくてはならない。時々水面でボイルが起こる。ただ鳥が定まらないのでキャスティングまでにはいかない。私はジグの層を上層まで意識して探っていった。予想は的中した。ベイトを追い回すヒラマサを理論的に組み立てた釣りでヒットさせることができ、満足感を得た。春らしい海になっている。その後は魚礁と瀬周りを交互に狙っていった。初日は天候に恵まれ、春の釣り日和に全員が集中したのだった。
女性アングラーと巨大魚
その夜、爆風と土砂降りの雨。夜中はホテルのガラスを雨が打ち続けていた。出船時間を遅らせた2日目は、東沖へと向かった。上対馬比田勝沖から開始。夜の嵐は全く感じられなくなっていた。日夜逆だと釣りは成立していなかっただろう。これが春の季節。少しのタイミングで気候の様子が変化する。季節の変わり目の難しさをつくづく感じた。
比田勝沖の魚礁ではポツポツと小型のヒラマサ、ヤズ(イナダ)が当たってきた。ボトムを意識して探るが、今ひとつパッとしない。そんな盛り上がらない釣果に痺れを切らし、潮の時間を計算した春田拓也船長が動いた。海は完全なベタ凪であるため大移動。竿崎方面へと向かう。チャンスに賭ける思いは、アングラーも同じだ。
探ったのは水深130m。赤サバ(ハチビキ)が混ざるボトムは、予想以上にヤズが口を使ってきた。船中飽きない程度にバイトが続く。ちなみに今回の釣行メンバーで古くからの釣り仲間が同船してた。伊豆網代港の森竜丸に嫁いだ森野玲子さん。今は船宿の女将さんとしてハキハキと毎朝港で動き回っている。彼女が「ヒラマサの勉強をしたい」とのことでツアーに参加したのだ。その玲子女将にとんでもバイトが訪れた。
こんな激しいバイトは私自身見たことがない。あまりにも衝撃的なバイトに、思わず見入ってしまった。ラインは引き出され、そして一時、全く動かなくなった。10分、15分と巻けないリールのハンドルを、少しでもと必死に巻く。春田直実船長がサポートについてアドバイス。「ゆっくりでいい、ゆっくりやろう」。玲子女将を優しく励ます。
そして30分が経過したタイミングで再び魚は走り出した。振出しに戻ったが、そこからはじわりじわりとハンドル半回転ずつだが巻けるようになってきた。ロッドはPENNトルク-63M KEI Hiramatsuモデル。無理せずにリフトを続ける。ハンドルを半回転でも巻き続ける。そして残り20m辺りからは潮下にラインの角度が変わり、魚が浮き出した。そしてもの凄い魚影が見えてきた。巨大ネットとギャフで取り込む準備。拓也船長が頭をネットに入れ、私がネットの枠を握り、ギャフで直実船長が魚に打つ。3人で船に上げ、玲子女将の戦いは終わった。
キャッチされたのは巨大イシナギ。とんでもなく大きい。春漁丸では泳がせ釣りで90kgのイシナギを過去にキャッチしているが、それと見た目は同サイズだと船上は沸く。当然私も初めて見るサイズ。これをジギングで補助なく一人で釣りきった玲子女将。PENNトルク-63M KEI HiramatsuモデルにPE4号、リーダーはサンライン・ツナギート70lb、K-FLAT KEI-JIG 235g。フックがしっかりとイシナギの口を貫いていた。恐ろしいと感じるほどの巨大なイシナギ。帰港後実測80kg。春のヒラマサを楽しむために入った対馬釣行は、レコードサイズのイシナギ80kgで幕を閉じたのであった。
平松流のマストパターン
今回もキャスティング、ジギングと状況に合わせてヒラマサを追った。春の釣りで一番気にするのは風。これを把握して釣りを「する、しない」で大きな違いが出てくる。風が吹くと何を気にしなくてはならないのか、どういった心掛けをしておかねばならないか、を頭の片隅に置き、挑んで欲しい。
普段ならあまり飛距離が出ない状況でも、追い風に乗せてプラグをキャストすれば、ルアーはよく飛ぶ。自分がどの辺りで誘い出して喰わせるかを常に意識しておかないと、根頭先でバイトがあった時に根擦れによるラインブレイクとなる。飛距離の確認が大切になり、どこで喰わせたら良いか(バイトポジション)を見極めてキャストする事が大切だ。
ジギングは、メタルジグの重さが重要になる。例えば「水深50mだから、160gでいいや!」と決めつけてジグセレクトしたのでは、ジグのウエイトが足りてない事に気付きにくい。風が強い時のドテラ流しでは、船も流されている。船が風に押された流れは相当なもの。この時に起きているのは、子供の頃に遊んだ「凧上げ」と同じ原理である。一人が離れた位置から風に当てて引きながら走る。凧上げの凧は風を抵抗に、頭上へと上がっていく…。この走る一人は船位置、凧上げの凧はメタルジグとなる。メタルジグは本来通したい層に位置せず、表層へと浮く。浮いてしまえば、狙いたい青物が狙えない。これを気付けば、ジグウエイトも重い方が良いという理論が理解できるのだ。これらを知ることが《マストパターン》となり、ジグの面白さに繋がっていく。
3月下旬のヒラマサ狙い。Goldicツアーとしてはキャスティングでヒラマサを2尾キャッチし、ワラサやヒラマサ等、飽きない程度の釣果であったが、参加者の皆が楽しめたのではと思っている。そして何よりも80kgのイシナギをジギングでキャッチした森竜丸の女将さん森野玲子さんの頑張りが輝いた釣行会であった。対馬はいよいよ春本番になってくる。私は再び春マサを求めて4月中旬に対馬入りする予定。年々、春のヒラマサのピークのタイミングがズレてきていると感じており、私の口グセだが「現場に向かわなくては、わからない」と改めて感じている。GWまでにもう一度、ヒラマサを求めて動き、ここで報告したいと思う。
ジギングタックル
ロッド:PENN・スラマーPHK-63ML(プロトダイプ)
スラマーPHK-63M
リール:PENN・オーソリティー6500HS
スラマーDX6500
ライン&リーダー:サンライン・X8フルコンタクト4号&ツナギート12号、14号
ルアー:K-FLAT・Gummy200g、220g
Gummy-fat180g、200g、235g
KEI Jig200g、235g
KEI Jigシャープ200g、235g
ベイトタックル
テストベイトロッド:5.8MHクラス
リール:PENN・ファゾム2 2スピード25NL
ライン&リーダー:以降は、スピニングタックルと同じ
フック&パーツ:オーナー・ハイパーワイヤー#7、ソリッドリング6.5mm
JS-39 ブルーチェイサー11/0、9/0
偏光レンズ:グレンフィールド ZEQUE “STELTH”
イシナギ森野玲子さんジギングタックル
ロッド:PENN・トルクPHK-63ML KEI Hiramatsuモデル
リール:シマノ・ツインパワー8000
ライン&リーダー:PE4号&ツナギート70lb
ルアー:K-FLAT KEI-JIG 235g No.15 グローヘッド
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