連載 平松慶のオフショアワールドvol.24
オフショア実釣
冬の長崎県対馬でヒラマサ、ブリジギングで狙う
2025年が始まり、最初に選んだ遠征先は長崎県対馬。恒例ともなっている真冬1月の対馬釣行は今年も実施。釣り業界が横浜の釣りフェスで賑わっていた同じタイミングで、3日間、ヒラマサを求めてジギング中心に対馬の海を楽しんできた。今回はその時の様子をお伝えしたい。
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シーズン毎のヒラマサの動きと、真冬のヒラマサの行動予測
対馬の冬のジギングは魚礁狙いが主軸になる。まずは一年を通じて対馬のヒラマサ狙いを大きく分けてみたい。
春は、魚礁から少しずつ離れ、瀬周りやサンマなどのベイトを意識して上層まで動き回る。また産卵を控えており、捕食も活発化する。
夏は、アフタースポーンから落ち着き始め気温等の上昇に伴い、水温が安定した深場で過ごす個体とシャローで活発に動く個体とが分かれる。シャローエリアの潮通しが良いポイントは、根をテリトリーとし潮の流れで捕食する行動を起こす。
秋は、表層からボトムまでベイトが広く動き回るシーズンで、ピンスポットでの狙いが大変な時期。暑い夏が次第に落ち着くものの台風通過が多くなり、海中が攪拌されることで、海中プランクトンなどが多く発生する。それを好んでベイトとなる小魚が散らばる様に動き、ヒラマサ狙いも広い範囲を探っていくスタイルになる。
冬は海水温がゆっくり低下していくにつれ、ヒラマサがベイトを捕食しやすい魚礁などがテリトリーになる。冬場はヒラマサが余分な運動量を減らし、分かりやすい場所に生息。簡単に言えば、寒いからあまり動きたくないのだ。しかし、腹は減る。そのためあまり動かなくてよく、喰いやすいベイトが集まる魚礁で過ごすという理論になる。魚礁は、水深のある潮通しが優れた場所に設置され、魚の移動を留める役目になっている。だから冬場程、的確にその結果が現れるのだ。
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島の周囲に魚礁が数多く設置されている対馬。冬場は、この魚礁をポイントにしたジギングが面白い。
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どのタイミングで、どの魚礁に入るかが大切。船長の経験と読みを頼りにしつつ、アングラーはどこに魚が着いているか予測して探ることが重要となる。
1月のヒラマサ狙いは魚礁狙いが中心になるのは、これで理解してもらえただろう。対馬は東側、西側、下の豆酘崎から上の比田勝まで、島を囲むように魚礁が設置されている。しかし、どの魚礁に行ってもヒラマサが喰うわけではなく、そこは潮の上げ下げや風の向きなどといった条件に合わせて、上手く船を入れることが出来る船長の経験値にかかってくる。そして冬の対馬ジギングは、この魚礁狙いが面白い。船の流れ、ジグが入っていく角度、風の向き、そんな事を考えながらの狙っていくというのが魅力なのだ。
通い慣れた玄界灘、対馬沖の「冬のジギング」での狙い方
今回の対馬は、3日間を通して無風、ベタ凪、ピーカンと、ミラクルと言うべき恵まれた天候で釣りを展開することができた。贅沢を言えば「もう少し風が吹いてくれたら…」と欲すら出てしまう程。真冬の対馬でこれほどの好条件は、これまで数多く対馬を訪れている私でも、なかなか当たらない。
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冬場に珍しく恵まれた天候。同行メンバーは、3日間フルに探り通した。
ポイントは、東沖。厳原沖からアガミ沖に広く多く点在する魚礁と、いくつかの瀬周り。これを細かく探りながら釣り動いていく。アガミ沖から下対馬周辺の魚礁は、水深90m前後。私は同じセットの2タックルで、メタルジグのウエイトだけを変えて用意した。ロッドはPENN スラマージギング SLSJ-63Mに PENN オーソリティ6500HS。ラインは、PE4号にフロロリーダー50lb。全く同じ2タックルで、ジグウエイトを180gと250gにした。
魚礁狙いで、私は2つの狙い方を必ず行う。まずは自身のマスターウエイトとして200gで潮の流れを最初に把握する。そこで得た情報をもとに、ジグウエイトを少し軽くするセット、少し重くするセットでゲームを組み立てていく。ロッド、リール、ラインクラスなどはほぼ同じタイプにしておく。片方は硬いロッドで片方は柔らかい…と言うバランスは組まない。あくまでも「同じタックルタイプ」で用意し、メタルジグのウエイトコントロールで魚を狙っていくのだ。
それはなぜか。これは水深ある魚礁狙いにおいて、メタルジグがしっかりと動かせないとヒラマサをヒットさせられないから。そして、ヒラマサの捕食する層がどこなのかを探すためである。頭の中で「魚礁のピラミッド」を描いて欲しい。ピラミッドの頂点でベイトが集まっている状況なのか、ピラミッドから離れたボトムでヒラマサが生息しているのか? それをいちはやく私は見極めたいのだ。
もしピラミッドの頂点の位置で回遊しているならば、180gや200gで広く辺で探ればよい。ピラミッドから離れた位置での回遊であれば、潮に負けないウエイトでボトム中心に探る必要がある。200gでもボトムを探れるのでは? と疑問を持つかもしれないが、魚礁は潮通しの良い魚道に設置されており、ラインコントロールは難しい。確実にボトムの層に入れられるウエイトでメタルジグをコントロールしたいため、必要以上のジグウエイトで探っていく。私がセレクトしているロッド・PENN スラマージギング SLSJ-63Mは、バットがしっかりとした張りのあるモデル。水深あるエリアでもメタルジグがしっかりと動かせる。張りのあるロッドは、魚を浮かすためではなく「魚を掛けるため」ということを理解して使ってもらえば、間違いなく釣果は上がるでしょう。
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愛用ロッド&リールは、PENNのスラマーSLJS-63MにPENN・オーソリティ6500HSというセット。これを2タックル用意し、異なる重さジグを装着。魚の着き場、探り方、潮の流れなどに応じて使い分ける。
使用ジギングタックル
ロッド:PENN・スラマーSLJS-63M
リール:PENN・オーソリティ6500HS
ライン&リーダー:サンライン・インフィニティブX8 4号+ツナギート50lb
ルアー:K-FLAT
Gummy200g~310g、Gummy-fat250g、KEI Jig235g、KEI Jig シャープ260g
フック&パーツ:オーナー ハイパーワイヤー#7 ソリッドリング6.5mm、JS-39 ブルーチェイサー11/0
偏光レンズ:グレンフィールド ZEQUE “STELTH”
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魚礁は潮の通しの良いエリアで設置されている。そんな場所で、しっかりと魚の泳層に入れられるジグウエイト、そしてそのジグを思い通りに動かせるロッドが必要となる。そのために作ったのが「PENN・スラマーSLJS-63M」。魚を掛けることを優先したロッドだ。
平松流のマストパターン。
ピラミッドに見立てた魚礁狙いの解説を理解してもらえたと思う。これが頭に入っていないと、冬の魚礁狙いは難しくなる。そして根掛かりも連発してしまう。「魚礁は潮通しの良い場所」忘れないで探っていくことが大切だ。
そして私のマストパターンは、①船がどのように流れていくか、②ヒラマサの回遊する層はどの辺りか、という2つの要素を見極めて展開していく。また潮が動き始めた直前と、潮が緩む直前は大型ヒラマサが動く。無駄な動き、運動量が少なくベイトを捕食できるからだ。潮が動けばベイトも活発になり、それらを捕食する元気な中型サイズのヒラマサも活発化する。ワラサなどが多く絡んでくるのもこのタイミングで、ヒラマサよりも捕食が下手なブリ(ワラサ)類は、動きの鈍い捕食しやすいメタルジグへアタックが増える。今回の釣行で私は、潮が動き始めたタイミング、止まるタイミングに、ドンピシャでヒラマサの良型を3日間連続でキャッチ。潮が動き続けている場面では、船上全員がヒットしているということも起きた。そんな時は簡単に平均サイズの魚が釣れるのだが、良型を極めようとすると、先にあげた潮の流れや、ヒラマサの生息域、船の動きなどを把握しながら釣りを組み立てていかなくてはならない。今回はジグをこうしてアクションさせた、こんな形状のものをこんな場面で使い釣った、などの解説ではなく、良型ヒラマサやブリをどんなタイミングで狙ったのが、という部分にクローズアップしてマストパターンとして取り上げてみた。ぜひ釣行の際の参考にしてほしい。
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ただ闇雲に探るのではなく、常に海の中の様子を観察し、想像し攻めていくことで魚に近づくことができる。
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同行メンバーも、チャンスタイムにコンスタントにヒット!
真冬の長崎県対馬東沖ジギング。ヒラマサを求めて今も春夏秋冬通い続けているが、今回の釣行は典型的な冬のパターンであった。冬は基本的に季節風が強く、荒れ気味なコンディションが一般的だが、ありがたい事に3日間は最高のコンディション。冬の釣り方を分析しやすい状況でもあり、ポイントの見極めやジグから伝わる海底の様子もわかりやすかった。私は対馬へヒラマサを求めて通っているが、それは何ヶ月も前から日程を確保し、交通手段を手配し、釣行スケジュールを立てて臨んでいる。だから「明日は凪だから沖に行こうか」とはならず、海が荒れようが雪が降ろうが、その日が釣り決行日になる。遠征釣りは、そんなもの。だからこそ今回の凪の3日間は貴重な時間であり、自身の引出しへ詰めものも増え、釣りのアップデートができた。こうしたテクニックに繋がる情報は、これからもこの連載で伝えていきたいと強く思っている。
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潮の動き始め、止まる間際はヒラマサのチャンスタイム。潮が動いているタイミングでは、活性の高いブリやマダイがヒットしてくる。
取材協力船:《春漁丸》春田直実船長 拓也若船長
080-3970-4909(拓也若船長)
http://shunryomaru.com/
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