連載 平松慶のオフショアワールド vol.25

オフショア実釣
春の長崎県対馬
ジギングでヒラマサ20.17kgをキャッチ

前回のこの連載で掲載した冬の対馬ヒラマサジギングは、今回の春のヒラマサゲームの釣果に大きな影響を与えてくれた。潮の具合で大きく釣果が変わるディープゾーンでのヒラマサ攻略。今回は20kgオーバーのヒラマサをジギングでキャッチ出来たことをクローズアップし、伝えたいと思う。

オフショア実釣<br>春の長崎県対馬<br>ジギングでヒラマサ20.17kgをキャッチ

通い慣れた対馬西沖のジギングでの狙い方。

長崎県対馬沖は、私にとって「ヒラマサ道場」として今なお通い続けているフィールドだ。数多くのヒラマサと「稽古=対峙」し、経験を積んできた場所。「いざ」という少ないチャンスを確実にモノにするために釣りまくってきた。いつヒットチャンスが訪れるかわからない強者への対策、予知感覚、攻防を、釣りまくってきた稽古で貯めて「引き出し」とし、多くのヒラマサのヒットへと繋げてきた。前回の冬の対馬では、ブリのヒットが中心の中、どうヒラマサを狙うのかといったことを徹底的に探った。

桜が開花した春、いよいよヒラマサ狙いの本格的シーズンインになる。3月最終の週末に今年も対馬へと入った。今回、春漁丸の春田拓也船長は、ポイントがしっかり見えていた。春の対馬ヒラマサは、西沖だと。船長が自信を持つほど心強い事はない。
「慶さん釣ってくださいよ」と、大きな身体で優しい笑顔の拓也船長は言う。対馬は南北に長い島であり、南は棹崎、北は豆酘崎がある。どちらも超一級ポイントであり、対馬のオフショアゲームを知るアングラーなら多くの人が知っている人気ポイントだ。私はそのどちらのエリアもシーズンによって良い思いを経験してきた。四季により、タイミングが合えば私もリクエストする。そして今回は拓也船長と意見が一致した。それが上対馬西沖の瀬だ。

ここは水深があるポイントであるが、潮周りと風向きが合えば「何か」が起きる。昨年は、80kgのイシナギがキャッチされ、もちろんヒラマサのストック量は対馬でも高いエリアと認知している。ここの瀬を中心に、魚礁、瀬などを狙う組み立てで沖に向かった。

この日は、北東の緩い風があった。正午前から沖に出て、90mラインの魚礁からスタート。中潮から大潮に向かう暦であり、潮流は強くなる。潮が大きく動き始めると、狙いたいエリアへメタルジグを入れるのが難しい場所。たくさん釣れるタイミングに良型ヒラマサを抜き出すのは難しい。10kgいかないブリやヒラマサが勢いよくジグにアタックしてくる。元気の良い若手の魚が先に暴れ喰いをして、本当に狙いたい良型ヒラマサの口には届かない。同船者はブリやヒラマサをキャッチしていく。まず、魚の活性は高いと判断できた。

この喰いが上がっている状況で拓也船長は本命ポイントへと向かった。適度に釣れている状況だったため、皆、後ろ髪を引かれる思いでポイント移動となった。10分ほど走り、本命のポイントに到着した。ここから私は、さらに集中した。

本命ポイントで集中してジグを動かす。この場所で、大型を狙えるタイミングは長くない。潮の流れが、ちょうど良いタイミングとなる僅かな時間。魚の活性が上がり、潮が飛ぶ前だ。

潮の流れの速度を把握し、潮上にジグを投入。着底後、ラインスラックをまず取り、その後再び着底させた時に、ベストな角度になるように調整する。

上対馬西沖の魚礁、瀬戸ともに、時合になるとブリが連発。最大10kgほど。丸々と太った個体。しかし良型のヒラマサを釣るには、これらの魚を避けなくてはならない。

10kgまでのヒラマサも多くヒットした。

釣り仲間である加藤達也さん。安定のヒットと釣果。

ジグのフォールに集中。水中の潮がどう動いているのか? 常に観察し続けることが大切。

潮が動き出す瞬間、止まる瞬間に大型ヒラマサは口を使う。

私はミヨシ位置に立った。海を見渡してみる。潮が動いているのが見てわかった。まだ潮は飛んでいる状況。200gのKEI-JIG ScapeからGummy 220gに交換した。ここでもアタリは多く、同船者はワラサの連打を楽しんでいる。私はまず、船の流れを確認するために真下へジグを落としてみる。船が流れて潮も動いており、メタルジグは潮下へと角度を変えて流れていった。そこで慌ててメタルジグを回収し、すぐに潮上にキャストするようにジグを入れ直した。

Gummyをボトムから激しめに数回しゃくり上げ、ホバーリングさせる。この一瞬がヒラマサの捕食の間。

船と落ちていくラインの角度が、ちょうど一直線になるくらいで着底を確認。すぐにラインスラックを回収する意味も含めて巻き始める。10シャクリ程度巻き上げ、再びジグを落とし込む。この10しゃくりでジグがしっかり動いているのがわかった。そして次のしゃくりでは、ジグを潮の動きと船の流れに乗せてホバーリングさせてやる‥‥これが私が瞬間的に選んだ狙い方。すぐにジグは着底し、ファーストインパクトを入れながらGummy 220gを激しめに7回ほどしゃくり、その後しっかりとホバーリングタイムを作ってやる。すると「ガツン」の次に暴力的な走りを見せた。

ロッドは、PENN スラマーSLJS-63M、リールは、PENN オーソリティー 6500といつもと同じだが、ドラグはいつもより強めの7kg、リーダーは太めの80lbと、私らしくない設定。しかし、これは意図的に組んできた。冬の練習で得たテクニックで、ここ一番気合いを入れるポイントはこれで挑みたかったからだ。

同じロッド&リール、同じラインシステムで2タックル用意。それぞれに異なるジグを装着。ロッド、リール、ラインを同じにするのは、ジグが変わっても、水中の様子を把握しやすくするため。

ロッド
PENN・スラマージギング SLJS-63M
https://www.purefishing.jp/product/penn/rod/boat-rod/penn-slammer-jigging.html

リール
PENN・オーソリティー6500
https://www.purefishing.jp/product/penn/sp/authority.html

ガツンと良型がヒット。すぐに良型であることが分かる引きを見せた。

すぐにキャビンから拓也船長が出て、慌ててミヨシ近くまで寄ってきた。「慶さんデカいやろっ」。船長は常に私の喰わせる動作を見てくれている。ロッドを叩くその暴れぶり、間違いなく良型ヒラマサだ。毎年10kgオーバーのヒラマサは何本も経験している。ただこれは明らかにトルクが違っていた。10kgがイノシシなら、これは牛だ。ラインを引き出すトルクが違う。さらに首を振る幅が10kgサイズとは全く違う。そこからは、今言葉で伝えようと文章を探すのだが、みつからない。ただ魚の動きに対し、自分が身体全身で合わせるという動きに集中していた。組み合った相手の動きを、組んでいるロッド、リール、ライン、身体で受け止め、相手が隙を作った瞬間に、リールを頼りながら巻き込んでいく。勝つためには、少しの隙間も与えたくない。相手も全力でぶつかってきている。私も1秒たりとも気を抜かないがっぷり四つ。相手と組み合いながらも、じわじわと私に勝機が見えてきた。姿を現したのは「デカマサだ!」。

人生で3本目となるジギングでのヒラマサ20kgオーバー。キャスティングでは大型の釣果が目立つが、ジギングでの大型ヒラマサはなかなか難しい。

釣行後半のメーカー撮影でもしっかりとヒラマサをキャッチした加藤達也さん。

平松流のマストパターン。

潮が流れると、魚の活性は上がる。潮が止まれば、魚の反応があっても喰いが止まる。これは釣りにおいて皆さんが理解していることで、簡単に言えば「時合」として理解されている。たくさん釣れるタイミングが時合。狙っている魚が口を使うタイミングも時合。それぞれにアングラーが感じている「時合」があり、私の時合はデカい魚が口を使うタイミングとなる。潮の干満で流れも変わるが、太い潮ほどその差ははっきりしている。今回の対馬ヒラマサ釣行で実に良型ヒラマサだけを狙って喰わせた。これは、初日に釣り上げた20.17kg に続き、その後に釣果を得た15.2kgと15.5kgの良型ヒラマサも全く同じ狙い方であった。

釣行4日目にキャッチした15.2kgのヒラマサ。この魚も、1匹目のヒットと同じように、潮の変化が出た時に、Gummyのホバーリングで喰わせた。

3匹目の良型ヒラマサ15.5kg。長さはないが、でっぷりとした個体。潮が走り始めたタイミングで、ベイトリールで重めのGummyをしっかりと動かし喰わせた。

初日に上げたデカマサ20.17kgは、自身のジギングでのヒラマサ20kgオーバーのキャッチ3本目に刻まれた魚となった。そしてこれまでの20kgオーバーの3本は「潮の止まり前」と「潮の動きはじめ」。韓国済州島での20.5kgのヒラマサは潮が止まる直前。伊豆諸島御蔵島での20.5kgは、潮が動きはじめでのキャッチと記憶している。御蔵島では、私が20kgオーバーのヒラマサをキャッチし、その後はキハダばかりのヒットになった。安定した潮流が流れ始めたからだ。そして周りのアングラーは釣れているキハダに合わせて探りヒットを楽しんでいた。ただ釣れている魚に合わせるだけでなく、釣りたい魚が決まっていれば、魚種に合わせた狙い方をしっかりと行うことが大切である。私はジギングでヒラマサ、カンパチを釣りたいからこそ、そんなタイミングでも、中層の反応に心を奪われることなく徹底してヒラマサ、カンパチの層を狙い、結果として釣果を得た。

潮が動き出すタイミングは、全てジグとラインから感じ取る。だから私は、いつも同じスピニングタックルをメインに使い、ジグウエイトだけを変えて狙うスタイルにしている。今回、最終日に釣れた15.5kgのヒラマサのキャッチ時は、あえてミヨシから降りて胴の間でベイトタックルで探ってヒットを得た。それまではスピニングで探っていたが、潮の流れを強く感じ、ジグウエイトを重くして、80lbのリーダーから45lbリーダーにし、胴の間でしゃくる戦略が当たり釣果を得た。大型が喰うタイミングは、一瞬しかない。そのタイミングでどのような攻撃をしていくかが重要。今回は、自身の「ヒラマサ道場」で稽古し学び続けたことが結果に繋がったのだと思っている。

29年通い続けている長崎県対馬沖。冬、春は特にデカマサの確率が上がりアングラーを熱くさせてくれる。これまでの28年間で見えてきたことは、対馬沖のヒラマサの回遊時期が早くなってきた、海水の汚れ(プランクトンの死骸や腐植した海藻など)が漂流するタイミングが変わってきたなどがある。それらから自身の思考も少しずつアップデートし、対応して狙っている。どの地域でも良いのだが、通い続けてフィールドの変化を感じ取れるようになってこそ、今回のような釣果を得られるのだと近年強く感じている。身体は年々辛くなってくるが、その分「引き出し」の数は増え、感覚は肥えてきている。そして自身の釣りに、より自信が持てる感じになったと感じている。だからこそこれからも変わらず「ヒラマサ道場」での鍛錬を続けていきたいと思っている。

スピニングジギングタックル
●ロッド:PENN・スラマーSLJS-63M
●リール:PENN・オーソリティー6500
●ライン&リーダー:サンライン アメイザーX8 4号+ツナギート80ポンド
●ルアー:K-FLAT
Gummy200g〜310g、Gummy-fat250g、 KEI Jig235g KEI Jig、シャープ260g
●フック&パーツ:オーナー・JS-39 ブルーチェイサー13/0、11/0+ハイパーワイヤー♯7&ソリッドリング6.5mm

ベイトジギングタックル
●ロッド:AbuGarcia・オーシャンフィールド62M
●リール:PENN・ファゾム2 25NL2スピード
●ライン&リーダー:サンライン・アメイザーX8 4号+ツナギート45lb
●ルアー:K-FLAT
Gummy200g〜310g、Gummy-fat250g、KEI Jig235g、KEI Jigシャープ260g
●フック&パーツ:オーナー・JS-39 ブルーチェイサー11/0+ハイパーワイヤー♯7&ソリッドリング6.5mm

偏光レンズ:グレンフィールドZEQUE “STELTH”
ウエアー:パタゴニア

春漁丸
春田直実船長 拓也若船長 080 3970 4909
http://shunryomaru.com/

タックル問い合わせ
Goldic TEL:046-252-6010(火曜日定休)
HPアドレス https://www.goldic.net/

平松慶オフィシャルブログ【いいぶさ日記】
https://kei-hiramatsu.com/

平松慶facebook
https://www.facebook.com/hiramatsu.kei.1

X(Twitter)アカウント
@keitanhiramatsu

YouTube
平松慶チャンネル

文:平松慶
写真:平松慶、アングラーズタイム編集部

AUTHOR

平松慶

神奈川県座間市在住。 K-FLAT株式会社の代表であり、Goldicの店主。オフショアゲームを中心に釣行を繰り返し、自身で釣り具を開発しつつ、多数のメーカーからのサポートも受けてプロ活動を続けている。国内外への釣行日数は、多い年では210日を超えたほど。長きにわたりメディアで文章を書き、枻出版社では「平松慶のヒラマサワールド」を発行。その他DVDも多数リリース。

SHARE
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • link