これまでの数々の実績から辿り着いた
平松慶×ヒラマサ攻略
ジギングジャークパターンとタックル
先日、アングラーズタイムの記事でお伝えしたとおり、平松慶さん(以下敬称略)は2025年春の対馬釣行で、20kgオーバーを含む3本の良型ヒラマサを手にした。平松のジギングは、フィールドを読み、自身の持つ攻略の引き出しからベストな誘いを選び、ジグをそれに合わせてセレクトし、動かし方を決め、ヒラマサを捕食に導くというもの。今回はそんな平松の基本となるジャークパターンとタックルについて解説したい。

INDEX
使い慣れたタックルとその性能
ヒラマサを長年に渡り追い続ける平松慶。ジギング創世記から、ヒラマサには特別な思いを寄せ、フィールドにとことん通い、ヒラマサをメインに狙い続け、キャッチに至る術を独自に研究してきた。そして自身が選びぬいた攻略法を行うためのベストなタックルも作り上げてきた。そんな平松が、2025年の春、一回の対馬釣行で、最大で20.17kg、そして15.5kg、15.2kgのヒラマサをジギングでキャッチ。平松が営む釣具店・Goldicのツアー、そしてサポートメーカーの撮影で、同行アングラーとともにジギングをメインにした釣行であったが、15kgオーバーの良型をキャッチしたのは平松のみだった。フィールドをしっかりと読み、選んだ攻略法がバッチリと当たったことによる釣果と言える。SNS等ではキャスティングによる大型の春ヒラマサの釣果が目に留まるだろうが、ジギングでしかもコンスタントに大型を獲るとなると簡単ではない。しかし平松は、しっかりと結果を残した。
平松のヒラマサジギングのタックルは、まずジグをどのように動かしてヒラマサを惹きつけるか? というのが基本となる。メインで使用するジグは、自身が作り上げたK-FLATのGammy、Gammy fat、KEI Jig、KEI Jig Sharp、KEI Jig S-cape。これらをベイトの動きによるヒラマサの反応の出方、シーズンによる捕食行動の違いによって使い分ける。その誘い方の基本は2つ。線で探る「線の動作」と、点で探る「点の動作」だ。

ジャークパターンの基本は2つ。線と点。そしてその探り方を確実に行うためのジグ、ロッドが必要となる。
広範囲のベイトの反応を探る「線の動作」
ベイトの反応がボトムから広く出ている、ベイトを追いかけ回し捕食体制に入っていると推測できる魚探の反応に対しては、平松は「線の動作」と呼んでいるジャークで広く探る。反応の出ている広い層に、ジグをジャークしながら通していく。ヒラマサキャスティングでプラグを使ってヒラマサが回遊しているエリア、ベイトがいるエリアの表層を広く探るのと同じで、それを水中でやると考えれば良い。ちなみにこの線の動作で使用するジグは、KEI Jig、KEI Jig Sharp、KEI Jig S-capeとなる。

下からKEI Jig、KEI Jig Sharp、KEI Jig S-cape。線の動作で広く探る際は、この3つを使い分ける。
しゃくり方の基本は、ワンピッチジャークとなる。ジグを長距離ジャークし、追わせ、捕食へと繋げる。そしてこの時、平松が意識しているのは常にジグを動かし続けるということ。逃げるベイトを演出するためだ。ジグを追いかけてきたヒラマサは、ジグが止まったら反転してしまう。アクションにロッドの動きで強弱は付けるが、基本としては一定の速度でジャークし、ベイトの群れから離れた個体、フィッシュイーターに追われたベイトの動きを作り出す。そんなことから平松のワンピッチジャークは、リールを常に巻きつつ、ロッドアクションを入れていく。ワンピッチジャークには、ロッドをしゃくり上げると同時にリールを巻き、ロッドを下げる時は巻かないスロー目のジャークもあるが、平松のジャークはプラグをトゥイッチで動かすような(アクションを入れるロッドの動きは逆になるが)連続した動作で動かしていく。

線の動作では、広い層を一定の速度でワンピッチジャークで探る。ジグを常に動かしたいため、リールハンドルは常に巻きながら、ロッドを操作してくジャークとなる。
ちなみにKEI Jig、KEI Jig Sharpは、常に巻き上げで動かす線の動きを演出するために開発したもの。KEI Jig は中層に反応が広く出ている時に広く探る万能タイプ。一方、KEI Jig Sharp は、フォールが速い特徴から、潮が速い時、ボトム付近に広く反応が出ており素早くジグを到達させて探りたい時などが出番となる。イレギュラーなアクションも容易に演出できることから、狭い層の中で線の動作で追わせ、イレギュラーな動きで魚の動体視力を反応させて捕食に繋げるといった使い方も可能だ。
KEI Jig解説動画
KEI Jig詳細ホームページ
https://www.k-flat.net/?page_id=2319
KEI Jig Sharp解説動画
KEI Jig Sharp詳細ホームページ
https://www.k-flat.net/?page_id=2305

取材時、潮が少し速い状況となったため、すかさずフォールが素早く行えるKEI Jig Sharpをセレクトして結果を残したK-FLATのフィールドアドバイザーでありPENNリールのテスターでもある加藤達也さん。状況をしっかり観察し、それに応じて対応することが大切。
またKEI Jig S-capeは、巻き上げの線の動きでアピールさせつつ、巻き上げを止めたと同時に瞬時にテールからのバックスライドする動き演出する。巻き上げたジグの動きを止めた時に、フワリとステイするのではなく、水平姿勢になった直後にフォールアクションに素早く移行する。追いかけてきたヒラマサをスピード感のあるフォールで反応させるという考えで設計したモデルだ。
KEI Jig S-cape詳細ホームページ
https://www.k-flat.net/?page_id=2539

新発売したばかりのKEI Jig S-cape。素早いフォールで、狙った魚に口を使わせるために開発。現在は、160g、180g、200gの発売だが、今後260g、220g、130gも発売予定。ちなみにサクラマス狙いでも高実績!
点の動作
点の動作での誘いは、線の動作で広く探るのに対して、ある一定の層をじっくり探るというもの。ボトムや根の頂点付近に張り付いているような個体、魚礁や根のピンスポットを攻める時の誘い方となる。この時、使用するジグはGammy、Gammy fatとなる。この2つのモデルは、ジャークを入れた後に「間」をアングラー側が作り出すことで、ジグが横姿勢のホバーリング状態となり、その後ヘッド側からフォールする。数回のアクションでヒラマサに追わせ、ジグがヘッドを先にして前方方向の斜めにフォールすることで、ベイトが逃げる様子を作り出すのだ。使い方としては、数回のワンピッチジャークで動かした後、ロッドアクションを止める、または最後のアクションで大きくロッドを動かしてヒラマサの動体視力を刺激する動きを作り、その後にフォールの間を作るというのが基本となる。ちなみにGammyは潮の速い状況、風で船が速く流される時でもしっかりと操作できる万能型。一方、Gammy fatはボディーの面積が大きいことで、潮流の弱い状況でもホバーリングアクションを演出する性能となっている。

上がGammy、下がGammy fat。どちらもホバーリングアクションをした後、ヘッドから滑るように前方へ動く性能。逃げるベイトフィッシュを演出する。

ジャーク後に間を入れるだけで前方へ動くが、大きくしゃくり上げた後に間を入れる動作も平松は行う。大きなロッド操作で素早く動かすことで、近づいてきたヒラマサに対して「ピュッ」と逃げるベイトフィッシュを演出するためだ。
KEI Jig解説動画
Gammy詳細ホームページ
https://www.k-flat.net/?page_id=711
Gammy fat詳細ホームページ
https://www.k-flat.net/?page_id=713
平松のジギングを可能にするタックル
平松は、スピニングタックルをメインに使用している。それは、ジグをキャストして狙った場所にジグを落とすためだ。平松は、ヒラマサ狙いでどのエリアに行っても、まずは200gのGammyを沈める。リールに巻かれているラインはPE4号だ。これは、このセットでのジャーク時の引き抵抗を体が覚えており、最初にいつもと同じタックルを使用することで、そのポイントの潮の動きを観察できるから。そしてその後、潮に応じて、ジグウエイトをセレクト。潮が速ければさらに重いジグ。潮が緩い、水深が浅ければ軽いジグをセレクトする。

潮流の具合、風による船の流され具合をいつも使用するタックルで読み解く。状況把握は、次の一手にとつながる。

同じライン、同じジグであれば、フォールでも違いがわかる。
その後、船の流れる速度、向きからポイントのベストスポットにどのタイミング、位置で入れるのが良いかを読む。潮の速度や向き、風の速度によってドテラ流しで、ミヨシやトモが釣り座なら潮下や前方、後方にジグを投入することもあり、胴の間ならタイミングをみてジグを投入する。そして最初のボトム着底時、一回目のジャークで、ラインスラックを取る。再びジグを沈め、2回目のジャークがポイントにしっかりと入り、喰わせのタイミングとイメージで操作していくのだ。そんなことからキャスティングができ、さらにフォール時のライン放出の抵抗の少ないスピニングタックルがメインとなるのだ。

潮の具合に応じて、ポイントのボトムにベストタイミングでジグが入るように、ジグの着水位置を決めてタイミングを図り入れる。ミヨシ、トモであればキャストして落としていく。胴の間なら、投入のタイミングとともに、ジグウエイトの変化で対応する。
ロッドは自身の釣りを具現化できるモデルを選ぶ
また、使用ロッドはGammy、Gammy fat、KEI Jig、KEI Jig Sharp、KEI Jig S-capeといったジグを、しっかりとアクションさせるために設計した調子のモデルとなる。それが、「PENN SLAMMER JIGGING(ペン スラマージギング)」の63ML、63Mだ。
ジギングロッドには、様々なタイプがある。ヒラマサ、ブリ等の青物対応ロッドでは、柔らかめの調子でアクション時に胴寄りまで曲がり込むことで、ジグの余計な動きを吸収させて滑らかにするモデルが最近は人気だ。一方、逆の性能として、胴にハリがあるブランクにより、ジグをしっかりと動かして反射的にターゲットを反応させると同時に感度も高いといったものもある。このように青物ジギングロッドは、それぞれに特徴があり、いずれにしてもどんなジグを使用し、どのように動かし、そして捕食まで導くのかによって選ぶことが重要となる。
平松が開発したPENN SLAMMER JIGGING 63ML、63Mは、前述した平松が自身のヒラマサ狙いのジグアクションを演出しやすいように設計したもの。63MLは点で誘う動作を行いやすくするために、ティップからベリーセクションを程よくしなやかにし、ジグの移動距離を抑えつつもしっかりと動かせる設計。「しなやかに」とはいっても、ジグの動きを吸収するような柔らかさではなく、ジグをしっかりと動かせるある程度の張りは備えられている。一方63Mは、線の動作でジグをしっかりと操作しやすく、戯れるようなバイトでもフッキングへ持ち込めるように、よりファーストテーパー気味に設計したモデルだ。ちなみに平松は、以前はこの2つモデルを使用ジグに応じて使い分けていたが、最近では63Mのタックルを2セット船上に持ち込んでいる。どちらも、同じリール、同じラインにし、ジグだけ異なるものをセットする。その理由は「同じタックルを使うことで、ジグを変えても瞬時に海中の潮などの様子が分かるから」だ。
PENN スラマージギング詳細ページ
https://www.purefishing.jp/product/penn/rod/boat-rod/penn-slammer-jigging.html

ヒラマサ狙いでは、PENN SLAMMER JIGGING 63Mモデルを平松は愛用。2本船上に持ち込み、同じリールに同じラインを巻いたものをセット。ジグだけ異なるものをセットする。同じタックルであれば、水中の潮の様子などの状況把握もしやすい。
リールセレクトとその理由
使用リールは、PENNのスピニングリールのフラッグシップモデルとなるPENN Authority(オーソリティー)の6500番となる。平松はこのリールに対して圧倒的な信頼を寄せている。それはボディー剛性とドラグ性能だ。ボディー剛性に関しては、あえてPENNにメンテナンスを出さずに使用し続けているというが、トラブル無く初期性能を維持し続けているとのこと。また、防水性能は、IPX8等級を備えており、塩ガミが無いという。ちなみにIPX8の防水性能は、国産リールのフラッグシップモデルと同等となる。
また、平松が高評価しているドラグは、シールドタイプのスラマードラグが搭載されている。このドラグは、大口径ワッシャーのPENN独自のデュラドラグを搭載し、上からと下からドラグワッシャーを抑え込む構造。強いドラグテンションでも耐熱、耐久性が優れているのが特徴だ。さらにドラグ部はシールド化され、ベアリングも追加。常に安定したドラグ力、スムーズなライン放出をキープするため、安心して使用し続けられるという。ちなみに、以前はハイギアモデルを平松は使用していたが、現在使用しているオーソリティー6500では、レギュラーギアを使用している。
「レギュラーモデルは5.2:1のギア比で、ハンドル1回転の最大巻き取り量が99cmあることから、こちらをチョイスしています。ジグを速く動かす考えではなく、ジグを魚に見せながら常にしっかりと動かしたいからです」
レギュラーギアであれば、ハイギアよりも巻き取りが楽であり、よりしっかりと動かしながら巻き続けられる。同時に、ヒラマサが掛かってからも巻き上げトルクが強いことで、よりコントロールしやすいと言える。

リールは、オーソリティーの6500番。ハンドル1回転で99cmで、約1mのため、ボトムから何メートルにジグがある、ヒットがあったなどの状況把握もしやすい。6500番はPE4号300mで、対馬、玄界灘のヒラマサにちょうど良いサイズだ。
PENN オーソリティー解説動画
PENN オーソリティー詳細ページ
https://www.purefishing.jp/product/penn/sp/authority.html
良型ヒラマサはどのように獲ったか?
今回、記者は釣行後半の2日間に同行した。この時点で、すでに平松は20.17kgをキャッチしていた。そして、取材同行時は20.17kgが釣れたのと同じポイントへ入った。場所は、上対馬西沖の瀬。まずは瀬の近くにある魚礁を探り、船長は瀬に入るタイミングをみる。タイミングを見るのは、このエリアは潮通しがよく、走り出すと釣りにならないから。もちろん止まっている状況も釣果は期待できない。止まっていた潮が動き出し、潮がガンガン流れるまでの僅かな時間がチャンスタイムとなる。潮周りと風向き次第では、入れない場所でもある。

潮の流れ具合を読み、瀬の中の魚が着いている位置にジグが着底するようにタイミングと距離を考えジグをキャストして投入していく。
そしてしばらく魚礁を探り、船長は瀬の潮上に船を入れた。水深は135mと深め。ここで平松は、Gummy 220gをチョイス。瀬に着いているヒラマサに、点の動作でジグを発見させ、しゃくりで動体視力を反応させ、フォールで喰わせる作戦だ。そして船長の合図でミヨシから潮下側のやや前方にジグをキャスト。着底時に船の正面あたりにライン入る。そしてまずはワンピッチでしばらく探り、ラインスラックをきちんと取った後、再び沈める。次の着底でラインは若干斜めに入る。このタイミングをみてジグを操作していく平松の様子を見て、ヒラマサの着き場がしっかりと見えているように感じる。
数回の探りでアタリが無ければ、船は再度潮上へ回る。平松は、同じようにジグをキャストし、ラインスラックを取り、そして再び着底させて探っていく。そんな流しを数回行い、ラインスラックを取った後の2回目の着底時に平松が呟いた。
「喰うならこのタイミング」と。
そして着底後の数回のしゃくり、そして大きめのジャーク、その後のホバーリングで見事喰わせたのだ。これには驚いた。「いいサイズだよ」と平松が叫ぶ。魚にロッドや強いドラグ値で強いプレッシャーを掛けずに、いなしながら巻き上げていく平松らしいファイトで魚は水面へ浮いた。ネットを持つ船長が「デカマサ」と叫んだ。ランディングされたのは、15.5kgの立派なヒラマサであった。しっかりとフィールド、魚の動きを読みキャッチした、平松らしい釣果であった。

しっかりと読んでヒットに繋げた平松。ドラグを効かせながらヒラマサの動きに合わせて、いなすようにしながら巻き上げて距離を縮めてく。

狙い通りに掛け、獲ったヒラマサ。満足度も大きい。
その後、ホースでヒラマサの口から海水を送りつつ撮影を行い、それが全て終わる頃には、釣りにならないほど潮は飛んでいた。
そして翌日、再び同じ場所に入った。この日は、前日と同様のタイミングでアタリは訪れなかった。平松はここで胴の間に入り、280gのGummyをベイトタックルに装着した。潮が速くなり始めたことと、ベイトタックルでの撮影の依頼もあったため、重めのジグを入れてしっかりとボトムタッチを行いつつ、ギヤ比の低いベイトリールでしっかりと小刻みにジグを動かして、瀬にぴったりと着くヒラマサを誘う考えだろうか。そしてこれも見事当てた。ヒット時、ファイト時に魚のサイズは分からなかったが、上がってきたのは、これまた15kgサイズ。検量すると15.05kgであった。

良型のヒラマサが着いている場所は、これまでのやり取りで分かっている。潮が速くなったタイミングで、巻き上げトルクのあるベイトリールでしっかりと重めのジグを動かして、またも良型をヒットさせた。
使用ベイトリール・ファゾム2スピード
https://www.purefishing.jp/product/penn/fathom-2speed-2.html
結果として、3本の良型ヒラマサをジギングでキャッチ。これには平松本人とともに、船長、同行メンバーともに大興奮。しかも、闇雲にしゃくって釣れたのではなく、しっかり読んで狙って釣り上げた魚。アングラーの満足度も大きい。ジギングは、ただしゃくっているだけで釣れることもあるが、それではコンスタントに釣果を上げるのは難しい。狙う魚を知り、フィールドを知り、しっかりと組み立て、それに応じて技を繰り出すことが大切。そして自身の技を繰り出すために、ベストなタックルセレクトも重要になる。そしてこのようにジギングを行うことで、より深く楽しいものとなる。

今回の釣行では、良いサイズ、プロポーションのブリも多数ヒット。ただ、良型のヒラマサが釣れるタイミングで、このブリを狙っていてはヒラマサのキャッチには繋がらない。的を絞ることも大切だ。写真は潮が緩い時間帯に釣れた1枚。
連載・平松慶のオフショアワールド
https://anglers-time.com/6255/
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