連載 平松慶のオフショアワールド vol.3

ジギング講習。青物攻略からジギング初心者への基礎知識まで
メタルジグが魚を惹きつける効果とは

メタルジグで魚を釣る。ブリ、ヒラマサ、カンパチが代表的であるが、マグロにサワラ、マダイから根魚まで「メタルジグ」で狙う魚種は豊富にいる。今回からの内容は、なぜ多種の魚たちがメタルジグで釣れるのか。基本的な内容でこれをわかりやすく解説し、実釣に絡めてもらえればという思いで解説していきます。

ジギング講習。青物攻略からジギング初心者への基礎知識まで<br>メタルジグが魚を惹きつける効果とは

メタルジグの魅力は、逃げるベイトを意識した動きでしゃくるだけで釣れる理論以上に、深いノウハウがあります。これが頭に入っているのと、理解しないままジグを沈めるのとでは釣果に差がつきます。そしてこれにより「釣れた理由」がわかってきます。ぜひ覚えておくと良いでしょう。その辺りを今回解説していきます。

メタルジグで釣れた

メタルジグで釣れた

 

メタルジグで「釣れる理由」とは

市販されているメタルジグの素材は鉛(ナマリ)、鉄、タングステンなどで形成されたものがメインであり、その中でもナマリを使用しているものが7割以上となっています。メタルジグの釣りは、ジグを沈めてベイト(餌)のような動きを演出し誘う釣り方になります。これがジギングです。

ジグを沈める、そして小魚が泳ぐイメージで餌のように見せて釣るスタイルが基本的な動作になるのですが、ジギングの面白さは「何がヒットしてくるのか、上げるまでわからない」ことも魅力の一つと言えるでしょう。ロッドでメタルジグに動きをつけ、「ガツン」と食って来た時の衝撃。そしてグイグイとロッドを絞り込められ、やり取りするスリリングさ。船べりで魚種がわかった時の喜びまでの一連がジギングの楽しさになっています。では、なぜメタルジグでヒットするのでしょうか。釣り人側からの目線と、魚側からの目線で擦り合わせて解説します。

釣り人は、船で魚のいるエリアに入ります。釣れるポイントです。船長がその日のコンディションを読み、対象魚に合わせたポイントに我々アングラーを入れてくれるのです。魚たちは、各々テリトリーを持って生息しています。魚礁や起伏の激しい根の周り、潮がぶつかるような場所、潮通しの良いベイトが集まりやすい場所などです。

テリトリーを持つ理由は、大きく分けて二つ。潮通しが良く居心地が良い場所。産卵などもしやすく水温も比較的安定しているような場所。二つ目は、餌が豊富で常に捕食しやすい環境が整っている、また自分の身を守ることが出来る場所に生息している習性があります。これがアングラー目線で言う「ポイント」になっているのです。生物学理論の捕食する行動の一番は、本能として生きるため。遺伝子ベースで本能が組み込まれているので、魚は食べて成魚になり子孫を残す事に繋がります。捕食しやすい環境、他魚から守る環境もこれに値します。さて、まずは魚のいる場所がわかった。では、捕食しやすい環境でメタルジグを使うスタイルでなぜ魚たちは釣れるのか、をよりわかりやすく解説します。

船でジギングの対象魚を探す平松慶

船長が対象魚に合わせ、その日のコンディションを読みポイントに連れていってくれるジギング。魚たちは、各々テリトリーを持って生息しています。

ソナー

ジギングの対象魚がいる場所は、根の周りや潮通しの良い場所、対象魚が捕食するベイトがいる場所など。

基本的な青物ジギングで釣れる理由は何なのだろうか

一部のジギング(例えばトンジギなど)を除き、アングラーはメタルジグを沈めてジグが着底したら、しゃくり始めます。ジャーキングの開始です。船長が魚探から得た情報でジグを落とさせ探るのですが、ここからがジギングの面白い所であり、難しくもあります。水深に合わせてジグウエイトを選択し、しゃくり始める。アングラーは、メタルジグの動作と捕食したい餌の動きを意識して探り始めていく。ジギングの基本的な動作として、スピニングタックルでもベイトタックルでも、まずはジグが着底する事を確認してからしゃくり始めます。親切な遊魚船船長などは、「何mあたりにベイトの反応があるよ」「中層に魚が映っているよ」などの情報を知らせてくれます。これはしゃくる側が頭の中で狙う層などの組み立てをしやすいから。例えば中層にイワシ類の反応が出ているならば、キビキビしたジグアクションをして誘う事などの考えが浮かびます。水深が無ければ、ローインパクトな動きを意識し、ゆっくりした誘いのアングラーも居るでしょう。この話はまた先の機会にでもより細かく解説していきますが、今回は初心者の方も読んでもらっていると仮定しての解説なので、ご理解ください。

では魚目線の話。中層で固まるように群れているイワシなどのベイトは、ほぼ間違いなく群れの周りに青物が威嚇して捕食態勢になっているのだろうと予想できます。潮通しの良い場所でベイトが警戒心ない動きの時は、青物も捕食しようとはならない。だから、中層で固まるベイトの反応は、間違いなく青物などのターゲットがそこにはいると考えられます。それならば、中層までメタルジグをしっかりとアクションを付けて誘ってやらなくてはならないということになります。

この先は、ジグはどんなタイプが良いのか、ヒットカラーは何か、釣り座(位置によるアプローチの仕方は)、フックバランスは、ラインやリーダーの太さやバランスは、などどれもこの先に解説していきますが、ここではジグを落として、しゃくると言う部分に特化します。ではなぜジグを着底させなければならないのか。基本的なジギングフィールドで、80m前後の水深でと仮定します。ジグと魚探との反応位置からしゃくり始めることへのマイナス点として、ジグを落とすことで青物などは落ちていくモノに対して反応します。落ちていくものに好奇心が相当にあります。ベイトを追い込むような場面は、特に意識しています。ベイトの群れへの捕食行動は、青物のボディーアタックも含まれています。魚側からの見方は群れから離れたベイトです。これを捕食します。これを頭に入れておけば、落ちていくメタルジグの効果に繋がります。

落ちてきたメタルジグが再び泳ぎ出せば、青物は捕食態勢に入ります。追い回して体力を使って捕食するよりも、捕食する為の行動範囲が短ければ、余分なエネルギーも消耗せずに捕食ができます。だから落ちていく物への反応が高いのです。しゃくる幅を短くするよりも、しゃくるスピードに強弱を入れて探ります。またがむしゃらにしゃくり続けるよりも、テンポを変えて探っていくことを取り入れるほうが釣れる率は上がります。釣れる動き(アクション)を探しながらしゃくると面白いはずです。これが、ジギングで釣れる理由の最初に覚えておく大切なことになります。

ロッドでメタルジグを操る平松慶

ロッドでメタルジグを動かし、ジグを引っ手繰るように「ガツン」と食って来た時の衝撃。そしてグイグイとロッドを絞り込む引きに加え、その他様々な魅力がジギングにはあります。いずれにしても、水中の様子を読み、それに合わせて探っていくことが大切でもあり、そして楽しさです。

平松流のマストパターン

メタルジグには、様々なカラーパターンが存在します。シルバーのホログラムだけで飾られたパターンから、グリーン/ゴールドやブルー/ピンク、グローのストライプパターンなどなど。カラーで最初に悩んでしまうのがお決まりです。ではやり込んでいないアングラーが持ちたいカラーとは。私は、初心者の方にジギングを教える際、必ず伝えることがあります。「釣れるカラー」というのはその状況によって毎度変化するものです。

そんな中、迷わないのは、自分の手持ちのジグで他のアングラーが釣れたカラーに近いカラーを選択すること。同じカラーを持っていない場合もあるので、それに近いカラーと同じジグウエイトに交換してみることです。「釣れた実績」というのは、どんな状況であろうとも魚が口を使ったという結果になっています。少しでもチャンスに繋げる為にも、釣れているカラーに合わせていく、ウエイトはジグの泳ぐ層に合う、というのが理由です。

もう一つは、「新品のジグ」を使うこと。パッケージから出してすぐのメタルジグは、色にくすみも無く発色もしっかりしています。新しいジグを落としていく際に魚を寄せる効果は非常に大きなもの。ナマリだけの無垢ジグで私はテストをしますが、それはジグから伝わる水波動と、魚が持つ「側線」による眼と耳を合わせた様な部分で餌を探す行動で口を使わせるテストです。しかし魚が持つ視界で捕食態勢になる場面のほうが多いのもわかっています。フォール時のきらめき、これは魚が最も興味を示します。どうしても自分だけ釣れない様な時こそ、思い切ってジグを新しいものに変えてみるのも釣果に繋がる技になります。

メタルジグのジグカラー

ジグカラーは悩むところ。周りで釣れている色に合わせるのが、最も釣果への近道。新しいジグを使用するのもオススメです。

今回は、ジギングをより深くわかってもらいたいと思い解説しました。この先、もっと突っ込んだ内容を解説していきたいと考えています。メタルジグとフックとのバランス、フックとジグを接続する時のマテリアル、PEラインとリーダーとの関係、ジグのウエイト別による層の探り方などです。ジギングゲームは、キャスティングゲームと違い、眼で確認しながら魚を食わすスタイルではなく、ロッド、リール、ラインでジグの動きを演出し、そして動きを読み取りながら釣るゲームです。基本となるいくつかのことが頭に入っているだけで、想像力が膨らみ、ヒットした時の感動は大きいものになります。それをこれからも伝えていきたいと思っています。

AUTHOR

平松慶

神奈川県座間市在住。 K-FLAT代表。オフショアゲームを中心に、自身で釣り具を開発しつつ、その他メーカーからのサポートも受け、プロ活動を続けている。国内外への釣行日数は、多い年では210日を超えたほど。長きにわたりメディアで文章を書き、枻出版社では「平松慶のヒラマサワールド」を発行。その他DVD多数リリース。

SHARE
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • link