三重沖の大型キハダを求めるアングラーへ
2023年シーズンの開幕へ向けて!
佐野ヒロム流
三重・尾鷲沖のキハダ攻略
2022年、アングラーズタイムの記者は3度、大型魚を追い続けるアングラー佐野ヒロム氏(以下文中敬称略)と、尾鷲沖の海に出船した。その中で、佐野は3本の良型キハダをキャッチした。回遊魚であるキハダは、トライ&エラーが多い相手。時には、1日のうちにチャンスすら無いこともある。しかし佐野は、しっかりと結果を残した。では、どうキハダキャッチへ繋げるのか? その秘訣を、今回はお伝えしよう。
シーズン開幕から終了まで通い続ける「熱」!
佐野ヒロムは、大型魚、特にクロマグロ、キハダ、そしてヒラマサの大型を、一年を通して狙い続けている。さらにシーズンによって、その他のソルトゲーム、渓流でのサクラマス、イワナ&ヤマメなど、様々なルアーフィッシングを楽しんでいる。キハダに関しては、例年、冬場に期間限定で狙える相模湾&東京湾沖のサンマベイトパターンからスタート。その後、春に尾鷲沖のキハダ狙いが始まる。ちなみに昨年は4月から尾鷲沖の様子を見始めた。尾鷲沖に関しては、そこから晩秋まで釣行予定を組む。一回の釣行予定で、2、3日、連続で乗船する。その間、相模湾、伊豆沖、駿河湾、久米島などにも、状況に応じて釣行を入れていくというのがキハダ狙いの一年の流れだ。キハダは、沖に出てみなくては状況が分からないということが多い。そんなターゲットのため、尾鷲沖釣行は、シーズン中に定期的に予定を入れている。ちなみに釣果情報が聞こえてからでは、船が埋まっていたりしてトライできないことも多い。そのため、回遊を予測して予定を組み、かなり早い段階で船の予約を行っている。大型のキハダを釣り上げたいという「熱」が、佐野をそうさせている。
チャンスをものにするために、タックルは万全の用意!
佐野は、尾鷲沖のキハダを狙う時、80㎏クラスの特大を想定しつつ、メインの50㎏前後、そしてシビアな状況用に小型プラグを投げられる少しライトなタックルを準備する。また、もしもキハダが浮かない状況の時のためにジギングも用意しておく。仕立てや、仲間内数名であれば、その数は多くなり、可能な限り持ち込むという。そしてそれぞれのタックルにあったルアーを装着しておく。
「魚のサイズや、状況に素早く対応するために、多数用意しておきます。例えば、同パワークラスのタックルを2セット用意して、異なるルアーをセットしておけば、1投目で反応しなかった場合に、すぐに次の一手を打てるからです」
タックルについては、次の記事で細かく解説するが、ロッドは、使用ラインに合わせたパワークラスの物を使用。リールも、使用ラインに合わせてサイズをチョイス。300m以上ラインが入るサイズであり、惰性で前進移動している船からキャストしても、プラグにアクションを入れられるようにXG、Hモデルがメインとなる。ちなみに尾鷲沖では、想定するキハダサイズから、PE7号、8号を巻いたリールを装着したタックルを使用することが多い。もちろん、どのタックルも新品クラスのラインが巻いてあるものを使用。以前ファイトしたものや、数多くキャストしたラインは使わない。そしてリーダーは全て事前に結束。ラインシステムは、YGKのスクラム16でプロテクトリーダーを組み、スタジオオーシャンマークのオーシャンノッターOK105HでFGノットで結束。船上で少しでも傷んでいると感じたら、ポイント移動時にすぐに組み直す。フックも傷んでいたら、すぐに交換する。万全のタックルで挑むためだ。不安要素があっては、思い通りのファイト、勝負ができないからだ。
「少ないチャンスをモノにするためには、準備が大切です。使用しながらでも常にチェックし、少しでも不安な部分があればタックルを交換し、リーダーの傷やメインラインの毛羽立ちであれば、すぐに組み直します。乗船中は、必死になって1匹を追いますが、船長も釣らせるために一日中必死に魚を探してくれます。それにしっかりと応えなくてはなりません」
▼ YGKのスクラム16でプロテクトリーダーの組み方
▼ オーシャンノッターOK105HでのFGノット
2022年釣行。実際に少なかったヒットチャンス!
前述したように、記者が同行した佐野との釣行は3回。一回目の4月中旬の釣行では3日の乗船予定が、2日となった。初日、そして2日目ともに多くのキハダが見られ、中には良型もいた。だが、どのキハダも活性は低め。キャストを繰り返すものの、イルカのように水面を泳ぐ姿が多く、目の前を通してもヒットに繋がらない状況であった。潮目沿いに小型のベイトが浮遊し、それをゆっくり泳ぎながら捕食していた。
次に同行したのは7月上旬。この時も3日間の乗船の予定を組んだが、乗船は天候により2日になった。1日目はパヤオに向かった。尾鷲沖には2つのパヤオがある。朝一向かったパヤオでは、キハダの反応が悪く、その後に向かったパヤオはキハダの反応があるものの、近づくとすぐに沈んでしまう状況。移動&キャストを繰り返していくが、なかなか難しい。そして「確実に間に合った!」というタイミングも幾度となくあったが反応しない。水色は驚くほどの透明度だった。その透明度が気になり帰港後に調べると、黒潮の分流に乗っかっている状況であることが分かった。そこで、船長も含めて皆で話し合い、灘よりを南下しつつ攻めていくことにした。和歌山方面では、良い状況があったという情報も入っていたのが、灘よりを攻める決断に後押しした。そして、その予想が見事に当たり、灘よりの濁った潮と透明度のある潮の潮目で多数の鳥を発見し、鳥の動き、魚の動きをしっかりと観察しつつ素早くプラグを投げ込みヒットへと繋げたのであった。キャッチしたのは45㎏だった。
「キハダの動き、鳥の動きをよく見ることです。キハダの進行の先に投げて、しっかりとサミングしてプラグを着水させ、すぐに誘いを入れる。またキハダの移動距離を読むことが大切です。さらにキハダのサイズ、ベイトに合わせてタックルをセレクトする必要があります。そのためにもそれぞれのタックルを用意しておき、さらに常に投げられる準備をしておくことです。チャンスは何度もないですから」
この日は、同船者がその後に1匹、同サイズをキャッチし終了となった。
そして秋。11月に入ってからの釣行であった。佐野が契約し、テスターを務めるフックメーカー「ヴァンフック」の動画撮影に同行した。そしてこの時も2日間出船した。2022年の三重沖のキハダは、あまり数が上がっていなかったためか、訪れたパヤオは遊漁が一隻、漁師も少ない状況だった。ただ、キハダはしっかりといた。そして結果はすぐに出た。鳥の動きに合わせて船を流し、その2流し目、誘い出しで「ト゚バーン」とバイトしてきた。しっかりと合わせを入れ、7㎏ほどのドラグで走らせ、止まってからは巻けるときにはガンガン巻き、9分ほどのやりとりで上がったのは54㎏の良型であった。
この日、好調のスタートだっただけに、その後はどんな展開になるかと思いきや、キハダは時折姿を見せるものの、活性は次第に低くなり、追加の釣果は得られなかった。朝一のプレッシャーの低い時間のみ口を使った感じだった。翌日は、朝一のチャンスタイムは無かった。ソナー、魚探に反応は出ているがキハダがなかなか浮かない状況。そこで、船長にジギングで探ることを告げ、反応に船を着けてもらいチャレンジ。すると見事、ヒットさせたのだ。上がったのは前日のサイズを上回る55㎏。2日で2匹という、完璧な釣行となった。
2022年の佐野キハダ釣行を同行して分かったのは、大型キハダを獲るために幾度となく予定を組む熱い心とともに、準備を毎回完璧に行うということ、そしてどんな日にも諦めないこと。キハダのいるエリアに入ったならば、常に周囲を見渡し、怪しい箇所があれば休まずフルキャストし続ける。簡単には大型キハダは釣れない。しかし諦めなければヒットに近づける。佐野が自身のキハダ記録を更新するサイズ、尾鷲沖の記録級のキハダを釣るのも近そうだ。それは2023年シーズンかもしれない。春の雰囲気が感じ始めイワシが入ってくれば、キャスティングでキハダが狙えるシーズンになる三重沖のキハダ。大型キハダ、三重沖の大型キハダを釣りたいなら、今から完璧なタックルとともに準備し始めたい。