連載 平松慶のオフショアワールドvol.23
オフショア実釣。
秋の伊豆南沖で青物をジギングで狙う。
良型カンパチとの出会い
酷暑も落ち着き、金木犀の香りが街に広がり始まるタイミングで静岡県熱海市にある網代港へと向かった。ホームグランドとして20年近く通う森竜丸さんに今回もお世話になり、秋の青物狙いを伊豆南沖で楽しませてもらう。スタイルはジギングをメインに、チャンスがあればキャスティング。10月中旬、今年の秋沖はどうなっているのかを期待しての釣行。今回はその様子をお伝えしたい。
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秋10月をどう予想しゲームを展開していくか?
今年の夏も暑かった。9月に入っても30℃を超える気温に身体は疲れ気味。これは釣りをする人、しない人、ともに共通。10年前と比べても地球規模で気温が上昇している。これは生活環境だけでなく、自然環境である海も当然の変化や影響がある。それを年々感じており、今年の伊豆南沖をどう考えて狙って行こうかとタックル準備の時にセッティングを考えた。キャスティングでは相模湾で好調なキハダや戻りカツオを意識したセッティング。ジギングは秋の広く探るスタイルか、夏の状況をもうしばらく引きずるボトム中心の狙い方にするか。ジギングは、どちらも想定しておかないと現場での臨機応変に対応出来ない。「線の動作」で広く探るスタイル、「点の動作」でしつこくボトムを狙うスタイルと、ともに想定しておいた。
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今回の釣行は、夏から秋の海に移り変わるタイミング。夏の高水温による底べったりの反応か、それとも秋の広く反応が出る状況か? またキャスティングのチャンスはあるのかなど、様々な状況を予想してチャレンジすることになった。
今回は2日続けて網代港の森竜丸の乗船を予約させてもらった。不安定な風で釣りが出来ない場合や、気難しい伊豆南沖で、必ず結果に繋げたいという思いも。数多く釣行を重ねてきた伊豆南沖であるが、私にとって魅力あるフィールドであるものの、一筋縄ではいかない天邪鬼なフィールドでもある。ここでは簡単に「はい、釣りました」とはいかない。ただ伊豆南沖の面白さは、そこにある。東京都心からでも3時間掛からない距離。網代港から南沖まで2時間というアクセスの良さ。そこで大型魚を想定したジギングが楽しめる。上に出る魚を追い回せる。だから通い続ける価値のあるフィールドだと感じている。
また、ルアーゲームだけでなく泳がせ釣りの人気船としても知られる森竜丸。人気船なだけに日々猛者が詰めかけ、テクニックを競い合う。今回は泳がせ釣りからのヒントを森野船長からたくさんいただいた。マグロ類やカジキといった巨大回遊魚に対し、青物(特にヒラマサ)もコンスタントに釣らせている。私はSNSでその釣果を見て、いくつか聞きたいことがあった。それは、狙っているレンジでどの様なテクニックが必要なのだろうかと。ライブベイトとメタルジグ。私はあくまでも後者で攻めるスタイルを貫いているが、釣れるヒントは隠されている。泳がせ釣りにおいてのレンジ。これについて森野船長から教えてもらったことをメタルジグでの操作に重ね合わせての実釣開始となった。
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泳がせ船としても人気がある森竜丸。泳がせでは、釣行日の前にカジキ、キハダ、良型のヒラマサがキャッチされていた。大きな期待を抱き出港。網代港から伊豆南沖まで約2時間。移動中はゆっくりと横になって休める。
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到着と同時に、水中の様子を見ていく。夏の海か、秋の海か? 潮はどうなのか?
伊豆南沖のジギングでの狙い方。
ポイントに到着した朝6時。辺りを見渡しても鳥の気配がない。水面の様子も穏やかであり、キャスティングゲームはひとまずお預け。ジギングロッドを手にして釣り座に立った。水深は80m前後からの開始。森野船長からは「準備が出来た人から始めましょう。水深79m」と開始のアナウンスがあった。
私はメタルジグGummy 200gを投入する。200gは、どんな状況であろうと最初に投入するお決まりサイズ。潮の流れや状況を把握しやすいからだ。そしてこのジグを操作してみて感じたことを基準にジグウエストを合わせ、ジグ形状を変え、狙い方を考えていく。潮に絡むようにジグは落ちていく。
タックルは、PENN・スラマーロッド63Mに、リールはPENNオーソリティー6500HS。そこにはサンライン X8インフィニディブ4号を巻き、リーダーはツナギート50lbというのが今回のセッティング。ジグは気持ちよく落ちていく。
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使用タックルは、自身が監修したスラマージギングロッド63M。先調子のロッドで、ジグをしっかり操作できるモデルだ。もちろん大型のヒラマサ、カンパチに対応するバットパワーも備える。
朝聞いた泳がせ釣りでのヒラマサを狙うスタイルが頭に詰まっている。レンジ(層)の意識、これを自分なりに考えていた。水深が80mで下から10m辺りにベイトが映っている。「そのベイトの反応の周りにチラチラと青物らしき反応があるから気を付けて」とのアナウンス。Gummy 200gはボトムに到着し、まずはワンピッチで潮とメタルジグの絡みを感じながら状況をみる。底潮は動いている。ただ、40m(半分)まで引き上げてくると、違う抵抗がジグに伝わる。底潮は動いているが、中層はあまり潮が動いていないとロッドから判断できた。
森野船長は、すぐにポイントを変えていく。70m、80mとポイントを変える。小型のカンパチやヒラマサがミヨシ側で連続して上がった。朝の流しで青物が拾えた状況に、私も集中してジグ操作を続けた。森野船長は利島と新島が先に見える瀬で角度を変えながらポイントに船を入れていった。
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潮上にジグをキャストして探っていく。そしてボトムに到達したら、ロッドを大きく跳ね上げてターゲットを刺激。その後、ジグはホバーリングの動きを出し、捕食の間を作る。
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張りのあるベリーで、ジグを大きく動かせるように作られたスラマージギングロッド。その動きが、ターゲットの目の前で、逃げるベイトを演出する。
90mのポイントに再び入り、Gummy200gをしゃくる。ジグが着底し、ラインスラックを回収しながらジグにファーストインパクトを入れる。ジグのホバーリングの動きを確認し、再びインパクトのあるしゃくりを入れ、再びホバーリング。この時、意識しているのはベイトの反応より、下にいると思われる青物。潮通しが良いボトム周辺の潮で青物がベイトを狙っている。ベイトはコンディションの良くない潮には入りたくない。ベイトも魚。環境の良い層に固まるのは当然のこと。これを頭に入れて、徹底して狙いはボトム周辺とした。そして、スタートから30分でファーストバイトを得た。
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ベイトのいる層はボトム周辺。そこでしっかりとジグを跳ね上げて誘うと、いきなり強烈なバイトが訪れた。
平松流のマストパターン。
Gummy 200gをホバーリングさせた。潮に乗るように水平姿勢になり、頭からゆっくり落ちていく。ロッドから全て感じ取れる。2回、似たようなポーズで誘った。そして次の動作を入れた時に強烈なバイトを得た。
オーソリティー6500HSはドラグ音を派手に鳴かせており、同時に走りをコントロールする。あきらかにデカい。これはすぐにわかった。強烈な引きに私はドラグを信じてロッドを支える。デカい、と周りのアングラーも船長に伝えてくれ、他のアングラーにジグを上げるように指示を入れてくれた。魚は90m層からスプールのラインを20m近く出した。ロッドのベントプレッシャーを出来るだけ与えないようにし、魚をドラグテンションだけで走らせた。シャクっていた角度とは明らかに違う斜めの角度にラインは走っていく。ロッドの先端をその角度に合わせ、魚を走らせる。そして走るパワーが少し減ったのがわかった時点で、ロッドパワーを利用してリフトにかかる。
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鋭いファーストランだが、オーソリティーのドラグを信じてこなす。オーソリティーは、堅牢、高耐久モデルであり、信頼のシールドスラマードラグが装備されている。ドラグ能力をフルに使って、慌てずにやりとし、相手を弱らせていく。
リフトしながら出されたラインを回収してファイトをし続ける。寄せては走られ、緊張の抜けないやり取りで魚を浮かせる。見えた。青物の走りは間違いなかった。ヒラマサだろうか、カンパチだろうか…。やり取りしながら、そんな事を考えながらの丁寧なファイト。「カンパチだ」と誰かが言った。
伊豆南沖を何度も通ってきているが、このサイズのカンパチに出会えたのは初めてだった。森野船長がキャビンから出て来てネットを持つ。私は浮かせたカンパチを船縁に寄せようとした時に、フックが外れてしまった。ただ、カンパチは浮いており、慌てずにカンパチをネットですくい上げ、無事キャッチすることに成功した。
「20kgいったな」正直、そう思った。厚みのある良型ヒレナガカンパチ。このサイズを釣ったのは本当に久々。国内、それもホームグランドである伊豆南沖ではファーストサイズ。釣ったことへの嬉しさが込み上げてきたのは、この日の帰港直近であった。この魚を狙うにあたり、徹底した考えたのがレンジの意識。まだ、夏の海から秋の海に変わりきっていないだろうという考え。そして泳がせ釣りでのヒラマサ狙いのテクニックを聞き、そこからもヒントを得て「レンジの意識」を持てた。狙いたいターゲットがこのタイミングでどのレンジ(層)で捕食しているのかを分析して獲れた1尾に感激したのだった。
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使い慣れたロッド、リールで海中の状況を読み、釣りたい魚をしっかりと狙ってヒット、そしてキャッチ。自身にとっては、この海域では最大サイズ。嬉しい1本となった。
今回の2日間に渡る伊豆南沖釣行。初日は乗合ルアー船として、翌日は泳がせ釣りと同船。それぞれスタイルの違う流し方でジギングを楽しませてもらった。初日のヒレナガカンパチは、18.05kg。それ以外は、サワラやメジといった本命には繋がらなかった釣果だったが、とても学びの多い釣行となった。泳がせ釣りとの同船の時は、自分のスタイルとは違う釣りであり、泳がせ釣りでヒラマサ、カンパチ、キハダ狙いの喰わせのテクニックや釣法など知る事ができ、またひとつ引出しが増えた釣行となった。今回は秋になり切っていない夏の海。次は晩秋から初冬にかけてのゲームを狙ってみたいと思っている。
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2日目は、泳がせ釣りのお客さんと同船。この日も、トップに魚が出る様子はなく、ひたすらジギングでボトムから20mの層を探っていった。
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2日目は、1日目にはいなかった沖サワラが回遊。ジグは傷だらけにされ、フォールではラインブレイク。同船の泳がせ釣りのお客さんにもサワラによるブレイクが目立った。そう簡単にはいかない伊豆南沖の大型ターゲット。だからこそチャレンジし続けるのだ。
キャスティングタックル(平松慶監修モデル)
ロッド:PENN・スラマーPHSS-71M、PHSS-71LMH
リール:PENN・オーソリティー 8500HS
PENN・スラマーDX 8500
ライン&リーダー:サンライン・X8フルコンタクト 8号&ナイロンショックリーダー130lb
ルアー:ルグランタンゴ190
ジギングタックル
ロッド:PENN・スラマーSLJS-63M、63ML
リール:PENN・オーソリティー6500HS
ライン&リーダー:サンライン・インフィニティブX8 4号+ツナギート50lb
ルアー:K-FLAT・Gummy200g〜310g、Gummy-fat250g
KEI Jig235g KEI Jig シャープ260g
フック&パーツ:オーナー・ハイパーワイヤー♯7
ソリッドリング6.5mm JS-39 ブルーチェイサー11/0
偏光レンズ:グレンフィールド ZEQUE “STELTH”
伊豆網代港 森竜丸
森野滝雄船長 090-1620-1988
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