【ソルトゲームの基礎知識④】
着用時の救命率は80%超!
釣りの必需品 ライフジャケット
一昔前までは、着用しないアングラーのほうが多かったと言っても過言ではないライフジャケット。しかし2018年の2月に船舶での着用が義務化されたこともあり、いまやライフジャケットは船釣り、岸釣りを問わないマストアイテム。ロッドにリールをセットするのと同じ感覚で着用する習慣をつけたいものだ。
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自分の命は自分で守ろう
ライフジャケット(救命胴衣)は、読んで字のごとく命を守る大切なアイテム。海上保安庁が発表したある年のデータでは、船上から海に転落した人のうち、ライフジャケットを着用していた人の救命率はなんと80%以上。海水温が低い時期もあるため残念ながら100%とはならないものの、浮いていれば早期発見から救出となる可能性は高い。これに対し、着用していなかった人の救命率は30%台。この数字を見ても、ライフジャケットの必要性が実感できる。
自分は大丈夫…と思う人もいるかもしれないが、そもそも落水するようなときは海が荒れた非常時であり、どんなに泳ぎに自信がある人でもケガをしたり、パニックを起こしたりして普段通りの行動ができない可能性もある。落水は「事故」であることをしっかり認識して備えるべきだ。
海中転落時の生存率
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海上保安庁の資料にもとづき、作成したグラフ。海中転落時、着用していれば生存率は2倍以上。
タイプ別ライフジャケット
以前、ライフジャケットを着用しない理由のなかで多かったのは、「体の動きが妨げられるから」というもの。確かに一般的なライフジャケットには、かさばるうえに暑苦しいイメージがある。しかし近年はスマートなタイプの救命具が各種普及したことで、着用のハードルは一気に下がっている。そこでそれぞれのタイプと特徴を紹介しておこう。
A 発泡材を利用したタイプ
このタイプの代表的なものと言えば、レンタルボートや遊覧船などでよく見かけるオレンジ色の救命胴衣。浮力材として発泡ウレタンなどを用いているため、スマートさには欠けるもののベスト自体に浮力があることが最大のメリット。落水した瞬間から浮力体として機能する。衝撃に対するクッション的な効果があることもメリットのひとつだ。それほど動きの激しくない釣りや、浮力を最優先したいときにはこのタイプが適している。
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発泡剤が中に入っているタイプ。膨張式と違い、落水の瞬間から機能する。磯釣りなどをする場合は、このタイプがメイン。もちろん船でもOK。写真左は、ダイワ・DF-3321、写真左は子供用のシマノ・キッズフロートベスト
ダイワ・DF3321
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シマノ・キッズフロートベスト
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B 膨張式(首掛けタイプ)
膨張式は、浮き輪となる部分がカバーのなかに折りたたまれた状態で着用し、落水時にボンベから空気が送り込まれて膨らむ。後述するように自動で膨張するものと手動で膨張するものとがある。
そのなかで首掛けタイプはもっとも幅広いジャンルで使われている形状。コンパクトなため、釣りの動作も邪魔しない。
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首掛けタイプは、ベストの状態で膨らむため、そのまま浮くことができる。写真左はシマノ・ラフトエアジャケット、写真右はダイワ・D-2608インフレータブルライフジャケット
シマノ・ラフトエアジャケット
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ダイワ・D-2608インフレータブルライフジャケット
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C 膨張式(ウエストタイプ)
腰に巻いて使うタイプ。首掛けタイプよりもさらに動きやすく、ルアーフィッシングのなかでもとくに動きの激しい釣りで使われることが多い。このタイプは膨張するとそのまま浮き輪のようになるものもあるが、自分で位置を調節しなければならないタイプもある。いざというとき慌てないよう、事前によく確かめておきたい。
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浮き輪状になるタイプ。このようなモデルなら、そのまま浮いていられるので安心。写真はダイワ・DF-2709インフレータブルライフジャケット
ダイワ・DF-2709インフレータブルライフジャケット
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最新のモデルは、ここまで小型に。膨らんだ時は、U字に開く。写真はシマノ・ラフトエアジャケット(コンパクトタイプ)
シマノ・ラフトエアジャケット(コンパクトタイプ)
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D 膨張式(ポーチタイプ)
ポーチ型は一般的なウエスト型よりさらにコンパクトで、軽快な着用感が特長。膨張時はひもにつながった形で、浮き輪やベストが飛び出す。落水者は浮き輪をつかんだり、ベストを着たりして救助を待つ必要がある。
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ポーチタイプは、ポーチからベスト型や浮き輪型の飛び出してくるタイプがある。
自動膨張と手動膨張の違い
先にも述べたように、膨張式の救命具には自動で膨らむもの(手動も可)と、手動で膨らむものの二通りがある。前者は落水時に自動で膨張することが前提となるが、何らかのアクシデントで膨らまない場合は紐を引いて浮き輪に空気を充てんすることもできる。船釣りで使われている製品の大半はこのタイプになる。
いっぽう手動膨張式は、自身で紐を引かない限りは膨張しないタイプ。そう聞くと不便に思えるが、たとえば腰まで水に立ち込む釣りの場合などは、少し濡れただけで開いてしまっては困るため、こちらのタイプが重宝される。
どちらを選ぶにしても、膨張タイプはボンベの作動がうまくいかなければ命取りになる。安全に使用するため、定期的な点検やボンベの交換は必ず行うようにしたい。
船舶使用時は認定マークのついたものを着用
以上、救命胴衣のタイプを紹介したが、どのタイプも船舶で使用する場合は国土交通省の認定品(桜マーク付き)が必須。さらにそのなかにもA、D、F、Gの4タイプがあるため、購入の際には注意したい。安心なのは桜マークが付いたもので、タイプA(すべての航行区域で小型船舶に適用)のもの。また、いずれのタイプにおいても落水時に脱げてしまわぬよう、各ベルトをしっかり調節しておくことが大切だ。
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船で使用する場合は、桜マーク(右上のマーク)付きのAタイプ(写真モデルでは、表の右下に明記)を選ばなければならない。すでに持っている人は、桜マーク付きのAタイプであるか確認しておきたい。ちなみに膨らみが少ない時には、写真中央にあるノズルの蓋を外し、そこから息を注入する。