【エキスパートのクロマグロの極意】

サンライズ・田代誠一郎船長の
クロマグロゲーム
船長として、アングラーとして
攻略法を解説!

佐賀県・呼子の人気遊漁船・サンライズ新海の船長であり、アングラーとしても多方面で活躍している田代誠一郎さん。サンライズのフィールドが玄界灘、対馬、五島列島周辺、男女群島といった場所であることからヒラマサアングラーのイメージが強いが、クロマグロにおいても遊漁船の創業当時より自船で案内、そして自身の遠征でチャレンジし続けている。究極のターゲットとして位置付け、熱く追い求めているのだ。そんな田代さんに、アングラー、そして船長の目線でのクロマグロゲームを解説してもらった。

サンライズ・田代誠一郎船長の<br>クロマグロゲーム<br> 船長として、アングラーとして<br>攻略法を解説!

玄界灘で田代さんが釣り上げた117kg。国内での自己記録。自船、海外と長年、狙い続けている究極のオフショアターゲットだ。

2025年クロマグロゲーム

クロマグロの遊漁は、2025年は月毎の捕獲数量が決められており、年間60トン、一月当たり5トン(9月からは3トン)と水産庁の決まりによって定められている(前の月に捕獲量を超えた場合は変動)。2025年度は4月1日から開始。釣り上げた場合は届出を行うことが必要であり、30kg以下は採捕禁止。30kg以上は1人毎月1尾までとなっており、陸上げ後1日以内に報告する必要がある。

数量は月初めからスタートし、基準の捕獲数量に達した時点でマグロ釣りは禁止となる。そのような背景から捕獲数量に達するのは月初めの数日となることが多い。そのため、多くの人が楽しめるように、船によってはリリースを推奨していることもある。リリースは、リリースに慣れた船長、同船アングラーと打ち合わせの上で行いたい。

また、人間よりも遥かに大きいマグロ釣りは、ファイト中、ランディング時の事故、想定外の使用方法による道具の破損が伴う可能性がある。実際に怪我や道具のトラブルも聞く。釣りは自己責任で行うものであることを認識して、十分な安全確保のうえ楽しんでほしい。そしてマグロ釣りにおいては、しっかりとした知識、大型魚を相手にする体力を身につけて挑んでほしい。

2025年ボストン釣行にて。写真提供:シマノ

クロマグロを釣ることに燃えた創業当時

田代誠一郎さんが舵を握る遊漁船・サンライズ新海。大型のヒラマサやカンパチを釣らせることで、オフショアアングラーなら一度は耳にしたことがある、いつかは乗りたいと思うほどの人気の遊漁船である。田代さんは大型魚を獲ることに熱く取り組み、玄界灘のクロマグロにおいては船長として操船していることが多いが、自身も長年、国内外を問わず遠征釣行で大型クロマグロを追い続けている。そんな田代さんのクロマグロとの歴史は、遊漁船を創業した当時に遡る。

田代誠一郎船長が営み操船するサンライズ新海。佐賀県呼子から出船する人気遊漁船。速く、高性能機器を搭載したこの船で、大型ヒラマサはもちろん、シーズンによりクロマグロを追い求める。田代さんとのクロマグロとの出会いは、遊漁船の創業前のことになる。

「クロマグロと出会ったのは2005年1月です。遊漁船を創業する前で、お正月に知り合いの船で七里ヶ曽根に行った時でした。茶色の海藻のような塊が見え、それに魚が突っ込んでいて、それが何か分からないままキャストを繰り返していました。後から茶色の塊がイカ団子で、突っ込んでいたのはマグロだと分かりました。海上でクロマグロを見たのは、これが初めてでした。その後、4月に借りた船で知り合いとともにタイラバで出港し、その帰りに見たことのないマグロの群れに遭遇。それを見て、“いつかは釣りたい”と思いました。そして5月にサンライズの前の船『師走』で開業。その船にカップルのお客さんが来て、1日目はクエ釣りをし、2日目に軽い気持ちで七里ヶ曽根へクロマグロを見に行きました。するとトビウオのナブラがあり、ジギングタックルしかなかったのですが、夢中で追いかけました。そのお客さんがその時の光景に感動し、その後20日間も通ってくれました。ただ釣り方が分からないので簡単には釣れない。試行錯誤の末、冷凍のトビウオを試したりもしました。結果、そのトビウオで20kgのクロマグロを初めて自船で釣りました。それからお客さんも来るようになり、マグロ熱が一気に盛り上がったのを記憶しています」

まだ、ヒラマサキャスティングが確立されていない時代。この頃、国内でのオフショアキャスティングの大物狙いで確立されていたのは、遠征でのGTやキハダであり、国内のクロマグロといえば青森において熱いアングラーたちが試行錯誤を繰り返しつつ確立し始めた頃だ。そんなタイミングで田代さんも、自身が遊漁船の創業を決めた地・玄界灘でクロマグロに挑戦し始めたのである。

「この頃、数はかなりいて、そして次第に釣れるようになりました。サイズは50kg、60kg。狂ったようにマグロを追っていました。今の自分はヒラマサのイメージかもしれませんが、昔の僕を知っている人はマグロのイメージかもしれません(笑)。朝3時に出港して夜9時に港戻りで、39日間連続してマグロ狙いで出港したこともありました。当時の玄界灘は今のようなタックルではなく、PE4〜6号を使用。沸いたらすぐに沈む群れが多かったので、飛距離優先で狙っていました。大型を漁師さんは獲っていましたが、ルアーでは特大のマグロはルアーには掛かりませんでした。そして2006年7月下旬に巻き編み船が入り、それからこの時期のマグロは劇的に減ってしまいました。そのため回遊状況に応じて冬場はマグロを狙ってきましたが、それ以外の時期はヒラマサキャスティングの開拓に力を入れていった感じです」

アングラーとして、船長としてマグロを追いかける

その後、アングラーとして青森、そしてアメリカ・ノースカロライナやボストンに大型マグロを求めてチャレンジしていった田代さん。アメリカ遠征では145kg、180kgを釣り上げたという。

「アメリカで経験することで、いろいろなことを吸収でき、さらにさまざまなことが試されました。タックルセレクト、タックル強度、ラインシステム、ファイトの仕方、自身の体力・精神力・パワー、そして船長との連携といったことです。どれが欠けても、獲れない魚だというのを感じました」

大型マグロとのファイトは、さまざまなことを完璧にしておかなければならない。写真は2012年、2015年のアメリカ遠征時のもの。写真提供:田代誠一郎

田代さんは2012年にアメリカ大西洋へクロマグロを求めて遠征。その後2015年にもチャレンジ。当時、日本では資源減少により出会うチャンスが少なくなったため、マグロを求める仲間とともに遠征。自身のスキルアップのためにチャレンジした。エキスパートたちが、これらを経験したことで今のタックルの進化につながっている。写真提供:田代誠一郎

近年、玄界灘にも多くのクロマグロが回遊するようになった。そのため、釣果枠が達していないタイミングであれば、船長としてお客さんとともにマグロを追っている田代さん。そして以前とは異なり、玄界灘でもルアーで大型のクロマグロが釣れるようになったという。それはクロマグロの資源が戻りつつあり、数、サイズともに期待できる状況になったからだ。そして、釣り方の確立とメーカーの努力やアイデアによるタックルの進化も追い風となっている。

「クロマグロが少なくなってしまった時は、“ほんの一瞬見た”などと仲間と言い合うほど少なかったです。ただ、皆が熱い気持ちで取り組んでおり、今よりも試行錯誤しながらチャレンジしていたので、これはこれで楽しかった思い出です。最近は枠の問題がありますが、釣れる確率は増え、より多くの人が挑戦できるようになったと思います。今の自分は、国内マグロは漁獲枠制限で数日しか狙えないとなれば、なかなか船長という立場からチャレンジできませんが、タイミングが合えば国内のその他の場所、海外も含め挑戦は続けていきたいと思っています」

日々、自身の釣りではより大型の魚に挑戦をし続けている田代さん。クロマグロに関しては、アメリカでキャッチした180kgの自己記録を超えることが目下の目標だという。

2015年に大西洋でキャッチした180kgの自己記録。写真提供:田代誠一郎

想定するサイズによって選ぶリールサイズとライン

クロマグロ好き、興味があるアングラーであれば、近年の国内における大型マグロの回遊の状況は知っているだろう。現在は、小型から大型まで各地で狙える状況になっている。

「国内に限って言えば、30〜50kgの群れ、50〜100kgの群れ、100〜150kgの群れ、150〜200kgオーバーの群れで分かれているような感じがします。どの群れが回遊しているかは時期と地域によって異なります。玄界灘では、2025年シーズンはアベレージが150kgで、時折80kgクラスが混ざる感じでした」

これらの群れのサイズによって、田代さんはタックルをセレクトする。

まず30〜50kgの個体がメインの群れであれば、リールはステラSW14000をセレクトし、ラインはPE6号、リーダーはナイロンの140lb。先端にはザイロンノットの30号を約15cm結束するという。

「イワシを捕食している時は、丸呑みする傾向が強いのでマグロの歯によるリーダーブレイク対策としてザイロンを結束します。ただ、喰いが渋くイワシを丸呑みしないような状況では、ザイロンを外したほうがヒット率は高いと感じています」

リーダーの先には、歯によるリーダーのダメージ、結束部の締まり切れ防止のためにザイロンノットを結束。

50kgから100kgクラスの群れであれば、PE8号のタックルをセレクトする。リーダーはナイロン150lb。100〜150kgならPE10号にナイロンリーダー180lb、150kg以上ならPE12号にナイロンリーダー220lbを結束。リールはステラSW18000HGを使用する。

「10号、12号には夢屋20ステラ 20000MAXスプールが良いでしょう。PE12号での大型マグロ狙いでは、このスプールがスタンダードだと思います」

リールはステラSW一択。30〜50kgなら24ステラSW14000XG、それ以上のサイズなら18000HGをセレクト。

【シマノ・24ステラSW】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/reel/largespinning/a075f000043mjvrqag.html

【シマノ・ステラSW】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/reel/largespinning/a075f00002nt4thqai_p.html

リーダーの先には、8号、10号、12号の場合は、ザイロンノット40号、もしくは50号を結束する。長さは次々と大型が喰ってくるような高活性状況の時は、ルアーを飲み込むことが多いため20cm、30cmと長めに接続する。また大型マグロの時は長時間ファイトになることもあり、ザイロンを入れることで結び目の締まり切れを防ぐことができるという。

「自分はザイロンを結びますが、バリバスから発売されている、ザイロンが接続された状態で発売されているアルティメット ファイティングリーダーもおすすめです」

ちなみにリールセレクトでステラSW30000番について聞いてみたところ、超大型を想定してPE15号をセレクトした時に使用するとのこと。ただし20モデルでは、ドラグ力は18000番よりも低く、最終的にスプールを押さえてやりとりすることが必要になることもあると言う。

「これまでPE15号を巻いて、スプールを押さえながら大型とやり取りしたことが何度もあります。しかしそれでも上がってこないマグロもいました。そんなマグロに関しては、PE15号のセレクトは必要になってくると思います。また、クロマグロが次々と喰う状況で、船上で何人かが投げていて、ダブル、トリプルでヒットしてしまうことがあります。そのような状況では船がすぐにフォローできないため、30000番にPE15号を巻いたリールを選択するのはありだと思います」

また、接続するリーダーの長さについては、魚の体長よりも少し長い長さにしているという。200kgクラスの場合、叉長が2m10cmと仮定し、2m50cmほどを結束する。魚体にラインが絡みつくことがあり、リーダー部分で対応するためだ。

「リーダーの長さは、いつも魚体長に対してギリギリで超える程度の長さを考えて結束しています。その理由は、少しでもPEラインとリーダーの結束部分によるガイド干渉を減らし、飛距離を出したいからです。セレクトするロッドによっては短いものもあり、結び目がスプールに入ってしまうこともありますが、できる限りリーダーを短くし、PEラインに指を掛けてキャストしたいと考えています」

【田代流ザイロンノットの結束】

リーダーの先にザイロンノットを接続。ザイロンノットの太さは、使用するラインによって30号、40号、50号を使用。

ザイロンノットを結束する長さより倍ほどの長さで切り、芯を抜く。強いザイロンノットを綺麗に切れるハサミが必要。

ザイロンノットの中にリーダーを通していく。

通す距離はおおよそ半分くらい。

リーダーを通した部分で「8の字結び」でリーダーを固定する。

ザイロンノットは編み込んだ繊維がほどけてくるので、8の字結びの結び目をできるだけリーダー側に寄せて締め込む。

ザイロンノットの先端をスイベルに通し、使用する長さで折り返す。

3回通しのユニノットで結ぶ。隙間ができないように、しっかりと締め込む。

ザイロンノットの余りを、結び目の近くでカットして完成。

【バリバス・アルティメット ファイティングリーダー】

ザイロンノットがすでに結ばれているバリバスのリーダー。ザイロンノットの長さの違いでラインナップされている。SHOOTING MODEL(35〜45cm)は、ナブラ撃ち専用で、丸呑みやスレ掛かりでも安心のロングザイロンモデル。MULTI MODEL(10cm)は、ナブラ撃ち、誘い出しともに対応するミドルザイロン設計。INVITED MODEL(5cm)は、魚に見切られにくく、ルアーの操作性が良い誘い出し専用のショートモデルだ。先端には強靭でいて、スプールに通しやすいスイベルが装着されており、リーダーの強度は105lbから220lbまで用意されている。

https://www.varivas.co.jp/Product/searchgroup/name/type:/view3:2/id:4863

ロッドは狙ったサイズをリフトできる強さをセレクト

「マグロ対応のロッドは、近年は多くの釣果によってデータが取れてきたことで日々進化を遂げています。自分の好みとしては、ロッドを立てて曲げてファイトできる強いモデルです。ロッドを曲げて、その反発を生かしてリフトアップすることで、マグロとの距離を縮めやすくなったと感じています」

ただし、使用するラインや狙うサイズに合わせることも必要だ。

「30〜50kgの群れの場合は、オシア プラッガー リミテッドやオシアプラッガー フルスロットルのS83HやS88Hをセレクトします」

どちらのモデルも安定した飛距離性能を備え、動きの速い群れに対しても離れた場所からでもアプローチすることが可能。ブランクスにラインが当たらないXガイド タッチフリーチタンにより、ライントラブルが起きにくく、ラインの劣化も軽減してくれる。そして50kgクラスの引きにも余裕で対応できるパワーを備えている。

【シマノ・オシアプラッガー リミテッド】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/rod/offshoresalt/casting/a075f000048lh78qaa.html

【シマノ・オシアプラッガー フルスロットル】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/rod/offshoresalt/casting/a075f00003xhcsuqaa.html

Xガイド タッチフリーチタンにより、キャスト時にブランクスにラインが当たらず、飛距離を出すことができる。シマノ独自のガイドで機構だ。

「また50〜100kg の群れであれば、オシアプラッガー BGのFLEX ENERGY S710XH を選びます。このモデルは、ティップがしっかりと入り、操作性も良いモデルです。硬すぎず柔らかすぎずで、飛距離も出せます。硬いロッドでは小さいベイトフィッシュの反応がある時に対応できませんが、このロッドならティップが柔らかいことで小型ルアーもキャストできます。また、ロッドを立てたファイトも行えるモデルです。150kgクラスの大型のマグロが掛かってしまった場合でも、ストレートファイトで対応できます」

オシアプラッガー BGシリーズは、3つの異なるコンセプトで展開されている。飛距離、パワー、スピードの総合力を重視した3ピース設計のMONSTER DRIVE。安定した操作と飛距離で、曲げて獲る粘り強さも備えたFLEX ENERGY。オシア最強のシリーズで、200kgクラスのクロマグロを獲るために開発されたBLUEFIN TUNAだ。曲げ、ネジレ、潰れに高い強度を発揮するスパイラルXコアと、ネジレ剛性をさらに高めブレを制御するハイパワーXを採用し、高い耐久性を備えることで過酷なファイトに対応するモデルだ。

【シマノ・オシアプラッガー BG】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/rod/offshoresalt/casting/a075f00002llolkqac.html

オシアプラッガー BGは、ライントラブル減少、放出抵抗の軽減、ラインのダメージを軽減するRVSGガイドをバット部に採用。グリップの脱着部は、ロック式になっておりトラブルの心配がない。

「100〜150kgクラス、それ以上であればオシアプラッガー BG BLUEFIN TUNAを使用します。ストレートファイトでは、正直、大型対応ロッドならどんなモデルでも対応できますが、ロッドを立てて相手によりプレッシャーを掛けながらファイトをするとなると、バット部がしっかりしてロッド全体に力があるモデルが必要です。そのため BLUEFIN TUNA をセレクトします。S73XXH、S70XXXH の2モデルです」

2つのモデルの違いは、S73XXH はレングスが長いため飛距離を出しやすく、さらに曲がりやすいことからファイトが行いやすいという。ただし相手が大きい場合は、S70XXXHに比べS73XXHはリフト力が下がるため、ポンピング時に自身の力が若干必要になるという。一方で S70XXXH はレングスが短いぶんキャスト飛距離は劣るが、リフトパワーが高く、曲げてからはロッドの反発で魚を浮かせてくれるモデル。どちらを選ぶかは、使い手の好み、体力によるという。

「一般の方、マグロ釣り初心者の方が使うのにおすすめなのは、扱いやすいFLEX ENERGY S710XH と BLUEFIN TUNA S73XXHですね。S70XXXH は非常に強いため、扱いきれない場合もあると思います。腕力に自身のある人、マグロ釣りの経験が多い人はS70XXXHが良いでしょう。自分は大型がいる状況ならS70XXXHをセレクトすることが多いです」

ラインの準備、リールの準備

リールにラインを巻く際、ファイト時のスプールへのラインの食い込みによるトラブルを防ぐためにテンションを掛けてラインを巻くことはどんな釣りでも基本だが、マグロだからといって極端に強いテンションにする必要はない。またそれ以外にも注意点がある。

「ラインに極端に強く負荷を掛けてスプールに入れても、キャストして回収する際には、その部分はそれほど強い負荷では巻かれないため意味がありません。自分は約3kgの負荷でスプールにラインを巻いていきます。そして巻く時に気をつけないといけないのが、巻かれているラインの形状です。スプールに対して、きちんと平行になるように巻くこと。これはキャストトラブルを起こさないために非常に重要で、お客さんでもできていない方を度々見ます。そのためラインは自分で確認しながら巻くのがベストです。もしもお店で巻いてもらうようなら、自身が使用するリールにスプールをセットして平行になるように巻いてもらう、または巻いている最中に平行になっているか確認したほうが良いでしょう」

スピニングリールは、リールごとに巻きクセがある。ラインを巻いた時に、ハの字や逆ハの字にラインが巻かれてしまうことがある。これによりキャスト時にまとまってラインが出るなどのトラブルが起こりやすくなる。巻きながら平行にならない場合は、シャフトに付いているワッシャーを減らしたり追加したりして調整する必要がある。このクセを把握し、事前に対応しておくことが大切だ。

また実釣時は、事前にドラグ値を正確に設定しておくことが、クロマグロゲームでは必須となる。

「僕は、クロマグロ狙いではどのタックルも初期設定は8kg前後にします。まず、使用するリールのドラグをいったんMAXまで締め、何kgまで入るかを確認します。 これは、これまでの使用で ドラグが壊れていないかをチェックするためです。 しっかりとMAX値まで入るようであれば、そこから戻して 8kgに設定して準備しておきます」

リールは使用していて不具合を感じたら、すぐにシマノへメンテナンスに出すという。ちなみに田代さんは、ステラSWで良型クロマグロを4本連続で釣り上げても、不具合は一切出なかったとのこと。ただし、それは正しい使用方法で扱っているからこそでもある。大型とファイトしたリールは、内部で何か起きている可能性があるため、使用しないタイミングでメーカーへオーバーホールに出しておくと安心だ。

「リールが万全の状態であれば、精神的にも余裕が生まれます。そういった意味でも、メーカーでのメンテナンスは行っておいたほうが良いと思います」

クロマグロゲームは、毎回準備は完璧にしておきたい。リール、ラインはフレッシュな状態がベストだ。そしてドラグは、事前にしっかりと調整しておくこと。

初期性能が持続するラインセレクト

何度もチャンスを得られない、もしかしたら一生に一度の大物と対峙できるかもしれないクロマグロゲームでは、ライン選びは「太さがあれば何でも良いわけではない」というのは誰もが想像できるだろう。強さ、安定性、トラブルレス、そして初期性能の持続性など、信頼できるものが必要になる。

田代さんが対クロマグロ用に選ぶラインは、自身がバリバスとともに長期間のテストの末に完成させた「アバニ キャスティングPE SMPヒラマサチューンX8」だ。名前に「ヒラマサ」と入っている通り、ヒラマサキャスティング用に開発されたモデルだが、その性能の高さからマグロゲームでもメインに使用している。また、2025年は「シマノ・オシア 17+PE」も使用しているという。

【アバニ キャスティングPE SMP ヒラマサチューン X8】

https://www.varivas.co.jp/Product/searchgroup/id:5003

【バリバス・オーシャンレコードショックリーダー】

https://www.varivas.co.jp/Product/searchgroup/id:4665

「SMPヒラマサチューンは、ノーマルのキャスティングPE SMPと原糸は同じですが、コーティングを2回施しています。VARIVAS独自の樹脂コーティングと独自のスムーステックコーティングを施していいます。表面がよりサラサラになることでガイド抜けが良く、ウインドノットなどのトラブルも少なくなります。コーティングを2回行うことで、普通のSMPよりも擦れに強いのも特徴です。またハリがノーマルSMPよりもあるため、ラインシステムも作りやすいと思います」

ラインのコーティングは、使用しているとどうしても剥がれてきてしまう。ノーマルの「アバニ キャスティングPE SMPは、SUPER MAX POWERの原糸に独自開発のコーティングを施したことで耐摩耗性・耐久性に優れる高実績PEライン。さらにSMPヒラマサチューンはスムーステックコーティングを施し、表面の滑らかさと長時間の擦れによるダメージを受けにくい性能を装備させた。毛羽立ち、色落ちも少ない。ファイトが長くなるマグロゲームに最適なラインと言える。その性能は、数々の田代さんの釣果で実証している。

またリーダーは、「VARIVAS・オーシャンレコードショックリーダー」を使用している。こちらも田代さんが監修したリーダー。強度があり、伸びが適度なことがセレクト理由だ。伸びるソフトなナイロンリーダーは、ファイト時にマグロの強烈な引きを吸収し、ノット部分やアングラーをサポートするが、ルアーの操作性は減少する。田代さんの好みは、そこまで伸びのない、「適度な伸び」のオーシャンレコードショックリーダーである。また適度な硬さがあることで、システムが組みやすくガイド抜けが良いのも、このリーダーの特徴。クロマグロゲームにおいてファンが多いのも頷ける性能だ。

「ラインシステムは、いつも通りFGノットで結束しています。マグロ用に編み込みを増やしたり、ハーフヒッチを多くしたりはしていません」

編み込みは左右を1回として15回程度。手にラインを巻きつけて行うが、しっかり密になるようにテンションを掛けながら編み込んでいく。その後の編み込み部分を高負荷で締め込んだ後、足にPE本線を巻いてテンションを掛けながらPE本線とリーダーに被せるハーフヒッチを行う。上下を1回として4回、PEライン本線だけに被せるハーフヒッチは上下を1回として5回行う。その後、ハーフヒッチのヒゲの2回通しエンドノットを2回行い完成となる。このノットで、これまでマグロ、ヒラマサと多くの実績を田代さんは得てきた。結束方法はシンプルであり、探っていてラインに気になる箇所が見つかったら、すぐに結び直すのが田代流でもある。編み込み、締め込みなどのコツは、下の動画を参考にすると良いだろう。

シンプルな田代さんのFGノット。編み込む時は、一回一回しっかりとテンションを掛けながら締め込んでいく。丁寧に編み込むことで、高い結束強度を実現する。釣行中、少しでも結束部分で気になる箇所があれば、すぐに結び直す。

【田代流FGノット解説】

ちなみにボールベアリングスイベル、スプリットリングなどの金具類について聞いてみたところ、「特にメーカーにこだわりはありません。お客さんが船に置いていったものを使ったりしています(笑)。ただ、お客さんが持ってくる製品はCBONEやカーペンター、SOULSなど、強度があり優れたものが多く、そのあたりの製品を選んでおけば間違いないと思います」とのこと。多くの実績を持つ、信頼できるメーカーのものを選びたい。

ルアーセレクトはベイトサイズに惑わされない

ルアーセレクトに関して、田代さんはどのように考えているのか?

「一番は、その時にマグロが捕食しているサイズに合わせることですが、シラスや小型のイワシの場合、パワーのあるタックルを使用しているため、ルアーを合わせることはできません。タックルセレクトはまず、狙うマグロのサイズに合わせたロッド、リール、ラインとなり、そのタックルで投げられる、飛距離を出せるルアーをセレクトすることになります。そのため選ぶルアーは限定されますが、そのルアーに反応してくるマグロを探していきます。ちなみにタイプでは、自身のこれまでの経験やお客さんのヒットの様子を見る限り、ポッパーに好反応を示すことが多いように感じます。また、使用するタックルでキャストできるルアーのサイズに関しては、大きすぎるものよりワンサイズ小さい方が良いと感じています。30cmのサンマを捕食している状況では、30cmのルアーよりも25cmのルアーのほうが反応が良いことが多いです」

普段、大型から中型まで様々なシマノ製ルアーを田代さんは使用しているが、中でもヘッドディップ200Fは万能ルアーだという。長さはないがボリュームがあり、あらゆるベイトパターンに対応。12号でも飛距離を出しやすく、マグロ釣りには必需品とのこと。その他、フルスロットル190F、オシアペンシル別注平政190F&220F、バブルディップ220F、ボムディップ170F、ボムスロットル200Fもよく使用する。また、シイラベイトを捕食している状況であれば、迷わず大きいサイズのプラグを選ぶという。

ポッパーのアピール力が効果的な場面が多い。写真はバブルディップ220F フラッシュブースト。その他、ボムディップ170F、ボムスロットル200Fといったポッパーも活躍する。

【シマノ・バブルディップ220F フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5czyqav.html

写真は、田代さんがよくセレクトするというトップウォーターペンシル。下から、ヘッドディップ200、オシアペンシル別注平政190F、フルスロットル190F。

【シマノ・ヘッドディップ200F フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5d0oqav_p.html

【シマノ・オシアペンシル別注平政190F フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000cbga6qaf.html

【フルスロットル190F フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c6dcoqav.html

 

「ルアーセレクトは、捕食されているベイトにサイズを合わせることよりも、自分が使用するタックルで投げ切れて、コントロールできることのほうが大切です。ベイトサイズに合わせても、良い場所に入れられなければ掛かりません。良い場所に落とすことのほうが重要です」

クロマグロは、状況に応じてナブラ撃ちと誘い出しで探る。ナブラ撃ちの場合は反応のあった場所に、マグロサイズに合わせたパワーのタックルを使い、素早くルアーを投げ入れることを最優先に考えるべきだ。

「クロマグロキャスティングは、ベイトフィッシュの濃さによってナブラ撃ちになるか誘い出しになるかが変わります。ナブラ撃ちではキャストコントロールをしっかり行うことが大切です。一方、誘い出しでは、群れを追いかけながら探る、またはヒラマサキャスティングのように船を流しながら探ることもあります。ちなみにクロマグロゲームは、群れを探し、いきなり本番がやってくるパターンが多いです。そのため、マグロタックルで狙った場所に投げられるキャスト精度を身に付けておくことは非常に重要で、キャスト練習は欠かせません。サンライズでは、群れが見つからない時間帯を利用してキャスト練習を行うこともあります。このように練習しておけば、いきなり本番が来ても対応できます」

クロマグロゲームは、ロッドは強く、ラインも太い特殊なタックルで行う。初心者や初めて使用するタックルの場合、出船前にキャスト練習をしておき、どのサイズのルアーならしっかり振り抜けるか、どのようにすれば飛距離を出せるかを確認しておくと良いだろう。

田代さんが手にしているルアーは、テスト中の大型プラグ。長さは、なんと30cmある。

フックはトレブルがメイン

「フックも、“これでなくてはダメ”というこだわりはありません。太軸で強靭なモデルであれば、いろいろなモデルを使用しています。具体的には、Gamakatsuのトレブル24 GTレコーダー、BKKのRaptor-Z、オーナーばりのスティンガートリプル66 などです」

では、トレブルフックかシングルフックかという問いに対しては、ほぼトレブルフックを使用するとのこと。海外でのクロマグロ狙いの時は、場所によってはレギュレーションがあるため、その場合はシングルを使用するという。

「トレブルフックを使用するのは、掛かりやすさの観点だけではなく、ルアーの動きが良くなると思うからです。これまでずっとトレブルフックでルアーを操作してきており、その動きに自分は慣れているのもありますが、シングルだと思い通りの動きを出すために調整しなくてはならないと感じています。またハリ先が少ないことで、“掛からないかも” というストレスを無くしたいという理由もあります」

クロマグロの状況による攻め方

ナブラ撃ちは、素早く状況を見極め、狙った箇所にしっかりとルアーを着水させることが必要。使用タックルで精度の高いキャストができるよう、事前に準備しておきたい。写真提供:バリバス

前述したようにキャスティングでのクロマグロ狙いは、ナブラ撃ちと誘い出しが基本パターンとなる。田代さんの狙い方とともに、船長として操船している時に、お客さんにやってもらっていることも聞いてみた。

まずナブラ撃ちは、ナブラの濃さによって攻め方が変わる。

「歯抜けのようなナブラは少し攻めにくいため、同船者でキャストのタイミングを合わせてもらいます。密集ナブラの場合は、真ん中で喰わせてしまうと群れにラインが当たってしまいます。ナブラが動いていく方向の前に投げるのが良いのですが、先端の中心もルアー着水後にマグロの群れが入ってきてしまいます。先端の奥側も、ヒットしたら手前で入ってきた群れにラインが当たる可能性があります。そこで群れの先端の手前側にルアーを落とすのがベストだと思います」

潮目でたまに沸くような時は、誘い出しで狙っていく。

「誘い出しは、ルアーをキャストし、5秒ほど放置してワンアクションを数回繰り返し、数回で出なければ回収してキャストし直します。またソナーでマグロの群れを把握し、その進行方向の先端にルアーを投げるような釣りもサンライズではやります。この時も、乗船者にキャストのタイミングを合わせてもらいます。合わせてもらうことで、トビウオの群れが落ちてきたようになり、一匹ヒットすると続けてヒットしてくることも多いです。この攻め方では、気づいてもらいやすいポッパーの実績が高いです。アクションを入れて10秒以内に出なかったら回収して、また群れの先端に投げられるように船を移動して再チャレンジする、という感じで攻略していきます。自分はこの釣り方が好きで、マグロはゆっくりと泳いでおり、他の船と取り合いにならず、群れの魚体で擦れて起こるラインブレイクも少ないです」

誘い出しは、ペンシル、ポッパーともに使用。田代さんが手にしているのは、万能ルアーだという高実績のヘッドディップ200F。

マグロゲームは、どのくらいのサイズのマグロがいるのか、どのような状況なのかは、マグロ回遊エリアに行ってみなければわからない。そのためにも数タックルの準備は必要。どのタックルも、いつでも投げられるように準備しておく。もしもタックルを厳選するなら、船長から事前にしっかりと情報を得て対応したい。

ヒット時の対処とファイトの仕方

キャストしたルアーに、巨大なクロマグロが飛沫を上げてドカンと出る。いざ自身のルアーにヒットすると、慌ててしまうかもしれない。しかし、冷静に対処することが大切だ。

「まずバイトした直後に、クロマグロが咥えたルアーに違和感を感じて首を振ることがあります。ここでルアーが外れないように、ラインテンションをしっかり維持することが重要です。ロッドエンドを脇に挟んだまま、糸フケを作らないようにリールを巻き続けます。この段階ではリフトして上げることは考えなくて良いです。マグロが異物(ルアー)が外れないと判断すると一気に走ります。ここでフッキング完了となります。過度なフッキングは必要ありません。この走りは、一気に長距離走る時と、少しだけ走ってからこちらに向いて泳いでくる時など、いろいろな動きがあります。とにかく、ラインテンションを保っておくことが重要です。走りが弱まってきたら、テンションを維持しつつギンバルにロッドを差し込みます。この時、ドラグを15kgなど高く設定しているとギンバルにロッドを入れられません。ドラグは初期設定の8kgのままです」

まずは相手に焦らせる。泳ぎの速いマグロだが、普段はエサを捕食する時以外は速く泳いでいない。速い動きで泳がせ、体力を消耗させることが重要だ。

「ドラグは8kgのままですが、ラインの出方によって、周りのアングラーのヒットによっては少しドラグを締めても良い場合があります。ただし、過度に締めることはしません。また水を用意しておき、リールに掛けて冷やすことも重要。焦らずに対処することが大切です」

そして相手の動きが止まったら、ドラグを締めて巻きに転じる。

「ラインの角度が斜めであれば、ドラグを締めてプレッシャーを掛けつつ、相手の動きに合わせてポンピングで巻きます。ラインが垂直に下に入っている場合、ドラグを強く入れてしまうと、ロッドは下方向に大きく曲がり、体勢が前屈みになりキツくなってしまいます。船長と連携できれば、船を操作してラインが斜めになるようにしてもらいます。そうでなければ、ロッドを脇挟みに戻して、ストレートファイトの体勢にしてからドラグを締めて対応します。ドラグは相手に動きに合わせて徐々に締めるのがベストです。自分はファイト中、常にロッドを立てて相手によりプレッシャーを入れるように意識していますが、立てると体勢がキツい場合はストレートに持ち替えます。こうした動作を繰り返しながら、ラインを回収して距離を詰めます」

ロッドは立てて、ロッドの弾性によってプレッシャーをより加えたほうが、圧倒的に早く上がるという。

「ギンバルファイト中、ロッドを支える手はフォアグリップ上部を持つと楽です。ギンバルは太ももあたりに設置しておき、ロッドを立てた時にフォアグリップの先端あたりを持ちやすくしています」

ドラグ値は、最終的に150〜200kgサイズなら20kgくらいまで上げる。ハンドドラグも併用する。初期ドラグ8kgから最大20kgまで、どのくらいノブを回せば調整できるか事前に知っておくと、焦らず適正ドラグに設定できる。

「残り30mが地獄の時間です。この層を最後の力でクリアします。前半で体力を使いすぎると握力が無くなり、腰が痛み、精神的にも参ります。この30mに備え、ここまでで体力の7割は温存しておく必要があります。水深が浅ければ体力を使わず寄せられますが、水深が深く潮が速い場合は体力を奪われます。それでも最後の30mに備え温存する必要があります。マグロの群れに向かうまでは体を柔軟にほぐし、ファイト中は使う筋肉や疲労具合を意識して使い分けると良いです。一度ダメになった筋肉はすぐには回復しません。マグロ釣りはスポーツだと実感します」

巻けるタイミングでは少しでも巻き、徐々に距離を詰める。マグロは見える範囲で回り始め、船底をかわしながら少しずつ寄せていく。この時、ドラグ20kgで円の外側を回る時にラインが『ジッ、ジッ』と少し出る程度だという。そして円を描きながらこちらに向かってきた時に、ラインを少しずつ回収する。

「ストレートファイトでは、マグロが見えたらドラグを最大まで締めます。水面近くまで巻き上げ、回っているマグロに合わせて船底をかわす際、ラインが船に当たるとラインブレイクやガイド破損の恐れがあるので注意が必要です。ガイドを逆向きにして、船から遠ざけ耐えるのがベストです。また、このやり取りの時に船長が船でフォローしすぎるとマグロを引っ張る状態になり、マグロが回復してしまいます。アングラーは耐えて巻き上げる必要があります。そして水面まで上げたら何回か空気を吸わせ、ランディングに入ります」

最後は浮かせ、何回か空気を吸わせると大人しくなる。そうなったら、船長やクルーなどにリーダーを取ってもらいランディング。リリースの場合、素早くルアーを外し、船で引っ張り蘇生させる。写真は2025年ボストンにて。写真提供:シマノ

ちなみに、マグロはある程度疲れさせたほうがリリースがしやすいという。早く上がることもあるが、早すぎると元気で暴れるため注意したい。

「マグロは疲れていても、船を微速で引っ張ってあげれば5分ほどで泳ぎ出します。ランディングやリリースの際は、しっかり疲れさせてからのほうが安全です。ちなみに、自船でも大型マグロのリリースはかなり慣れました。ここ数年で、アングラーも船長も多くの経験を積めたと思います。また、タックルやリリース用の道具に関しても、様々なデータを得られたと思います。これからどんな新しい道具や手法が出てくるでしょう。楽しみですね」

タックル以外で必要なもの

マグロ釣りでは、タックル以外にも必要なものがある。田代さんが用意したほうが良いものとして挙げるアイテムの一つがグローブだ。

「グリップ力の高いグローブは必須だと思います。グリップ力があることで握力の疲労を少しでも軽減できます。ファイトの最後は体力の限界に達しているため、手からロッドが離れそうになりますが、それをグローブでなんとか凌ぎます。シマノ製やバリバス製を使用していますが、どちらもおすすめです」

【オシア キャスティング プログローブ】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/wear_footwear/gloves/offshore_rockshore/a155f00000emc9gqax.html

【バリバス・ファイティンググローブ マックス】

https://www.varivas.co.jp/Product/searchgroup/id:5078

また、ギンバルも必需品だ。150kg以上の大型を相手に、ロッドを立てたファイトを行うためには、ギンバルを下げた位置でセッティングでき、太ももを開いた状態でもしっかりと太ももに当たる大きめのものがベストだという。

ちなみに普段、裸足で釣りをする、操船をすることで知られる田代さんだが、マグロの時の足元はどうなのか?

「これまで履かないこともありましたが、これからは履こうと思っています。大型マグロとのファイト中は常に下方向にテンションが掛かるので、僕でも足が痛くなります。クッション性のあるものを履いていたほうが負担が少ない。マグロでは重要性を感じています」

さらに、偏光サングラスも必要なアイテムだ。マグロの動きを見るためだけでなく、安全性を考えて着用したほうが良い。

「マグロはロッドが折れることもあります。また、マグロの群れを見て皆が興奮状態になり、その中でキャストする必要があります。偏光サングラスを着けていたほうが安心です。さらに、夏場など長時間ファイトで体力を消耗することを考慮し、通気性の良い服を選び、光を吸収しやすい黒のウェアは避けるなど服選びも重要です。服選びだけで、体力の消耗が全然違います」

クロマグロ釣りで船長として行うこと。考えること。

「マグロ釣りは、船長と連携できるかでキャッチ率が大きく変わります。大型のマグロを掛けた時、アングラーはメンタル面でやられます。『体力は持つか? ラインは大丈夫か?』など、不安要素が次々と出てきます。そんな時、船長としてどうフォローするかをいつも考えています。マグロが泳いでいる方向、巻くタイミング、耐えるタイミングなどを伝えます。また、あえてフォローしないタイミングもあります。その理由も解説してあげます。船長と連携することで、精神的な支えになると考えています。これまで大型魚を効率よく上げる方法を経験から学び、それをフルに活用して、少しでも早くキャッチできるようアドバイスや操船をしています」

ちなみに、跳ねている大型マグロのサイズを見て、アングラーを観察して、「本当にあなたはあの魚にルアーを投げていいの?」と感じることもあるという。誰もが狙う権利はあるが、「あれは無理かもしれない」と思う時もあるとのこと。サイズを見て、時には自身で獲れるサイズを選ぶことも必要だ。

結果として、体力を使い切ってギブアップする人もいるが、同船アングラーは自身の体力温存のために交代せず、サンライズでは結果として田代さんがファイトを代わりに行うことが多い。

「他のアングラーを次のナブラに案内するために、早く上げる必要があります。そのため、短時間ファイトを心掛けます。ファイトは自身の経験になりますが、それでも大変です。そのため、獲れるサイズを選んで欲しいと思うことがあります」

マグロには、それなりの覚悟で挑む必要がある。自分の何倍もの重さがある特大サイズは、簡単に勝てる相手ではない。だからこそ、自身の身体を万全にし、しっかりとしたタックルが必要になる。

「狙う魚に対して、根本的な準備ができていない人は狙う資格がないと思っています。キャスティングで狙うマグロは、サイズ、引き、スピード、価値、どれもトップレベルです。そんな最強の生物に挑むには、アングラー側がパーフェクトでないと勝てません。完璧な道具はもちろん、体力や精神力も必要です。日帰り釣りの気分で対峙する相手ではありません。マグロが姿を現すまでに、ストレッチなどを行い身体の準備を整えておくことが必要です。また分からないことは船長に質問して解決しておく。ラインシステムや結束を完璧にしておくのは当たり前。ドラグの設定をしっかり行うのも当然です。すべてを準備し、ベストを尽くしても負けることがある魚です」

また、クロマグロは1日に何本も上がる釣りではない。船の誰かが掛け、それを見守る時間も多い。しかし、それも貴重な経験となる。ファイトの方法やマグロの動きなど、多くを学べるチャンスだ。

これまで多くのクロマグロとの経験を積んだ田代さんは、数々のトライ&エラーを経て結果を残してきた。だからこそマグロ狙いは、「軽くやるものではない」と感じるという。

「SNSでは簡単に上がっているように見えますが、綺麗に上げられる人は僅かです。クロマグロとのファイトは苦しいものです。そのため、入念な準備が必要です。自分自身も、クロマグロ釣りでは『自分がどこまで出来るか』を常に意識しています。自身の立場から次世代に見せる釣りや、かっこいい釣りを追求していますが、クロマグロでは完璧な姿を見せられるとは思っていません。自分がこれまでやってきた釣りを見せるだけ。それがこのターゲットです」

2025年ボストンにて。写真提供:シマノ

2025年ボストンにて。写真提供:シマノ

 

写真提供:シマノ、バリバス、田代誠一郎
写真と文:アングラーズタイム編集部

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