【エキスパートのクロマグロの極意】

更なる結果を求め長年追い続ける!
カリスマアングラー・鈴木斉の
クロマグロキャスティング

クロマグロ、キハダ、ヒラマサ等の大型魚からショアシーバスまでマルチにこなすプロアングラー・鈴木斉さん。若き頃からソルトゲームシーンの第一線で活躍し、多くのメディアに登場して、数々のメモリアルフィッシュを手にしてきた。クロマグロの釣果においても動画、WEB、雑誌にて発表されている。そんな鈴木さんが選ぶ2025年現在のクロマグロタックル、そして攻略法はどのようなものなのか?

更なる結果を求め長年追い続ける!<br> カリスマアングラー・鈴木斉の<br> クロマグロキャスティング

写真提供:シマノ ※写真は2018年~2019年の釣果。

2025年クロマグロゲーム

クロマグロの遊漁は、2025年は月毎の捕獲数量が決められており、年間60トン、一月当たり5トン(9月からは3トン)と水産庁の決まりによって定められている(前の月に捕獲量を超えた場合は変動)。例年、4月1日から新たな枠で開始される。釣り上げた場合は届出を行うことが必要であり、30kg以下は終年採捕禁止。30kg以上は1人毎月1尾までとなっており、陸上げ後1日以内に報告する必要がある。

数量は月初めからスタートし、基準の捕獲数量を超えるおそれがある場合は、マグロ釣りは禁止となる。そのような背景から捕獲数量に達するのは、時期にもよるが月初めの数日となることが多い。そのため、多くの人が楽しめるように、船によってはリリースを推奨していることもある。リリースは、リリースに慣れた船長、同船アングラーと打ち合わせの上で行いたい。

また、人間よりも遥かに大きいマグロ釣りは、ファイト中、ランディング時の事故、想定外の使用方法による道具の破損が伴う可能性がある。実際に怪我や道具のトラブルも聞く。釣りは自己責任で行うものであることを認識して、十分な安全確保のうえ楽しんでほしい。そしてマグロ釣りにおいては、しっかりとした知識、大型魚を相手にする体力を身につけて挑んでほしい。

鈴木斉、クロマグロとの決定的な出会い

クロマグロをルアーで釣るのは簡単ではないと言われていた時代があった。今から25年以上前のことである。今でも釣るのは簡単ではないが、当時は一部のエキスパートたちが釣り方、道具などを試行錯誤している時代であった。そんな黎明期に、鈴木斉さんもクロマグロを狙い始めた。

「クロマグロを初めて狙いに行ったのは、25年ほど前です。青森県と秋田県の県境に位置する久六島でした。それ以前に松前小島においてルアーで釣っているのを釣り雑誌で見ていて、ルアーで釣れるならとチャレンジしたのです」

クロマグロのルアーフィッシングでの釣果は、まだ数えるほどしか無かった時代。釣り方や情報、道具も少なかった。

「キハダはキャスティングで釣っていたので、そのつもりで準備をしたのですが、案内してくれる船長から『ジギングで釣る』というのを聞き、ジギングで挑戦しました。ところが現場に行くと一面ナブラ。ジギングでは対応できない状況。40kg、50kgのクロマグロがあちこちで跳ね、船の下を猛スピードで横切り、鳥山ができ、そんな光景を見て『これは絶対釣りたい!』と思ったのを記憶しています。久六島の光景を見て一気に火がついた感じでした」

当時、まだ発展途上のオフショアゲームでは、40kg、50kgのクロマグロは大型であった。そして、結果を出すまでは簡単ではなかった。

「行けば凄い状況に遭遇するかというとそうでもない。また漁師さんとの兼ね合いもあって探りきれないなど、納得のサイズが獲れぬまま数年が経ちました。16、17年ほど前に、よりルアーで狙いやすい竜飛崎方面に場所を移しましたが、当時はクロマグロの資源管理がされておらず、個体数が少なかった。フィールドへ赴いても、マグロに会えない。一瞬だけ姿を見た、ジャンプする姿がちらっと見られたなどと仲間同士で話が出るほど、マグロと出会うのに難しい時代でした」

それでも毎年、7月、8月、9月とシマノのテスト、プライベートで通った。できるだけ掛かる経費を抑えるために車中泊しながら出船のタイミングを待つこともあった。このマグロが極端に少ない時代は、今からおよそ10年前まで続いた。

「10年ほど前に、テレビのロケでシイラを捕食しているパターンに当たり納得できるサイズを掛けることができましたが、大型魚との経験不足で、ラインキャパも少なく、ドラグ調整もうまくいかずにラインブレイクしてしまい獲れなかった経験をしました。当時、開発中だったステラ20000PGのプロトに、PE10号を220mほどシマノ担当者と旅館で深夜に手巻きで巻いたリールでの挑戦でした。掛かったのは、その時は100kgクラスだと思いましたが、今思い返すと200kgクラスだったと思います。それまで経験したことのない魚のパワー、ファイトでした。これがかなり悔しかった。このファイトで、より確実に獲れるようになるには、経験を積むしかないと痛感しました」

しかし、国内クロマグロではチャンスが少ない。そこで鈴木さんは大型マグロとのファイトを経験するために、アメリカ大西洋岸・ノースカロライナに行くことにした。ファイトは一回の釣行で2回ほど経験でき、数年通い、最大で160kgほどをキャッチしたという。そして貴重な経験を積むことができたと同時に、すでにこの地で経験を積んでいる他のアングラーのファイトを見ることで勉強にもなった。課題も見つかった。

「マグロは釣り上げましたが、思い通りのファイトができずに悔しい思いもありました。その時に感じたのが、自身の体重の重要性でした。自分は60kg前半で、メンバーの中で一番軽かった。ドラグを締めた時に、体の重さがあり、腰を落とせるほうが有利だと感じました。自分のストロングポイントは、身軽で正確なキャストなど、シーバスやヒラスズキなどで培ってきた繊細な技術でしたが、アメリカでのマグロゲームで、大型マグロと対峙できる体とパワー、そして道具が必要ということを感じたのです」

鈴木さんはその後、体を大きくして挑戦を続けていった。そして日本でも少しだけクロマグロが多くなった頃、アメリカの経験で得たドラグの調整や、クロマグロとのファイトの仕方などが活かされる瞬間が訪れた。青森で100kgクラスのクロマグロを掛け、僅か15分ほどで寄せたのだ。それから毎年のように結果を残している。そして今なお、進化し続けている。

「自分は、長年マグロ狙いをやってきました。初めてマグロの群れを見た時の興奮、釣れなかった時代、通い詰めた日々、そして撮影で獲れなかった大型マグロの悔しさがバネとなり、自分を突き動かし続けてきました。自分にとってマグロゲームは『青春』そのもの。マグロ釣りは興奮します。突如として大型のマグロが跳ね、ベイトが逃げまくる光景が目の前に広がる。それを追いルアーで仕留める。釣りというより、ハンティングに近い。熱くさせる要素が詰まっている最高峰のゲームフィッシングです」

ちなみに鈴木さんが近年掲げていた目標は、国内で自己記録となる200kg。それが2025年11月、ついにシマノの開発ロケで実現した。250kgクラスを掛け、船縁でリリースしたのだ。そして現在は新たな記録更新を目指している。

鈴木さんにとって、試行錯誤を繰り返しながら長年追いかけ続けてきたターゲットであるクロマグロ。多くの経験を積むことで、結果に繋がりやすくなったという。近年においても日本各地、海外でクロマグロにチャレンジ。写真は自船で操船しながらキャッチした一匹。写真提供:シマノ ※写真は2018年~2019年の釣果。

想定するサイズとタックル準備

鈴木さんのクロマグロゲームにおいて想定しているサイズは200kg、さらにはそれ以上のサイズとなるため、現状では最強でPE12号タックルとなる。しかし用意するタックルは自然相手のため、その状況に応じた準備が欠かせないという。

「毎回大型狙いでありますが、回遊している群れが50〜80kgもいるとなれば、それ用に1タックル用意します。このタックルはベイトが小さい状況において、小型のルアーをキャストするときにも対応します。そして大型マグロ用に2タックル用意。必ずキャスティングタックルは3タックル用意します。また予備でジギングタックルも1タックル持ち込みます」

キャスティングで50〜80kgクラス対応するためのタックルは、ロッドはシマノ・オシアプラッガー BGシリーズの中のFLEX ENERGY S83H。60g前後の軽量プラグのキャストできつつ、120gクラスの大型プラグも対応するという。優れた遠投性能を備えたモデルだ。これにSTELLA SW18000HGを組み合わせる。スプールは飛距離性能を重視してノーマルモデルを使用。ラインはPE8号、リーダーはナイロンの150lbを結束する。

「リーダーの太さに関しては、飲まれ切れ対策として180lbを結束しても、切れる時は切れます。それよりも8号タックルに関しては飛距離を優先します。季節にもよりますが、リーダーが硬く太いと飛距離が出にくいです」

高活性の個体が近くに出れば良いが、ある程度離れた場所の単発で跳ねた個体を狙うことも多い。そんな時に、素早く振り抜けて飛距離を伸ばせるタックルは、跳ねた先にルアーをアプローチできる。

続けて、メインとなる大型マグロ対応のタックル。こちらはシマノ・オシアプラッガーBGシリーズの中のFLEX ENERGYのS710XHをセレクトしている。100〜200gのプラグを正確にキャストできるとともに、操作性も高いモデルだ。これを2本用意し、PE10号、12号を巻いたリールをセットする。リールは、STELLA SW18000HG。PE10号は、夢屋20 STELLA SW 20000MAXスプールまたはノーマルの20000番のスプールに巻いたものに、ナイロンリーダー180lbを結束。PE12号は、夢屋20ステラSW 20000MAXスプールにナイロンリーダー220lbを結束する。PEラインは、いずれも最強性能のオシア 17+PEだ。

持ち込むキャスティングタックルの基本は、3タックル。メインはPE12号、10号のオシアプラッガーBGシリーズ・FLEX ENERGY S710XHが2本。小型ベイト対応用にPE8号のFLEX ENERGY S83Hを1タックル。オシアプラッガーBGシリーズは、マグロ、GT、ヒラマサを獲るためにMONSTER DRIVE、FLEX ENERGY、BLUEFIN TUNAという3タイプで構成されたシリーズ。その中のFLEX ENERGYモデルは、安定した操作とファイトを重視し、曲げて獲るための粘り強さが特徴。鈴木さんは、このモデルの操作性と粘り強さを好みセレクトしている。

【オシアプラッガー BG】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/rod/offshoresalt/casting/a075f00002llolkqac.html   

リールは信頼できるステラSW一択。PE8号タックルは、スプール系が細く飛距離が出せる18000サイズをセレクト。10号は夢屋20ステラ SW 20000MAXスプールまたはノーマルの20000番スプールを使用。12号は夢屋20ステラ SW 20000MAXスプール。MAXスプールは12号で300mのラインキャパを備える。ボディは全て18000HGを使用。

【STELLA SW18000HG】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/reel/largespinning/a075f00002nt4thqai_p.html

【夢屋20ステラ SW 20000MAXスプール】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/reel/yumeyacustomparts/yumeyaspoollargespinning/a075f00003jojl7qah.html

愛用ラインの、オシア 17+PE。最新の原糸素材SF700 を使用し、16本撚りの中に1本の芯を備えた構造のPEライン。驚異的な強度と耐久性を備える。芯を備えることで潰れにくく、滑らかな表面により飛距離が飛躍的に向上。さらに高い摩耗性能により、安心して長時間ファイトを行うことが可能だ。

【オシア 17+PE】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/line/saltwater_egi/pe/a155f00000enwg8qal.html

「スプールは、PE8号、10号、12号を巻いてラインシステムを組んだものを多く用意しています。ライントラブルが起こった時にすぐに交換するためです。また一回ヒットしたラインを使いたくないからです。20kgなどの強いドラグでやり取りしたラインは、いくら強いラインでも高切れする恐れがある。時間的に余裕があればスプールを交換し、次の戦いに備えます」

PE10号、12号は同じロッドで使用するが、この使い分けは何を基準にしているのか?

「飛距離を基準に使い分けます。風にルアーを乗せられれば12号でも気持ちよくルアーを飛ばせますが、風が無い日、横から風が受ける状況などでは12号は飛ばない。普段は12号で60m飛ばせるのに、風が無いと40m、50mしか飛ばない。それではマグロに船を寄せることが必要になり、近づけるとマグロは沈んでしまう。跳ねているマグロのサイズを見て、150kg、200kgはないサイズであれば、PE10号のタックルに持ち替えます。『10号では切れないですか?』と言われますが、すでに使用した10号と新品の10号では大きく違う。そのためにも常に新品を巻いたもので挑むことが大切です。12号のほうが掛けてからはもちろん安心ですが、掛けないと勝負になりません」

ちなみにジギングロッドは、跳ねない、マグロが浮かないなど、キャスティングでは何も手が出ない状況で魚探には反応が出ている時に対応するためのもの。スロー系のロッドを用意し、ジグを跳ね上げた後にフォールアクションを入れて探っていく。オシアジガー インフィニティの8パワーなどを選ぶという。

「キャスティングタックルでジグを落とすこともできますが、やはり専用タックルのほうが確実です。ジギングでは、大きいクロマグロを獲ろうとは思っていません。基本はキャスティングメインで、マグロが浮かずにどうしても手も足も出なかった時に最後の手段としてジギングを試す感じです」

マグロの反応はあるが浮かない状況に対応するために、ジギングロッドも1タックル持参するという。ジグをシャクリ上げ、フォールで捕食させるために、スロージギングロッド・オシアジガー ∞を使用。リールは糸巻量がありシャクリ続けられるオシアジガー4000をチョイス。使用ラインはPE8号+フロロカーボンリーダー100lb、30号。

【オシアジガー ∞(インフィニティ)】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/rod/offshoresalt/slowjigging/a075f00003cuiquqal.html

【オシアジガー4000】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/reel/ryojikuoffshorefuneishidailarge/a075f00002wgo0gqaa.html

リーダーは長めで接続

キャスティングタックルで結束するリーダーの長さは、どのくらいにしているのか?

鈴木さんは、竿先からリーダーを出し、ルアーを垂らしたキャストポジションの状態で、リーダーの結び目がスプールに入る長さにしているという。キャスト時に人差し指はリーダーに掛けることとなる。

「キャスト時のリーダーのガイド干渉などの抵抗を考えて、リーダーを短くしてしまうと、自分の場合はなぜか飛距離が出ない。グローブを着用せずに素手でキャストしているのが原因かもですが、PEラインに指を掛けるとロッドを振り切る時に力が入らず結果として飛ばないのです。飛距離を優先するためにリーダーを短くするのは間違いではありませんが、自分の場合は長めに結束し、リーダーに指を掛けてキャストするのがベストです。キャスト時にリールの位置と同じくらいの長さの垂らしでペンデュラムキャストしますが、その際にリールスプールにリーダーが2巻ほど入る長さで、全長2ヒロ半ほどです。また、この長さがあることでランディング時に結び目がスプールに入ります。結び目がスプールに入っていれば、スプールを押さえてラインが出ないようにしながらマグロをランディング位置へ誘導できます。また長さがあることで、ファイト時のショックを多少でも吸収してくれると考えています。口切れなどのトラブル、結束しているスイベルやスプリットリングに対する負担も少ないと感じています。ただ長くなることで、キャスト時のトラブルは多くなります。自分はこの長さで慣れていますが、アングラーごとにベストな長さを探すことが大切です」

リーダーの長さは、約2ヒロ半。キャスト時に、垂らしたルアーをリールと同じ位の位置にして、リーダーがスプールに2回転ほど入る長さにしている。長ければ、ランディング時にリーダーがスプールに入り、スプールを押さえてより力強く誘導できる。長さがあることで、クッション性も活かされる。しかし、キャストトラブルは起こりやすくなる。キャストトラブルを起こさないように慣れが必要だ。

スプールの準備は自身でしっかり行う

鈴木さんは釣行時にスプールを多数用意している。その際、「UOYA・糸巻き工場」を使用してドラグチェッカーで負荷を計測してラインを巻くが、どのくらいの負荷を掛けているのか?

「3kg程度の負荷を掛けて巻き始めます。昔は5〜6kgという考えもありましたが、その負荷だとハンドルを回し続けるのが大変。3kg程度で十分だと分かり、今はこの負荷で落ち着いています。スタートしてから半分くらいまで3kg程度で巻いたら、糸巻き工場のダイヤルを少しだけ緩めて負荷を少しだけ下げます。そして最後のキャスティングで放出する部分となる約60mは1kg程度に負荷を下げて巻きます。巻き終わりは、欲張ってギリギリまで巻くとトラブルの元になるので、スプールのエッジから少し下の位置にしています」

ちなみに少しでも糸巻き量を増やすために負荷を極端に高めて巻くと、ラインを強く引っ張りながら行うことになり、ラインは潰れて細くなってスプールに巻かれ、ラインの限界が早く来るという。またリールのギアにも負担が掛かり、リールの寿命も短くなる可能性がある。ちなみに糸巻きは、まずは自分自身で行うことが大切だ。

「高テンションで巻いても、一度キャストしたら、放出されたラインがフワっと巻かれることで、スプールエッジよりも溢れてしまい、ライントラブルが多くなります。また最近、同行者に発生したトラブルで、お店でスプールを外して機械にセットしてラインを巻いてきた人が、新品のスプールにラインを巻いたことでキャストトラブルを起こしたケースがありました。これは、スピニングリールは個体によって多少の巻きクセがあり、手巻きで調整しながら並行に巻きますが、機械巻きではそれが見抜けず、結果トラブルが出てしまったのです」

スピニングリールは、スプールにラインを並行に巻くことで、キャスト時のトラブルが起こりにくくなるが、個体により「ハの字」や「逆ハの字」に巻かれてしまう“クセ”がある。そんな時はワッシャーを入れたり抜いたりして調整する。ただそのクセを知らずに、新品のスプールを機械にセットして見た目で並行になるようにラインを巻いてしまうと、数回のキャストでラインを放出していた部分が、「ハの字」や「逆ハの字」で巻かれ、キャスト時にラインがまとまって出るトラブルを起こすことに繋がるのだ。一度でもリールにスプールをセットして手巻きで巻き、クセが出たなら調整しておけば問題はない。しかし新品のスプールにいきなり機械だけで巻くのはお勧めしないと言う。

「もしも機械巻きでラインを巻いてしまったスプールがあるなら、釣り場に行く前に水辺で数回キャストして、しっかり並行に巻かれているか確認するのが良いと思います。目の前にマグロが跳ねているのに、キャストトラブルで攻めきれなかったという事態は避けたい。自分はキャスト時のトラブルが起こらように、巻き量は少し少なめにし、かつ並行に巻かれているか常に意識しています」

スプールへの糸巻きは、まずは自身で使用するリールに装着して手巻きで行う。リールによって“巻きクセ”があるため、それを把握するため。きちんと並行にラインが巻かれているか確認する。

後悔しないためにもフレッシュな状態で挑む

鈴木さんはライントラブルに備えて多くの予備スプールを用意しているが、それらのスプールには新品ラインが巻かれている。ファイトやキャストを繰り返したラインはダメージを受けている可能性があるからだ。また鈴木さんは、一度でもファイトをしたスプールは、シマノにボディごとオーバーホールに出すという。これはシマノのインストラクターとして、内部の状態などの貴重なデータを取るためでもあるが、次の釣行で完璧な状態で挑むための準備でもある。

「何匹ものクロマグロとやり取りしてもダメージを受けていないリールも多いです。一年間使い続けても、回転はスムーズで、ドラグ性能も変わらないことも多い。それでも年に一度はオーバーホールに出したほうが安心です。感じていなくても、どこかに不具合が潜んでいる可能性があるからです。ちなみにトラブルが起きるケースは、使い方によるものも多い。自分は壊れないように使っているので、大きなリールの故障はありません。壊れた人に話を聞くと、魚の動きに関係なく数人がかりでゴリゴリと巻いたり、1人がロッドを持って仲間がハンドルを力任せに回したり、ローターを手で回すなど、通常の使用とは異なる操作を行っていることが多いです。想定外の負荷を掛けることでトラブルに繋がるのです」

ちなみにシマノでは、オーバーホールのキャンペーンを行なっている時期もあるため、そのタイミングで使用予定がなければ利用するのが良いだろう。

ラインシステムはPRノットでシンプル

大型のクロマグロ狙いで強い引きに対応するために「特別なノットが必要なのではないだろうか」と多くのアングラーが考えるだろう。しかし鈴木さんのライン結束はかなりシンプルだ。

「自分はキャスティングもジギングもPRノット一択です。一般的な巻き回数より少なく、結束部は短めです。以前は長くしていましたが、キャスティングでのガイド干渉を考えていくうちに短いほうが良いという結論に至りました。周囲のアングラーからは『短すぎない?』と言われますが、問題ないです。巻き付けている部分は約4cmほどです。『その長さでは抜けるのでは?』と言われますが、抜けたことはありません。逆に長くすることで、ガイドに当たりやすく、飛距離が落ち、トラブルも増え、PEラインも痛むと思っています」

PRノットは、シマノ・ボビンワインダー(ヘビータイプ)を使用。巻き付け回数は決めておらず、4cmほどリーダーに巻き付けたらハーフヒッチで結び止める。この時、片手にリーダー、片手にPE本線をしっかりと手に巻きつけて持ち、PEラインのヒゲを歯で保持して、巻き付けた側に強く引っ張ってしっかりと結び止めることが重要。そこからの交互のハーフヒッチによる編み込みは、交互を1回として3回ほど繰り返す。一回ごとに強く引き、確実に締め込む。その後、PEラインのヒゲを使ってPEライン本線にハーフヒッチで交互を1回として8〜10回、巻き付けの長さに応じて編み込む。最後にリーダーのヒゲをカットし、残りをライターの火で炙ってコブを作る。コブは小さくする。これは、コブが大きいとキャスト時にガイドに当たり、抵抗になるからだ。

鈴木さんのPEラインとリーダーの結束はシンプル。PRノットで結束する。結束のボビンは、重量があり、しっかりとリーダーに巻き付けられるヘビータイプを使用。巻き付け時は、PEの太さによってテンションをしっかり変えることが大切だ。

【シマノ・ボビンワインダー ヘビータイプ】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/othergears/tools/linegears/a155f00000c53ejqar.html

リーダーにPEラインを巻き付けた後のハーフヒッチでの結びは、リーダーとPE本線をしっかりと手で保持し、PEのヒゲ部分を歯で咥え、巻き付けた側に強く引っ張る。
この結びがかなり重要。

その後のハーフヒッチでの編み込みも、一回一回、3点で引っ張りしっかりと行う。

編み込み終わりの結びも、ノット側にしっかりと引っ張り結び止める。

かなりシンプルな鈴木さんの結束。シンプルなことで、ガイド抜けはよく、キャスティング時のガイド当たりにより劣化も少ない。これまで抜けたなどのトラブルは無いという。

「アングラーからの質問で『スペーサーは入れないのですか?』と聞かれることがあるのですが、自分はライントラブルが起こったら、潔くラインを切って新しいリーダーで結び直したほうが良いと考えています。ラインとノットは“鮮度”が大切。スペーサーシステムは、確かに結び目の上のラインが傷まないメリットはありますが、釣り場で作るのが大変です。また “スペーサーを付けているから大丈夫”と感じて結び直さずにいると、気付かないうちにPEラインやリーダーが弱まり、ラインブレイクの原因になるのではと考えてしまいます。自分は結び直すことで、安心感を得たいタイプです」

また、ルアーとの接続部分は、スイベルとスプリットリングが基本。スイベルへのリーダーの接続は、スリーブを使うこともあるが、ほとんどはスイベルに直接リーダーを「シングルクリンチノット」で接続している。こちらもシンプルな結びだ。結び方は、下記の手順を参考にしてほしい。また、結べない人はスリーブ止めでもOKだと言う。

【鈴木流・シングルクリンチノット】

スイベルにリーダーを通す。

リーダー本線にリーダーのヒゲを巻いていく。巻き数は4回。

最初にできた輪に、リーダーのヒゲを通す。

リーダー本線とスイベルを持ち引っ張る。まずはノット部分も軽く締める程度。

結び目部分に潤滑剤を塗る。潤滑剤を塗ることで、強度低下を防ぎ、さらに綺麗に結べる。ワセリンやシリコンなどでは、綺麗に締まりきれない。

スイベルはプライヤーで保持、リーダー本線は手で保持して、ヒゲ部分を歯で咥え、ノット部分を締め込んでいく。一気に締めるのではなく、ゆっくり徐々に2〜3回で締める。

歯からリーダーのヒゲを外し、リーダー本線を保持したままスイベルを引っ張り、ノットを締める。

再度、リーダーのヒゲを咥え、結び目を締める。結び目が締まり切るまで
の作業を繰り返していく。

完成。

スイベルは、トップガイドを通るサイズを使用。スイベルを結んだ状態で替スプールを用意しておけば、釣り場で素早くスプール交換が可能だ。

マグロゲームではドラグ調整が大切

また準備の段階で気になるのが、リールのドラグ値はどのくらいに設定しておけば良いのか気になるところ。大型魚のヒットに対しては、ドラグをしっかりと効かせて適切にプレッシャーを掛けることが重要である。しかし、最初から強くしておけば良いというものでもない。段階的に締めていくのがベストだ。

「自分の場合、初期ドラグは毎回しっかりと器具を使って計測しているわけではなく、スプールを手で持って回し、感覚的に覚えている負荷に調整します。もちろん最初は測定して感覚的にドラグ値を知ることが大切です。そして、マグロの捕食の仕方によって臨機応変にドラグ値を変えることもあります。マグロが激しくベイトを喰っていて、捕食と同時に勢いよく走りそうな時などは、初期ドラグは緩めにしておき、喰ってから徐々に締めていきます。大まかな目安として、自分が一般の方に伝えているのは、初期設定は新品のラインであれば号数の数字と同じキロ数に合わすということ。10号なら10kg、12号なら12kgです。そこからヒットと同時に徐々に締めて、プレッシャーを掛けていきます。自分は相手の動きに合わせて、感覚的に操作していく感じです」

ドラグはノブをどのくらい締めると、どのくらいの負荷が上がるのかを知っておくことが大切。最終的にはほぼMAXまで入れるが、数値を把握していればドラグ操作も安心して行える。

実釣・誘いの基本は2パターン

クロマグロキャスティングは、ナブラ撃ちか誘い出しの2パターンになる。

「ナブラ撃ちの場合は、より激しい飛沫が上がっているところに投げます。大きいナブラならナブラの真ん中は見えないので、両サイドにルアーを入れます。船で寄った時に魚が移動することを予測しながら、マグロが濃い場所、または大型が跳ねた方向に投げます。サイズは見て選ぶ必要があります。もしも大型は自分では無理だと思ったら、中型のほうに投げるのも良いでしょう。ナブラは鳥が付いている場合もあり、その動きをしっかりと観察することが大切です。また何を捕食しているのかも観察。イワシなら鳥が付きやすいですが、トビウオやシイラ、サバは鳥が付きにくい。いずれも船のプレッシャーで魚はすぐ沈むことが多いので、近づいたら素早くキャスト位置を判断して投げることが重要です。船長の『はい!いいよ』を聞いてからでは遅い。船が群れに向かっている最中に、指にラインを掛けて待ち、船がスローになったらすぐに投げるくらいの気持ちです。またベイトのナブラが湧いていて、少し待てばマグロがバンバン浮いてきそうなら、あえて待ってから投げたほうが良い場合もあります。マグロがベイトフィッシュを水面まで追って捕食で狂っている状態のほうが、バイト率が良いからです」

誘い出しは、マグロはいるがなかなか浮かない、単発の跳ねがある状況で行うこととなる。鳥が回っている、反応のある潮目などで探ることが多い。

「誘い出しの時に『ポッパーがいいんですか?』と聞かれることがあるのですが、どちらでも良いと思います。ペンシルが良い時もあれば、ポッパーが良い時もある。ただポッパーは浮かせておける利点がある。ワンアクション入れて泡を出し、そのアピールで深いレンジから魚を寄せることができます。ポッパーは水を掴んで動かすタイプなので、初心者でもアクションが出しやすいのも利点です」

マグロを見つけたら、船は全速力で近づく。アングラーはすぐにキャストできる準備をし、船が速度を落としたところで素早くキャスト。数回アクションを入れ、出なければ素早く回収。マグロはルアーを追いかけて捕食することが少ないため、回収して次のキャストに繋げたほうが良い。

ルアーは、サイズが異なるものを用意。まずは飛距離が出るものをセレクトしたい。

ルアーのサイズ

マグロが捕食しているベイトフィッシュのサイズは様々で、小型のイワシの場合もあれば、シイラを捕食していることもある。ではそれらに合わせて完全にマッチザベイトを実現できるかというと、実際には難しい。小さいカタクチイワシを喰っているからといって小型ルアーを選んでも、使用しているタックルでは十分な飛距離が出せない。逆にシイラを喰っているからといって同サイズに合わせるのは難しい。ただある程度は近づけることはできる。

「小さいベイトを喰っていて小型のルアーを選ぶのにも限界があるので、自分が選ぶ小さめのルアーはフローティングなら14cmほどです。相手が特大サイズでなければ、PE8号で勝負することもあります。またシイラベイトの場合は、240mmなどの大き目のルアーをセレクトします。飛距離も出ますし、アピールも高いからです。ただクロマグロに関しては、他の釣りのようにルアーサイズを厳密に合わせることはそれほど気にしていません。フローティングとシンキングの使い分けはします。イワシ団子があっても上までマグロが出ずに、下でベイトを喰っている時があります。そんな時はシンキングで沈めると一発で喰うことも多い。そのためシンキングも何本かは持参します。シマノ・オシア サーディンボール150S(71g)、130S(77g)ですが、8号、10号なら扱うことができます」

ヘッドディップ フラッシュブーストの各サイズ。イワシなどの小型ベイトからサバなどの中型ベイトに合わせてサイズ違いで用意。フラッシュブーストの輝きが、浮かしておくだけでもアピールする。

【オシア ヘッドディップ175F /200F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5d0oqav_p.html

【オシア ヘッドディップ140F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5d0oqav.html

ワイルドレスポンス240F、別注平政220F フラッシュブースト。シイラなど大型ベイトフィッシュに対応する大型ルアーだが、マッチザベイトだけでなく、大きさによるアピールが強いことで威力を発揮することも多い。もちろん飛距離も出しやすい。鈴木さんもクロマグロを獲った高実績モデルだ。

【ワイルドレスポンス240F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5cvxqav.html

【オシア 別注平政220F フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c6dcpqav.html

ボムスロットル200F、バブルディップ220F、ボムディップ170F。ボムスロットル200Fは、泡を出しながら水面で首を振るようなアクションが特徴。バブルディップ220Fはスプラッシュで気づかせ、ダイビングで捕食本能を刺激するモデル。ボムディップ170Fは、少ない移動距離で泡と大きなポッピング音を発生して強くアピールするモデル。どれもマグロに効果的なモデルだ。

【オシア ボムスロットル200F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000dotl4qaf.html

【オシア バブルディップ220F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c5czyqav.html

【オシア ボムディップ170F】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/topwater/a155f00000c6dchqav.html

バブルディップ220Fでの釣果。写真提供:シマノ ※写真は2018年~2019年の釣果。

ベイトナブラはあるが、水面までマグロが浮かない状況に対してシンキングルアーのフリーフォールは効果的。オシア サーディンボールは、ウエイトがしっかりあるためPE10号、8号で使用可能。

【オシア サーディンボール150S フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/sinkingpencil/a155f00000c5cxgqaf.html

【オシア サーディンボール130S フラッシュブースト】

https://fish.shimano.com/ja-JP/product/lure/offshorecasting/sinkingpencil/a155f00000c6dclqav.html

フックはトリプルフックを好んでいる

クロマグロ狙いのフックは、アングラーそれぞれにこれまでの経験を基に考えを持っている。鈴木さんは、トリプルフックをメインで使用しているが、リリースを前提にすると、フック選びは悩むという。

「自分はリリース前提の時、トリプルフックをバーブレスにすることが多いのですが、船のレギュレーションや撮影の内容でシングルフック指定であれば従います。シングルが良いかトリプルが良いかと聞かれると、一概には言えません。掛かり所によるからです」

シングルフックなら外しやすいと考えがちだが、トリプルフックでも、掛かる場所によっては素早く外せる。一方、シングルでも飲まれてしまうとフックのフトコロが深いために外しにくく、エラを傷つけるリスクもある。いずれにしても素早く外すことを優先するなら、どちらのフックでもカエシは無いほうが良い。ただ鈴木さんは近年、カエシが無いことで、フックの伸びや折れのトラブルが多くなると感じている。

「バーブがあれば、そのバーブがストッパーになることで魚肉をフックのフトコロで保持してくれます。しかし、バーブレスではバーブが無いことで刺さったフックが口元でズリズリと動き、ライン角度によってフックに掛かる負荷の位置が変わります。そして針先に負荷が集中したときに折れや曲がりが起こりやすい。これは実際に経験しています。ちなみにシングルフックは掛かったらバレにくいと言われますが、それはバレの少ないカンヌキに掛かる率が高いからで、フッキング率そのものは、トリプルと比べて明らかに低い。体感では10対1くらいと感じています。またベイトフィッシュによっても、適したフックは変わると思います。ベイトが大きければ、マグロは一気に飲み込むので、シングルフックでもフッキング率は高い。しかし小型のベイトを泳ぎながら喰っているようなときは、外掛かりでフッキングすることが多く、トリプルフックなら掛かるが、シングルフックでは掛からない。どちらが良いかについては、どちらもメリット、デメリットがあります。自分はトリプルを使うことが多いです」

写真提供:シマノ ※写真は2018年~2019年の釣果。

鈴木さんは、トリプルフック推奨派。その理由は、何よりフッキング率が高いから。素早く刺さる掛かり重視のストレートポイントのもので、線径が太いXHタイプをセレクト。

バイトとアワセ

さていよいよ実戦だが。クロマグロの群れ、姿を見つけたらタックルを手にして、周囲をしっかりと観察してキャスト。自身のルアーにクロマグロがバイトしたら、慌てずに落ち着いて対処することが重要だ。まずはアワセだが、いきなり大アワセを入れないと鈴木さんは言う。

「出た瞬間に早アワセしないように注意。一呼吸おいてから、聞きアワセを入れます。そして掛かっていることが分かったら、本アワセを入れます」

聞きアワセを入れる理由は、マグロがルアーに出たのに掛かっていないこともあり、そこで大きく本アワセを入れると、せっかくいい場所に入っているルアーが移動してしまうからだ。まずはマグロがきちんとルアーを咥えているか様子をみるのである。

「アワセは使用しているフックによっても変わります。トリプルフックは掛かる可能性が高く、どこかの針先が掛かれば聞きアワセで掛かりを確認できます。掛かっていれば、そのまま本アワセを入れます。一方、シングルの場合は針先が刺さっていない状態が多いので、マグロがルアーを完全に持っていってからアワセを入れたほうが良い。口内に入っているフックをカンヌキにズラして掛ける感じです」

バイトがあったら、すぐに大きくアワセを入れずに、聞きアワセでしっかりと咥えているかを確認。喰っていたら、本アワセを入れる。聞きアワセは、咥えていなかった時にルアーを大きく移動させないためだ。

ヒットからの対処

フッキングを入れると、クロマグロは違和感で走り始める。走りは下に勢いよく走るもの、斜めに走るもの、あまり距離を走らないものなど様々だ。いずれの場合もアングラーには冷静な対処が求められる。

「マグロが走り出したら、いきなり強いドラグ値にするのではなく、少しずつドラグを締めてプレッシャーを与えていきます。止まったらさらにドラグを締め、リールを巻きます。セカンドランでさらにラインを出されたら、ドラグをより締めてプレッシャーを掛けます。そして止まったら、また巻き上げます。自分のファイトの仕方は、ロッドを曲げる→ストレート→曲げる→ストレートといった感じで、併用していきます。まずはストレートで巻き上げますが、魚が弱ってきたり浮いてきてライン角度が斜めになったりしたらロッドを立ててどんどんラインを巻いていきます。ストレートだけだと距離が詰まりにくいです。ラインの角度を見ながら、ロッドをストレートにするか立てるかを判断します。ロッドを立ててポンピングした時にドラグが出るようでは、ドラグ値は緩い証拠。それでは大型のマグロは上がってきません。マグロは泳ぎながら体力を回復してしまいます。長くファイトすれば、他の魚と同様に弱るだろうと思うかもしれませんが、マグロはそうはいきません。最終的には19〜20kgくらいまではドラグを上げて勝負する必要があります。もしもラインが斜めに入っているなら船でフォローしてもらうのも有効です。走らせすぎると、ファイトが大変です。出されるラインは100〜150mほどまでに抑えておくのが理想です」

ファイト時の注意点としては、走るマグロに対して、リールに水を掛けて冷却することが大切。現行のリールは、ドラグの熱に対する性能が高くなっているとはいえ、ハイドラグ状態でのマグロの強烈なランでは熱を帯びる。高温になればドラグトラブルの原因となるため、同船者にサポートしてもらおう。また、アングラー自身の体力の配分も忘れてはならない。ヒットしたのが大型なら、ファイト時間は長くなることを想定する。マグロが見えてからの勝負に備えて体力を残しておく必要がある。

ちなみにマグロが船の真下に入った状態での長時間ファイトは、釣り人にとって非常に厳しい。そのような場合は、船長に少し船をバックしてもらうように伝え、ラインを斜めにしてもらうこともあるという。そして、マグロが見える位置まで寄せたら、ロッドをストレートに構え最後の勝負となる。

「さらにドラグを締められるようなら締めます。最後にドラグを上げられると、勝負は早く決まることが多いです。なかなか浮かせられないことも多いですが、回っているマグロがこちら側に向かって泳いでくる時に少しでも巻きます。それを繰り返して距離を詰めます」

クロマグロとの最後の勝負での注意点もある。

「マグロの多くは回って上がってきますが、船底でのラインブレイクを恐れて船をバックばかりしているとマグロを引っ張っている状態になり、マグロはどんどん蘇生してしまいます。そのため、最後は船を止めてマグロを回すことが大切です。回っていれば、少しずつでも寄せられます。マグロが船下に入ったときは、ロッドを下げて対処しますが、この時にロッドのブランクス側を船側(ガイドを外側)に向けて、ラインが船に当たらないように対処します。どうしても船底に当たりそうなら、少しだけバックしてもらいます」

マグロは姿が見えてからが本当の勝負。多くの場合が、ここで抵抗しアングラーを苦しめる。そのための体力を残していくことが大切。マグロの回転を確認しながら、手前に回ってきた時に少しでもラインを回収して、徐々に距離を詰めていく。

そしてマグロの頭が浮いたらランディングとなる。最後は、ミヨシからマグロを一段低い場所(ランディングしやすい場所)へ誘導し、リリースのためにリーダーを掴んでもらい、キャッチならモリを撃ってもらう。「いきますよ!」などの声掛けも大切だ。

「ランディングは、キャッチかリリースかを事前に決めておくことが必須です。リリースなら、その準備を船長と同船者で行ってもらいます。また誰が何をするのかも決めておくこと。リーダーを掴むのは慣れている人に任せるのが良いでしょう。怪我をしないように細心の注意を払うことが必要です」

またリリースを前提なら、マグロのリリース後の生存率も考慮したい。ファイト時間を短くし、スムーズなリリースの作業など、時間を掛けないことが大切だ。

「ルアーにセレクティブではない、マグロの活性が高い状態なら強いタックルを選んだほうが良いです。タックルが強ければ短時間で勝負ができ、アングラーの体力にも、リリースするマグロにも優しいです」

水面まで浮いたら、ランディングのために誘導。スプールを押さえ、ランディングポジションに持っていく。暴れることもあるため気は抜けない。

リリースするのであれば、しっかりと打ち合わせをしておくことが大切。船長、仲間に準備、協力してもらおう。

その他のクロマグロ狙いの装備の準備

鈴木さんにその他の用意する装備について聞いてみた。まずギンバルは必須アイテムとなる。ギンバルには、太ももを覆うような大型のものと携行性の高い小型タイプがあるが、鈴木さんは常時装着しても邪魔にならない小型を選んでいる。

「マグロゲームは、頻繁にキャストする釣りではないことから、大型ギンバルは途中で邪魔になり外してしまいがち。そしていざマグロが跳ねた時にギンバルを装着してなくて困ることがあります。そうならないための小型を常に装着しています」

グローブに関しては、安全面から装着したほうが良いと言うが、鈴木さんはキャストポジションに入ってから、動いているマグロに対応するために素手で行うことが多い。

「真っ直ぐに投げるならグローブを着けていても良いのですが、キャスト時に横に移動したクロマグロに対して、素早く横へ投げるときがあります。その時、ラインを離すタイミングを操作するのですが、それが素手のほうがやりやすい。またファイト中もグローブが一枚あるだけで握りが浅くなる感じがします。加えてルアーを交換するときに、グローブにフックが引っかかってしまうことがあり、外すのにイライラするので、それもグローブを着けない理由です。これは個人的な意見なので、安全のためには装着をおすすめします。 なおキャスト回数が多いヒラマサ、GTの時は、指が痛くなるのを防ぐために右手だけ着けています」

写真提供:シマノ ※写真は2018年~2019年の釣果。

これからチャレンジするアングラーへ

「2025年現在、時期によってですが月初めの解禁から数日で期間が終わってしまうということがあります。短い期間での勝負となれば、何度もチャレンジできず、掛けたマグロはより確実に手元まで寄せたいと考えるでしょう。そのためにまず大切なのは、タックルのメンテナンスです。そして道具全体のバランスをしっかり取っておくことも重要です。PEとリーダーの太さが合っていない人をよく見ます。リーダーが太すぎる人が多く、太ければ安心という考えでしょうが、それでは飛距離が出せません。またタックルのセレクトも重要で、マグロが大型の時や高活性時にいきなりPE8号などの細いラインを選ぶのでなく、太いタックルがあればそちらを選ぶ。太ければよりキャッチが確実になり、早く寄せられれば疲労も少ない。喰わない状況に出会ってから、細いタックルを選ぶのが賢明です。またドラグの操作は、初心者にとって難しい面がありますが、締めるタイミングなどをイメージしておくことは重要です。またベイトは何なのか? そのベイトを捕食しているマグロはどう攻略するのが良いのか?など、船長に聞いておくのも良いでしょう。マグロがバンバン跳ねている状況は興奮しますが、冷静に状況を見極め、魚の動きをよく観察してアプローチすることが肝要です。また1日の中での組み立ても重要で、例えば風があればルアーは飛びますが、風が無いなら大型の飛ぶルアーをセレクトするなど戦略を練ると良いでしょう。クロマグロは個体数も多くなり、タックルも良くなりキャッチ率は上がっていますが、それでも簡単には釣れない最大級のターゲットです。自身のスキルと体力を鍛え、安全面に十分配慮して挑んでください」

 

写真提供:シマノ
まとめ&写真:アングラーズタイム編集部

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