連載 平松慶のオフショアワールド vol.9

【オフショア実釣】
春にヒラマサ聖地、長崎県対馬へ向かう。
現実を知り、どうヒラマサに近付いたか?

「ヒラマサの聖地」として、私が愛してやまない長崎県対馬。ここは数々のヒラマサと出会い、経験を重ねてきたフィールド。ヒラマサの行動を把握するために訪れ確認、挫折し確認。これを繰り返して今がある。一年で最もヒラマサの活性が高くなり、大型が狙える春に、ヒラマサを求めて釣行してきた。今回はその現実をリアルにお伝えしたい。

【オフショア実釣】<br>春にヒラマサ聖地、長崎県対馬へ向かう。<br>現実を知り、どうヒラマサに近付いたか?

対馬海域

通いなれた対馬海域。春のベストシーズンに訪れたが、なかなか魚が口を使わない状況。どうすれば捕食へ導けるのか? ひたすら探っていった。

ジグ

通い慣れた場所だからこそ、変化が感じられる
だが、対策が見えてこない

3日間の実釣日を計画し、恒例となっている春のヒラマサを対馬で狙った。船は親子でガイドしてくれる春漁丸さん。この日は、大潮後の中潮と言うタイミング。アングラー目線で語れば、良い潮周りだろう。これまでの実例からして、かなり好釣果が期待出来る。またヒラマサだけでなく、10kgを超えるサイズのブリも毎年出会えるチャンスがあり、ヒラマサとブリとの二択で意識高く望んだ。

出港は7時過ぎ。満潮と干潮の時間を考え、夕方まで長く釣りが出来る動きをとった。樽が浜港からポイントの上対馬比田勝沖までは1時間。ポイントに到着するタイミングは下がった潮が上り始める時間帯となる。潮のタイミングでポイントへ入れるように出港時刻が決められたのだ。前日まで吹いていた風も治まり、海況はベタ凪。そよ風すらない、春の海にしては珍しいタイミングでのスタートとなった。

冬の対馬の主なジギングポイントは、点在する魚礁狙いになる。平均して水深100m前後。風と潮流れが同調してしまうと、300gに近いメタルジグでも3度とボトムを取れない状況になる。しかし、この日は風が無く潮流もまだ動き出していないことから、私はKEI-JIG SHARP 200gからスタートした。同船者もほぼ同じ位のウエイトから開始。ジグはすんなりと落ちていく。

水色は小さなゴミが海中に混ざる濁った様子。船長からのアナウンスは、反応(青物)はかなり映り中層まで狙ってください、との指示。私はワンピッチアクションから探り始めた。釣り座はミヨシに入った。ドテラ流しでの釣りだが、ミヨシはポイントに入っていくのが最後(お尻)になる。ただ180度の広い角度で狙うことが出来る釣り座だ。

まずは真下にジグを投入し、しゃくる感覚で海の様子を確認していく。ベイトは魚礁の上まで広く反応が映っていた。それを追う青物を意識して探る。シャクっていて反応が無ければ、すぐに次のポイントへと移動する。お昼頃から潮が活発になるタイミングを予想してのスタートであったが、それまでの午前中に釣れたのは、ヤズ(ブリの子)だけであった。点在する魚礁をひとつずつ廻って攻めていく。新しく入った魚礁なら、最初の流しで何らかの反応があるのが毎度なのだが、この日はそれすらない。

私はKEI-JIG SHARP 200gから180gにサイズダウン、更にGummy やGummy fatなど、ワンピッチでの狙いからホバーリング中心の誘いに変えてみたりしたのだが、ヒラマサからのコンタクトがない。本命が釣れる時間に入っているのだが、ドラグ音を響かせるようなサイズからのコンタクトは、初日ラストまで出会う事はなかった。何かが、おかしい。じゃれてくるようなバイトは何回もあったが、明らかに口を使って捕食しに来ているそれとは違っていた。地に足がついていない感覚のまま、初日の釣りは終わったのだった。

ヒラマサ

初日、ひとり多くのキャッチを得た今泉さん。ケイタンジグを使い、シャープに攻めて結果を得た。

ジグ

なかなか本命に辿り着かない。

【引き出し】を武器に、果敢に攻めていく。

初日の惨敗を好転させるための答えが何も無いまま、二日目の実釣になった。完全なる「凪倒れ」を食らった上対馬比田勝沖から、二日目は下対馬の豆酘崎へとポイントを変えてみる。無線での漁師情報はブリがよく上がっているとのことで、期待をしての二日目。この日は対馬全体に朝から濃霧警報が出ており、沖の視界はほぼない。ソナーで周辺を確認しながらのポイント入りする。そしてアガミ沖10マイル先に点在する魚礁からスタートした。

私の横でシャくる今泉さんは、初日ヤズを含めて14本。サイズは伸びない結果であったが、5kg頭のヒラマサもキャッチした。ノーキャッチ者が半分を締める中、魚をジグに寄せる結果には脱帽。今泉さんは、二日目も初日と変わらない攻めで魚を探していく。

私と彼(今泉さん)との違いは、メタルジグのアクションのシャープさ。釣果に差が付くのは、魚が好む動きをしているかどうかである。初日に彼が釣り続けていた「ケイタンジグ175g」を借りた。悔しかったのでジグのカラーまで合わせて狙ってみた。二日目もお昼前後で潮の動きが変わる。魚礁にはベイトや青物の反応がしっかり出ていた。頭を悩ませる船長、戸惑いを隠せないアングラー。

私は、ケイタンジグ175gを魚礁の真上位置を意識して、バーチカル(垂直)角度で攻めてみる。これは、前日今泉さんがひとり勝ちしたアクションに合わせてのこと。私自身の「引き出し」ではなく、魚を当てているスタイルに合わすことから始めた。ジグが着底し、キレをよくしたワンピッチアクション、そしてコンビネーション的にジグをフワッとさせるような動きを入れてみる。するとモゾモゾとした、はっきりしないバイト。苦しんで手探りで探ってやっとバイトがあった。そしてキャッチに安堵した。今泉さんは、初日のような一人勝ちではなく、悩みながらシャクっていた。二日目の好釣果は、まだお預けの様子だった。

ケイタンジグをバーチカルで探るスタイルは、韓国の済州島でのヒラマサ狙いで得たスタイル。これを今泉さんに話すと、私の放送されたTV番組で学んだのだと言う。「引き出し」がこんな場面で役に立つ。釣れないからと言って同じスタイルでしゃくり続けても、練習にもならない。あの手、この手で探っていき、得た結果を再確認するために再び釣る。これが「引き出し」になっていく。

アガミ沖から豆酘崎に入り、霧の切れ間から漁師船が見える。船はまばらに点在しており、活気がない。明らかにどの漁師船も釣れていないのだ。今泉さんがブリに近いヤズをキャッチ。沈黙していた船内に、少し活気が出てきた。そしてトモでシャくる望月さんから左3人にバイトが連発し、3人のロッドが曲がる。対馬らしい光景だ。トモからポイントに入り、約束通りにバイトが伝わる。しかし。こんなことがあるのだろうか?と思ってしまうほど、3人とも掛けた魚をバラしてしまう。アングラーの技量ではない。魚が口を捕食として使っているのではなく、魚影の濃い中でじゃれてきた魚が掛かっただけなのだ。海に活気が全くないのだ。船の流れ、潮の押し、魚からのコンタクト。どれを取っても「海の勢い」が感じられないのである。そして「さあ、これから」と言う雰囲気は一瞬で終わった。霧が晴れてきて、豆酘崎の50mラインに立つ潮波をみるが、ぶつかる様な波が立っていない。「今日も終わったかな…」と、思ってはいけない気持ちが出てしまう。船長は豆酘崎を諦めポイントを移動。小茂田沖まで船を走らせた。そして瀬回りと魚礁を攻めてみるのだが、コマサやヤズがポツリポツリと釣れる程度で、本来の春マサを期待した海ではなかった。夕刻まで狙わせてくれたが、サイズ、数ともに伸びずロッドオフ。諦めきれない何かを残した一日となったのだった。

釣果を得ていた今泉さんを真似て、ケイタンジグをバーチカルで落とし攻めてみるとバイトがあった。

船長もあちこちへ船を走らせてくれたが、、コマサやヤズがポツリポツリと釣れる程度で、今回の釣行は本来の春マサを期待した海ではなかった。

ヒラマサ

平松流のマストパターン

釣れない状況下に立ち、どうヒラマサを狙っていったか。今回、私は隣でしゃくる今泉さんに完敗だった。完敗したことで得たのは、自分のスタイルを通し続けてしまったこと。釣れているアングラーに合わせたアクションで探ると、釣果は出た。それならば「自分なりのスタイルで獲ってみたい……」、そんな欲をかいてしまったからだろうと反省をした。

ただ、マストパターンをつかむ事もあった。私のジギングスタイルは、広く探り、活性の高いヒラマサを探しながら獲るスタイル。今回のような船の流れ、動きや潮の押しがほぼない状況でヒラマサを釣ることが出来たのは、バーチカル(垂直)でのジグ操作。船が動かない、ならば反応の濃い魚礁の真上に船を置き狙わせる、これが船長側の考え。それに対し、これまでの経験でジグを遠投して広い範囲で動く魚を探しても効果は低い。魚影の濃い中にジグを投入し、少しでもヤル気のある魚を拾っていけば、もっと釣果は伸びたのではないだろうか? と振り返ると考えさせられた。

真下からしゃくり上げ、ジグに興味を持たせておびき寄せる。そのスタイルを貫く気持ちよりも、チャレンジ意識で「これは、どうか? あれをやってみよう!」といった冒険心が裏目に出た結果となった。しかし、私は数を釣らなくてはならない漁業をしている漁師さんではない。渋いタイミングでも、自分なりの考えで釣果に結び付けていくことを楽しんできた。難しかったこの状況下で、10本近い魚が私がアクションしたジグに反応してくれた。これもゲームフィッシング。あらためてジギングの奥深さを感じた釣行だった。

同船者にもポツリポツリと釣果は出たが、バレも多い。ジグを捕食しに来ている状況ではなく、じゃれてきてハリ掛りしている状況だからだ。

今回の、ヒラマサベストシーズンに入った長崎県対馬で、予想外の悪状況に遭遇してしまった私達グループ。自然相手だから仕方ない、だけで済まない何かがあった気がした。予定していた3日目は、急な爆風、豪雨、雷雨になり、釣りどころではなかった。春の天候はコロコロ変わる、これは分かってはいたが、潮がここまで変だと手も出ない。潮のせいにするのはナンセンスかもしれないが、「ひと潮変わってからは、本来狙うべくサイズのヒラマサやブリが爆釣してますよ」と春田若船長から連絡があった。我々が入ったタイミングが悪かっただけで、対馬のポテンシャルは変わらないということだ。これも釣り、と今回は全てを認め、次の釣行を組んでいる。30年近く通っている対馬。今回のような経験は初めて。しかし、これも経験の糧として、次への対策にしたいとポジティブに考えている。そしてその報告は、必ずここでお伝えしたいと思っている。ただ今回は、悔しかった…。

春漁丸

いつもお世話になっている春漁丸。今回の釣行では、潮がおかしく良い結果が出なかったが、その後は本来の対馬の春のヒラマサシーズンに戻っている様子。またすぐにチャレンジしたい。

AUTHOR

平松慶

神奈川県座間市在住。 K-FLAT代表。オフショアゲームを中心に、自身で釣り具を開発しつつ、その他メーカーからのサポートも受け、プロ活動を続けている。国内外への釣行日数は、多い年では210日を超えたほど。長きにわたりメディアで文章を書き、枻出版社では「平松慶のヒラマサワールド」を発行。その他DVD多数リリース。

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