連載 平松慶のオフショアワールド vol.7
ジギング講習。
青物必打~メタルジグで起こる
リーダーがアイに絡む理由
ジギングをしていて、不可解な事が起こる場合がある。シャクっていたメタルジグにリーダーが絡んでしまう、アシストフックがジグボディーに挟まってしまう…等々。今回はメタルジグにまつわる不可解な事を解説して、釣れるタイミングに繋がる話を説いていきたいと思う。
ジグをしゃくった時の潮状況を把握して、
流れを知ることが大切
ジギングをしていて「しゃくるジグが泳いでいる状況」とは、潮が動いている、船が流れている、この2つが大きなカギとなる。潮が動いている時は、しゃくるジグに潮が当たり、ジグが潮流に乗るように絡んでくれる。動いている潮がジグを持ち上げてくれる。だから引いた感じで泳いでいるのだと理解できる。初心者の方は潮にジグを合わせず、ひたすらしゃくり続けてしまうことが多い。
例えばミノープラグのリップに水圧が当たれば、リップが抵抗となりボディーをプルプルと動く。メタルジグはリップがある物ほど動きは手元に伝わりにくいが、それでもジグに心地よい重さが伝わり、動きが把握できる。潮が動いている、風の影響を受けて船が移動している、こんな時に感じる動きを理解することが、ジギングで釣果を倍増することに繋がる。そしてこの状況が理解できれば、潮が流れていない状況もわかるようになるはず。今回の主題となる「リーダーがアイに巻き付く理由」はここから始まります。
潮が動いていれば、船は流される。ドテラ流しで船が流されていれば、ジグは船に引かれている、ということにもなる。また、PEライン、リーダーにも潮が当たり、抵抗が生まれる。これが潮が動いている状況であり、潮がほとんど流れていない、風が無風である、潮と風がケンカしている、などの状況では、しゃくるメタルジグが良い動きを出していないということ。潮と風がケンカしているならまだ対策はあるが、無風で流れないとなると、落としたジグは無抵抗の状態で上がってくる。アングラーのしゃくるスピードや力(インパクト)、ピッチがジグにダイレクトに伝わってしまうのだ。おまけにラインへの抵抗も無ければ、跳ねたジグは、その先のリーダーを超えた動きになる。ラインは潮の抵抗も無いので、暴れるだけのメタルジグのフックが弛んだリーダーを拾い、巻きついてしまうのだ。これが、意味不可解なジグアイに巻き付く原因となっているのである。
アシストフックがジグのボディーに挟まってしまうことも、同じ状況下で発生する。これは、ジグだけがしゃくったインパクトで動き、潮のテンションがないアシストフックのゲイブ部分を通過(貫通)してしまうからである。潮が流れているような状況は、フックにも潮からのテンションが掛かる。ジグとフックのポジションが離れている、といえばわかりやすいだろう。この状況であれば、フックがジグを抱くことは少ないが、潮の流れがない場面だからこそ、ジグがフラフラしたフックを追い越してハマってしまう現象が起きるのである。
正常なジグポジションと潮絡みの様子をいち早く知り、
釣れるチャンスに備える。
潮絡みの具合は、ジグを落とした際に、しゃくり上げる時のロッドに掛かるテンションを把握しておく。しかし、なかなか初心者の方が理解しようとしても難しいだろう。スパンカーを立てた船でのジギングなら、両舷での釣りになる。しゃくり上げてきたジグが少しでも左右位置から上がってくるようなら、操船でジグ位置を船長がコントロールしてくれているということ。潮が動いているから、ポイントに船位置を調整している、と理解できる。ドテラ流しなら、片舷側で並んでジグを落とす釣りスタイルになるので、自分が落としたジグの角度(最初は真下です)から、2度、3度としゃくり上げてジグを投入し直す時の角度を確認する。ジグが流されて遠くから上がってくる様な場合は、潮が動いている、または船が流れている、と判断できる。あまりにもジグが流されて遠くへと行ってしまう場合は、ジグウエイトの見直しも必要だが、船長から指示されたジグウエイトでジグ投入位置に角度が出るなら、そのタイミングが最も魚の活性が高いタイミングだと知ることができる。
一日の釣りにおいて、潮がずっと動いているのは、なかなかない。干満のタイミングで潮の動きが起こるので、例えば朝の干潮から満潮になるタイミング、また午後からの満潮から下げてくる潮の動き時にジギングを集中する事が大切である。「釣れるタイミング」は、魚がベイトを追う時。魚が捕食したくなるタイミングは、ベイトも活発な動きになり、プランクトンを捕食している時。潮の動く時は、こうした行動が水中で起きているため、釣りが成立するのである。「釣れるタイミング」を知るには、ジグに潮の抵抗が感じられているか? これが大きい。「平松さん、良く釣りますよね」と時に言われたりするが、それはメタルジグを通じて釣れるタイミングを把握しているから。潮の動きを理解して集中して魚を掛けているから、ということだ。
平松流のマストパターン
さて、「ジグアイにラインが絡んでしまう状況」の回避だが、これはどのようにしたらジグが動いてくれるか? を考えるようにしている。乗船したら、やっぱりしゃくり続けて魚を狙い続けたい。でもバーチカルに狙っても、リーダーは絡むし、ジグをシャクっても抵抗が感じられない。ならば、ジグを投入する位置を遠くにして、PEラインやリーダーに少しでも抵抗を与えてジグ姿勢を保たせて狙うのである。潮のないタイミングで真下に落としてピンスポットで狙うから、ジグが暴れてリーダーを拾ってしまう。ならば、ジグを遠くに投げて、少しでもラインにテンションが掛かれば、まだジグは泳いでくれる。狙い方を変えて、投入位置の距離を作ることもひとつの手段となるのだ。ただ、一日中潮が動かないことはそう無い。少しでも潮は動くタイミングはある。私はジグアイにリーダーが絡むようなタイミングでは、あえてシステムを組み直したり、リーダーのキズのチェック、さらに絡んだリーダーはクセが付いていたらその部分はカットし、ジグを結び直したりする。潮が動いてきたタイミングに万全な状態で挑めるようにし、来るかもしれないビッグワンのチャンスに賭けるのだ。
今回は「ジグアイにリーダーが絡んでしまう状況」を解説してみた。様々な場面で「このジグはリーダー(ライン)が絡むんですよね…」と耳にしてきた。それはメタルジグの形状で起きる現象ではなく、アングラーが海の状況に合わせきれていない、と言う理論がそこにはあるのだ。どんな形状のメタルジグでも、潮が動いていない場面では、なかなかハリ掛りさせられない。潮の動きを把握し、しゃくるスピードやピッチをもっと理解すれば、こうしたトラブルは軽減されていく。最初に伝えた「初心者ほど、しゃくるリズムを変えない」とは、嫌味ではなく、その考え方から更にステップアップして欲しいという願いを込めて書かせていただいた。釣れる理由は、潮にある。このことを頭の片隅にでも覚えておいてもらえたら、幸いです。