連載 平松慶のオフショアワールド vol.12

オフショア講義。
御蔵島開幕 梅雨から夏に狙うキハダマグロ
ヒラマサ、カンパチのタックルを解説

2023年の伊豆諸島、御蔵島エリアのオフショアゲームが開幕した。御蔵島は、伊豆半島から遊漁船でアクセスできる関東圏からも通いやすい大物フィールド。30kgクラスのキハダをはじめ、10kgオーバーのヒラマサやカンパチも対象になる。今回は、私のメインスタイルといえる、スピニングタックルを中心としたタックル解説をお届けしたい。

オフショア講義。<br>御蔵島開幕 梅雨から夏に狙うキハダマグロ<br>ヒラマサ、カンパチのタックルを解説

御蔵島

東伊豆、南伊豆から、4時間ほどで到着する御蔵島。伊豆七島の最も南の八丈島の手前の島。関東圏、静岡県のアングラーなら、大型が狙える遠征フィールドでありつつ、深夜に港を出発し、帰港後はその日のうちに帰宅できる貴重な場所だ。右の写真は、御蔵島の釣りを案内してくれる東伊豆・網代港の森竜丸。行き帰りは、船室で仮眠もでき快適!

御蔵島攻略タックルセレクト。

伊豆諸島(七島)のひとつ、御蔵島。ここは黒潮がぶつかり古くから大型魚の夢のあるフィールドとして関東圏のアングラーには憧れの場所のひとつ。その御蔵島へのアプローチは、伊豆半島からの遊漁船がメインとなる。出港から4時間から5時間をかけて辿り着く御蔵島。黒潮の差し方次第でキハダが島周りで飛び跳ね、ボトムから中層に掛けてはヒラマサ、カンパチといった青物がしっかり狙えるフィールドだ。火山が隆起して出来た島であるため、島は大きなパヤオとイメージしても過言ではない。そんな魅力ある御蔵島は、毎年ゴールデンウィーク頃からシーズンが開始となり、海が穏やかになる梅雨時期がベストシーズン。対象魚によってベストシーズンは異なるが、台風が多くなる頃までは本当に面白いフィールドだ。今回は、そんな御蔵島を攻略するためのキャスティング、ジギングのタックル解説をしたいと思う。

キャスティング タックルセレクト

【ロッド】
7フィート以上のミディアムヘビークラスのロッド。キハダやヒラマサの誘い出しとして。

【リール】
スピニングリールのサイズは、大型のものがバランスが良い。軽量化を優先してしまうと、ラインキャパシティが足らない、またファイト時のファーストランをリールドラグで補うためにも、ある程度のサイズは必要となる。

【ライン&リーダー】
キャスティングではPE6、8号クラスが安心。御蔵島は比較的水深のある場所になり、キハダなどはクロマグロに比べて、それ程強度優先のスタイルでなくても対応可能。リーダーはナイロンリーダー130~150lb。ナブラ撃ちではなく、誘い出しが多いため、操作性重視で考える。

【フック&マテリアル】
トレブルフック、シングルフックの選択は自由で、キャストしたいプラグに合わせるようにすれば良い。スプリットリングはフックに合わせたサイズは必需となり、私は4/0、5/0サイズのフックを選んだ際、#9クラスを使う様にしている。これもプラグに合わせたバランスが必要となる。

【ルアー】
10cm以上のダイビングペンシルやポッパーが基本。ただ、イワシを食い上げているようなシチュエーションもあり、スリムなシンキングペンシルも用意しておきたい。

キャスティング

キハダやヒラマサをキャスティングでの誘い出しで探ることも可能。キハダにおいては、跳ねやナブラなどを狙うシチュエーションもあり、ジギングがメインの状況でも、素早く対応するために事前にタックルは準備しておきたい。リールはラインキャパ、ドラグ性能などの観点から大型をセレクト。キハダ、ヒラマサ、どちらにおいてもバイト時に素早く余分なラインを回収してフッキングに持ち込む必要があるため、ハンドル一回転の巻取り量が多さもセレクトの際に気にしたい。

ジギング タックルセレクト

【ロッド】
6フィート前後のミディアムからミディアムヘビークラスの番手を選択。しゃくるジグサイズが、水深があり、潮流が強い場合は300gに近いサイズも場合によって必要となる。ヘビータイプとミディアムタイプ(200gクラス)のジグを使い分けれるように、2タックル持ち込むのがベストといえる。

【リール】
スピニングリールのサイズは、キャスティング時の様な大型は必要ないにしても、オフショア用中型サイズが必要。またドラグ性能が優れたモデルのほうが大型とのやり取りの時に安心してファイトができる。

【ライン&リーダー】
メインラインは、PE4~5号があれば、不安なく釣りが可能。あまり太過ぎるPEラインは、ジグアクションを入れる時に潮流によるウォータープレッシャーをダイレクトに受けるのでおススメしない。また、細過ぎるラインは、深場で魚を掛けた時のインパクトでラインブレイクに繋がる場合があるので使用しないほうが良い。

【フック&マテリアル】
アシストフックは、各メーカーシリーズ内で大きめのサイズを選択。水深のあるエリアでジグをしゃくる場合、フックがジグを抱いてしまうと回収し落とし直さなくてはならないから。また狙う魚のサイズも大きいので、フックサイズは大きいほうが良い。ダブル、シングルは使い慣れたもので良いだろう。

【ジグ】
ジグウエイトは、180g以上。タックルが合うようならば、300gまでは用意したい。メインサイズになるのは、200~250g。私はこのサイズを好んで使っている。

ジギングの場合のリール

ジギングの場合は、キャスティングほど大型リールをセレクトする必要はないが、水深100mほども探ることもあるため、最低でもPE4号が300~400mは巻けるサイズのものを選びたい。ドラグ性能は、もちろん良いものを。

ジグは180g以上。潮が速い状況もあり、水深100mほどを探ることを考えると、300gまでは用意しておきたい。フックは、写真上段左のようなサイズ。大型の物のほうが良い。またジグのタイプは、細身で切れの良いもの、滞空時間の長いものなどを各種用意。速い潮では素早くフォールする細身のもの、緩い潮ではフワリと動かしたり、素早く動かして刺激したりと色々と試して攻略していきたい。写真下段は、KEI-JIG 235gと、釣果。

ターゲット別の狙い方

キハダ

アベレージサイズは、20kgクラスを意識している。もちろん、30、40、50kgが回遊するエリアだが、シーズンを通して比較的多いサイズは20kgクラス。キャスティングで狙う場合は、水面に出ている様子が見れたら、丁寧に誘い出しで探っていく。一般的にはダイビングペンシルが主流になるが、活性が高い状況では、ポッパーも有効。「ガボッ、ガボッ」と動かしていると、いきなり喰み(ハミ)のない位置でキハダが飛び出してくることも多い。ペンシルの方がアクション付けしやすいが、ポッパーは忍ばせておきたい。

ジギングでキハダを狙う場合は、ボトムではなく層狙いになる。反応がある水深を船長が知らせてくれるので、その層を確実にキープしてしゃくる事を心掛ける。指示棚から前後20mを意識してしゃくっていく。アクションは、キビキビしたものがいいが、比較的緩やかなアクションでもキハダはジグに反応することも覚えておきたい。しゃくり方としては、まずはワンピッチアクションで探る。これは、ジグが指示棚でしっかり動いているかの確認。それがわかれば、指示棚前後を丁寧に攻めていく。

ヒットしたら、ファーストランがある。この時は無理にロッドを立てたり、煽る様な動作はしない方が良い。そしてキハダの走りが弱くなってから、ポンピングを始めるようにする。またキハダは、マグロの特性で円を描くような動きで上がってくる。船縁まで近付いても頭を向けて走り続ける。この時は少しでもラインをリールに巻き込むようにし、ドラグを信じて走らせる、といった動作を交互に行うのがファイトのスタイルになる。これはキャスティングもジギングも同じだ。

キハダマグロ

写真左のキハダがアベレージサイズ。40㎏、50㎏といったビッグサイズが回遊していることもある。写真右は、左の魚に比べ小型だが、このサイズが連発することもあり、これはこれで楽しい。

キハダマグロ

青物・ヒラマサ、カンパチ

青物はキハダとは狙う層が違い、ボトムを取る必要があります。ベイト(エサ)に着いて中層でのヒットもあるが、狙い方としては、やはり根や起伏の変化がある場所がポイントになり、そこをテリトリーとして生息しているので、ボトムまでジグを送り込むことが必要。青物は機敏なジグアクションで誘うスタイルなため、ワンピッチアクションでまずは探る。ヒラマサ、カンパチはヒットすると、自分らのテリトリーに戻る習性があるので、ボトム付近でのバイトは慎重に。無理に止めると、より暴れる。止めないとラインが根に擦れてしまう…と難しいのだが、適度な圧力を与え、ゆっくり浮かせながらファイトする事がキャッチへのコツ。ロッドワークの強引なファイトよりも、ドラグを上手く利用したやり取りがキャッチ率を上げてくれる。

青物の釣り方

ヒラマサ、カンパチは、まず根際でのやりとりが大切。無理に止めると、より暴れる。止めないとラインが根に擦れてしまう…と難しいのだが、適度な圧力を与え、ドラグを効かせながらゆっくり浮かせてファイトすることがキャッチへのコツ。

カンパチ

カンパチ

カンパチは、比較的良くヒットしてくる。釣り仲間の藤本さんも頻繁にキャッチ。5㎏未満が多いが、その中に10㎏を超えるサイズがヒットしてくることもあり、気が抜けない。

平松流のマストパターン

御蔵島には、20年近く前から通っている。これまでに、ヒラマサの20kgオーバーや良型カンパチなど数々の思い出がある。また、キハダが釣れている時は、ヒラマサ、カンパチは間違いなく狙える。これを常に頭に入れておき、青物中心の狙い方で毎回攻めています。水深があるポイントが多いので、ボトムを狙える水深100m程度のポイントであれば、まずは深場をしっかりとしゃくる。ベイト(エサ)が中層に出ているとアナウンスがあれば、その辺りまでは青物意識する。逆に、水面に喰み(ハミ)といったボイルがあちこちで確認出来るようならば、ジグを緩やかにしゃくるようにしてキハダを狙う。キハダはジグアクションにそれほど特徴を付けなくても狙いやすいので、ジグのアクションの違いで私は狙うターゲットを変えるような楽しみ方をしている。キハダのヒットは、同船者に一斉に当たるのも特徴。単発バイトよりも、右舷、左舷やトモ、ミヨシ、と何人かが同時にヒットするのがパターンで、こんな時こそ中層をフラフラとジグを漂わせるようなアクションで誘っている。船中でヒットがあった時こそチャンス。このタイミングは逃さないようにしたい。

御蔵島でヒラマサ、カンパチ、キハダを狙う

ボトム付近では、ヒラマサ、カンパチ。中層ではキハダ。船長から中層に映るベイトのアナウンスがあったとき、いきなりその層を狙うのも良いが、ボトム付近も気にしたい。キハダが食い散らかしたベイトを、ボトム付近でヒラマサやカンパチ、その他の魚が捕食していたり、これらの魚が中層のベイトを意識している可能性があるからだ。その中で誰かにキハダがヒットしたら、連続ヒットの可能性もあるので、すぐにその層へジグを上げて対処すると良い。

私は毎年、3月下旬から御蔵島釣行のスケジュール組む。今年(2023年)は、悪天候で予定が2回も流れてしまい、5月末の予定で出られたら初チャレンジになる。ご存知の方も多いと思うが、今年の冬場はクロマグロ狙いで伊豆諸島は盛り上がった。200kgを超えるサイズがルアーで狙える。今までも回遊はあったが、こんなに釣果が出たことはなかった。しかし現実となり、アングラーを楽しませてくれた。資源による影響、環境の変化、様々な要素がこうした結果に繋がったと思う。こうした事実がこれから10年先に、どの様になっていくのかも楽しみであり、不安でもある。いつまでも豊かな海であって欲しい。ただ環境の変化で本来生息していた生物が追いやられる状況は、あってほしくない。そう願いながらローカルの海域を見続けていきたいと思っている。

AUTHOR

平松慶

神奈川県座間市在住。 K-FLAT代表。オフショアゲームを中心に、自身で釣り具を開発しつつ、その他メーカーからのサポートも受け、プロ活動を続けている。国内外への釣行日数は、多い年では210日を超えたほど。長きにわたりメディアで文章を書き、枻出版社では「ソルトワールド別冊・平松慶のヒラマサワールド」を発行。その他DVDを多数リリース。

SHARE
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • link