これは凄い!リールギヤ革命!
巻き上げ負担が軽減される新機構を搭載!!
スタジオオーシャンマーク
20周年限定 ブルーヘブンBHL50
今やジギング大型ベイトリールの定番製品といえるスタジオオーシャンマーク(以下SOM)の『ブルーヘブン』。そんなブルーヘブンに新たな機構が搭載されモデルが、2022年末に限定発売された。その機構は、これまでリールに搭載されたことがない、まったく新しいもの。SOMは2022年に20周年を迎え、この新機構は、これからのSOMリールのスタンダードとなるという。ここから新たな歴史が始まる。
リールギヤの新たな一歩
ジギングで使用し、特に大型狙いや、中深海や深海を探るためのラインキャパを多く持った国内ベイトリールは選択肢が少ない。その中で不動の地位を築き、そのリールに対して熱狂的なファンが多いのがSOMのブルーヘブンシリーズではないだろうか? そんなブルーヘブンリールにおいて、これまで数々のアイデアを具現化し、製品に注入してきたSOMが、リールにおいての新たなシステムとして考えていたことがある。それが数年のテストの末に2022年に完成した。そしてちょうど20周年を迎えるSOMの限定モデルのブルーヘブンBHL50Hi/Pw に搭載し発売されたのだ。
その新システムというのは、『マルチサスシステム』と呼ぶ、リールハンドルの巻き上げ負担が軽減されるという機構。これまでベイトリールの巻き上げ負担の軽減は、多くのメーカーがボールベアリングの採用、ギヤの大きさ、歯車の数、ギヤの精密さ、ギヤ比などを考え追求してきた。しかし今回は、これまでのとは異なる。今まで同様のものを搭載したリールは無く、新たな機構となる(特許申請中)。さらに、『ドラグメモリーリング』という新機構も搭載。こちらは、レバードラグを上げていく時に、瞬時にドラグ値を確認することができるというもの。SOMがリールに革命をもたらしたと言えるだろう。
新ギヤシステム「マルチサスシステム」とは?
それではマルチサスシステムとはどんなものなのか? 性能についてはSOM広報担当スタッフの井上嵩裕さんに、さらに使い心地についてSOMのプロスタッフ西本康夫さんに話を聞いた。
「中型、大型リールのリールハンドルを巻く時、人の腕の動きは肩を支点にして動かします。そして1回転動かす中で、力の入りやすいところ、力の入れにくいところというのが必ず生まれます。SOMでは、そこに着目しました。そして力の入れやすいところで『チャージ』し、ちからの入れにくいところで『アシスト』を行う機構を開発。これにより、巻き上げの負荷がこれまでよりも平均化され、負担が軽減されます」(井上)
大型魚とのやりとり、重いジグの操作、回収などでは、リーリングの中で力の入れやすいところ、入れにくいところがあるというのがより感じられるだろう。ではそれをどう平均化して負担を軽減するのか?
「メインシャフト(ハンドル軸)とドライブギヤの間に、『サスペンションラバー』と呼ぶ円形のウレタンラバーを搭載しています。イラスト(下に掲載)を見てもらうと分かりやすいですが、リールハンドルの12時~3時、6時~9時は力を入れやすい箇所で、ここの部分でラバーが潰れてチャージします。一方、力を入れづらい3時~6時、9時~12時の箇所(アシスト)はラバーが戻ることでギヤの回転をサポートする仕組みです」(井上)
このようなギヤのチャージとアシストを繰り返すことで、巻き上げがより楽に行えるという訳だ。
次に西本さんに巻き心地について聞いてみた。
「SOMでは感度を重視した大田ガレージモデルがありますが、今回のモデルはシステム上、感度は落ちます。今回のリールは、それよりも巻きの負担が少ないことでジギング経験の日が浅くリールを巻くのが大変、1日ジャークするのが大変という人に最適なリールだと思います。少しでも楽にジギングを楽しんでほしい、深場や大型魚狙いの釣りを楽しんでほしいという思いが詰まったモデルです。ジグを操作することを大変に感じてしまうと、どうしても集中力が途切れます。楽に行えれば、集中力をより持続でき、大型魚のヒットに対しても体力を温存でき、より釣果が上がると思います。巻き上げ負担の違いは、使い比べてみると凄く分かりますよ。特に、ロッドを一定に構えたままの状態だと、その差が分かりやすいと思います。力が入りにくい部分で、やはりスムーズに回せる。リールを巻いていて、綺麗に巻けてる感じがしますね」(西本)
マルチサスシステムは、巻き上げの負担が軽くなるだけでない!
通常のギヤのモデルと比べると、ラインを回収するとき、ほんの少しだがワンテンポ遅れるという。これはシリコンラバーが潰れ、チャージの状態になるから。ワンテンポ遅れると説明するとデメリットに感じるかもしれないが、それ以上に利点が多い。
「まず、この一瞬の間によってジグの初速が付けやすいということが言えます。特に重いジグでは動かし始めに力を必要とするが、それが楽に行えます。ハンドル回転の初動をつけやすくなります」と井上さん。
また西本さんは、マルチサスシステムによるこの部分をより絶賛。
「僕の場合は、巻きの楽さというよりも、ファイトに関してこのシステムはかなりよい結果をもたらしてくれると思います。今までのリールだとドラグが強めの場合、巻くタイミングが取りにくかったのですが、マルチサスシステムでサスペンションラバーが潰れることで『隙』ができる。この『隙』で巻き始められる。巻き始めがスムーズです。これにより瞬時に魚の顔をこちらに向かせることもできます。また、魚が引いた時に、この『隙』によってラインに一気に負荷が掛からない。そのためラインにも優しいと思います。いろいろなサイズ、リールに応用できるシステムだと思います。これからのリールに、可能性を秘めているシステムだと思いますね」(西本)
ドラグ値が一目で把握できる新機構『ドラグメモリーリング』
今回のモデルで、更に追加された機構『ドラグメモリーリング』。ドラグ計測時にリングをセットしておけば、今現在のドラグを一目で把握できる機構だ。こちらの機構も、SOMが以前から構想していたという。
ちなみにレバードラグリールは、スタードラグリールと比べファイト中にレバーによってドラグ値を操作しやすく、さらにそのドラグ値を把握しやすいという利点がある。そのため魚とのやりとりの間に、アングラー側がより有利になるようにドラグ値を操作してファイトすることができるのだ。
キハダやビンナガなどのマグロジギングでドラグ初期設定3㎏を例にすると、最初は『STRIKE』ポジションの位置で、レバーの付け根にあるダイヤルで3㎏にドラグを設定する。マグロの場合はヒットと同時に走り出すが、まずは3㎏設定のまま走らせ疲れさせる。走りが止まったらドラグレバーでドラグ値を上げてファイトに移る。ドラグレバーは段階的に様子を見ながら上げていく。そしてマグロが見えるような位置まで来たら、マグロは突然の抵抗を見せるため、その動きに耐えられるように少しドラグ値を下げておく。このようにドラグレバーの操作を行うテクニックがある。
ただマグロのような良型、大型魚のヒットでは、人によっては冷静さを失って慌ててしまい、ドラグレバーを何クリック上げたのか? 下げたのか?と、 ドラグ値が分からなくなってしまいがち。そこで可変式のリング「ドラグメモリーリング」を装着し、一目で分かるようにしたのだ。
ちなみにその使い方だが、『STRIKE』の位置で例えば3㎏にドラグ値を設定し、リングも『STRIKE』の位置で3㎏にセットする。今回のブルーヘブンBHL50は、ドラグレバーのひとメモリは0.5㎏。そのためリングには0.5㎏ごとに印字。その後ヒットし、状況に応じてドラグを上げていっても、すでにメモリをセットしていることから現時点で何㎏のドラグ値なのか、一目で把握可能というわけだ。
「実釣でアドバイスをしている時に、最初にドラグ値を計測していない人も多く、それではドラグレバーを使用したテクニックは使えません。まずは、ドラグをしっかりとセッティングしておくことが大切。そして、そこからドラグレバーを使用して、魚の動きに合わせて的確にドラグ値を合わせていくテクニックを試してもらいたいです。ドラグメモリーリングにより、ファイトにより集中できるようになるはずですし、より魚が獲れるようになるシステムだと思います」(西本)
今回搭載された機構は、より多くの人に大型狙いの釣り、深場の釣りを楽しんでもらいたいというSOMの想いが込められている。深場の釣りなどでは、電動リールという選択肢もあると思うが、SOMとしては、手巻きでよりスポーツ的に楽しんでほしいとの考えだという。そういった中で、手巻きリールの可能性を追求しているという訳だ。SOMの20周年という節目の年に発表された新機構。今回のブルーヘブンBHL50からスタートし、これからどんなモデルに新機構が搭載されていくのか、楽しみで仕方がない。
SPEC
BLUE HEAVEN L50Hi/R-20th-B Gr
BLUE HEAVEN L50Hi/L-20th-B Gr
〇ギヤ比6.3:1(110cm)/ドラグMAX 10㎏/自重515g
BLUE HEAVEN L50Pw/R-20th-B Gr
BLUE HEAVEN L50 Pw /L-20th-B Gr
〇ギヤ比5.3:1(93cm)/ドラグMAX 10㎏/自重515g
ラインキャパシティー
〇PE4号450(300)m/3号650(400)m/2号1000m/1.5号1200m
※( )はエコノマイザー使用時
〇本体価格(税抜)170,000円