ソルトゲームの基礎知識⑤

ベイト・スピニングからギア比の違いまで
リール選びのチェックポイント

釣りで使われるリールは、主にスピニングリール、両軸リール(ベイトリール)、電動リールの3タイプ。それぞれに小型のものから大型のもの、巻き取りが速いものや遅いものなどがラインナップされている。それらの中からソルトゲームに適したものを選ぶにはどうしたら良いのだろうか。ここではそのためのチェックポイントを簡単にまとめてみよう。

<span>ベイト・スピニングからギア比の違いまで</span><br>リール選びのチェックポイント

ベイトとスピニング

ソルトゲーム用のリールは、スピニングタイプとベイト(両軸)タイプに大別できる。スピニングリールは、スプール(糸巻部)は固定のままルアーや仕掛けに引っ張られた糸が放出されていく構造で、巻き取りの際はベイルアームが糸を拾って回ることで回収する仕組み。ルアーの重さや風向きに左右されずにキャストできる点が利点だが、構造上糸ヨレが出やすいという弱点がある。いっぽうベイトリールは、スプール自体が回転して糸を送り出す機構。ルアーが飛んでいく速度をスプールの回転が上回ると「バックラッシュ」という現象が起こる。そのためキャスティングにはある程度の練習が必要だが、キャストの不要な釣りでは初心者にも扱いやすい。スピニングに比べて糸ヨレが出にくいのもメリットのひとつだ。ちなみに近年ジギングやタイラバで話題に上る電動リールも、ベイトタイプの一種である。

以上のことから一般的にスピニングはキャスティングゲームや繊細な釣り、ベイトは船下をバーチカル(垂直)に攻める釣り(ジギングやタイラバ)や、パワーが求められる釣りに向いているとされる。実際にはスピニングでバーチカルの釣りを行うこともよくあり、ベイトリールでキャスティングゲームを楽しむことも可能だが、初心者でこだわりがなければセオリー通り、キャスティング主体ならスピニング、バーチカルならベイトリールから始めるほうが、間違いがない。

スピニングリール

スピニングは、ルアーの重さや風向きに左右されずにキャストでき、キャスト時のトラブルも少ない点が利点だが、構造上糸ヨレが出やすいというのが弱点でもある。

ベイトリール

ベイトリールは、船下を探るジギングやタイラバ、またパワーを必要とする釣りに向いている。スプールに直接ラインを巻く構造から、アタリもより把握できる特徴を持つ。

ベイトリール

リールの大きさは3000番、4000番というように数字で表されることが多い。ジャンルによって適合リールサイズは大方決まってくるので、まずはどんな釣りをするのかを決めて、それに応じてタイプとサイズを絞り込んでゆくと良い。
また、スプールのサイズによってラインキャパシティー(糸巻量)が変わってくるので、使用する号数の糸を必要十分に巻き込めることもチェックしておきたい。とくに大物がヒットすると、強い引きにラインを出されてしまうこともしばしば。水深ピッタリではなく、水深の倍くらいを目安に巻いておけば安心だ。

リールのサイズ表記は、リールによって、メーカーによって異なる。同じメーカーで、同じ数字であっても、糸巻量が異なることもあるので、それぞれどのくらいのラインキャパシティーがあるのかを確認して選ぶ必要がある。

リールの重さをチェックする

同一メーカーで同じ大きさのリールでも、機種によって重さはいろいろ。ボディのフレーム素材(金属、樹脂)や内部パーツによって変わってくる。ターゲットがそれほど大きくない場合や、繊細さを重視するライトゲームならできるだけ軽いものを選ぶのが一般的といえる。反対に、大物相手の釣りや、激しい動きを伴うハードな釣りでは、軽さよりも剛性(頑丈さ)を優先して選びたい。剛性の高いリールはそのぶん重さもあるが、荷重が掛かっても歪みが少ないため、各パーツの接続部から水が浸入することも少ない。もちろん、剛性も満たしたうえで軽いならそれに越したことはない。

リールの重さは、軽いほうがアングラーの負担は少ないが、大物釣りなどでは剛性を優先したほうが良い。剛性が低いリールでは、ファイト中にリールが捻じれてしまう、破損に繋がることもあるからだ。

ギア比は大きく3段階ある

ギア比というのはリールのハンドルを一回したときに、スプールに何回ラインを巻き取れるかという数字。仮にギア比1:7のリールなら、ハンドル一回転でラインを7巻き出来るということになる。ただしギア比が同じでも、スプールの大きさ(径)が違えば巻き取る量も変わってくる。その場合はカタログ上の「最大巻取り量」(上記の表中では「巻取り長さ」)という項目をチェックすれば客観的に比較することが可能である。

ギア比には大きく分けて「ローギア」「ノーマルギア」「ハイギア」があるが、メーカーや機種によっては「エクストラギア」などさらに速い設定があることも。どのくらいのギア比をローギアと呼び、どれくらいをハイギアと呼ぶかという部分も統一されてはいないが、目安としてはローギアが1:6以下、ノーマルが1:6~7、ハイギアが1:7以上といったところ。なかには1:10などという高速モデルも存在する。

では、ギア比の違いで何が変わってくるのかというと、最も違うのは当然ながら巻取りの速さだ。ルアーを動かす速さもさることながら、手返しという点でも優れているため、例えばキャスト中のルアーを急いで回収して次々にナブラを撃っていく釣りや、ヒットゾーンを過ぎたジグをいち早く回収して入れ直すときなどにその差を実感する。

二つ目は巻取りパワー。従来、ローギアはパワーがあるため楽に巻け、ハイギアは巻くのが速い代わりにパワーは足りないとも言われてきた。実際ローギアは、一定のレンジをゆっくり引いたり、重いジグやタイラバをディープで操作したりするときにはこのパワーがメリットになる。しかしハイギアに関しては、最近は力不足を以前ほど顕著に感じることはないというアングラーが多い。

三つめの違いは感度。ハイギアタイプのほうが、ローギアより水中の変化や魚のアタリを捉えやすいというのも定説だ。その理由は巻き取りが速いぶん、ラインスラック(糸ふけ)が出にくいから。同じ理由で着水後、あるいは着底後の動き始めを早くしたり、アワセの際に素早くスラックを回収したりできるのもハイギアの利点だ。

ハイギアとローギア、どちらを選択するかはケースバイケース。自分の釣りスタイルに適合するかどうかで選べば良い。とくにこだわりがない場合はノーマルギアを選択して、状況に合わせて速く巻いたり、ゆっくり巻いたりすることで対応するのも手だ。

巻き取りの長さが変るギア比は、機種により3段階に設定されているものが多いが、それ以上に設定されていることもある。巻き取りの速さ、パワー、感度など、使用する釣りにどんなギア比がベストなのかを考え、セレクトする必要がある。

ナブラや鳥山

ナブラや鳥山など追いかける釣りでは、近づいたら素早くプラグを投げる必要がある。この時、船は惰性で進んでいるため、巻き取りの遅いリールでは、プラグを動かせないこともある。そんな釣りでは、ハイギア、エクストラギアなどが必要になる。

パワーを備えたリール

大物相手の釣りではローギアのパワーが有利になるが、最近ではハイギアでもメーカーテクノロジーの向上によりパワーを備えたリールも多い。

リールは高価なものほど性能が良い

このほか、リールにはドラグ性能や防水性能、ボールベアリングの数など、数値では示しにくいものも含めチェックポイントが多々ある。それらを具体的・客観的に比較することはなかなか難しいのだが、精密部品の集合体であるリールの場合、同一メーカーの製品であれば、基本的に上質なパーツを使うほど価格が上がる。水深カウンターや電動機能など、付加価値を高めたものも同様である。だからといって必ずしも最上位機種を選ぶ必要はないのだが、価格帯の異なるいくつかの候補がある場合は、予算の範囲内で最も高い機種を選んでおくことをお勧めする。

リールの最上位機種

最上位機種には、部品の素材による剛性や巻き上げのスムーズさ、その他テクノロジーの搭載など、それなりの理由がある。ただ、これでなくてはいけないという訳ではない。使用する釣りに、どのレベルが必要なのか、考えつつ選びたい。

写真と文 : アングラーズタイム編集部

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