長年夢だった魚を求めて
アルゼンチン・ウルグアイリバーの
ドラードフィッシング
【① フィールド、アクセス、道具、宿泊など】
記者がまだ10代の頃、今から30年ほど前に、開高健さんの本の中で出会った魚、黄金の魚「ドラード」。いつかは南米に生息するその魚を釣りたいと思っていたが、なかなかチャンスは訪れなかった。そんなドラード狙いの釣行に、2022年の年末から2023年の新年にかけて釣友が誘ってくれた。釣行が決まってから、すぐにその釣行は妄想、準備という形で始まった。このアングラーズタイムはオフショアメインのサイトであるが、記者と同様にオフショアアングラーでもドラードに興味がある人もいると思うので、今回はその報告をしたい。
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ドラードという魚
長年、オフショアフィッシングが強めの雑誌に携わり、現在もオフショアをメインにしたサイト「アングラーズタイム」の記者であるが、オフショアゲームの釣り以外の釣りも楽しむこともあり、興味のある釣り、魚もある。そのひとつが、今回狙いにいった「黄金の魚・ドラード」だ。
自分が雑誌編集者になる前、そして編集に関わり始めた頃は、インターネットといった様々な情報を得られるものは無く、海外の釣り情報は少ない時代だった。情報は、本や雑誌を見たり、人から話を聞いて得られるものであった。ドラードという魚を知ったのも、本からだ。海外には日本人アングラーにとって未開の地というのも多くあり、先駆者たちはトライ&エラーを繰り返して確立していった。時代は変わり、今やインターネット上で多くの情報が発信され、その情報を誰もが共有できることで、行ける場所も増え、釣り場の雰囲気、使用する道具の絞り込みなどもできるようになった。ただ、日本人にとって情報(日本語で)があまりない釣りもある。アルゼンチンのドラードも情報は少なめだった。
ドラードは、スペイン語で「黄金」を意味し、南米に生息する魚。そんなドラード釣りに誘われたのだ。誘ってくれたのは、沖縄本島のGT船であるノアマリンのスタッフである新開雅寛さん。その他の釣行メンバーは、ノアマリンのスタッフの吉田さん、様々な場所に遠征に訪れている坂口さん、山本さん、大浦さん、今回の旅行会社「トラベルプロインターナショナル・アングラーズネスト(https://www.anglers-nest.net/)」の山田さんと自分の計7名だ。全員、初めてのドラード釣行である。釣行場所は、ドラード釣りで大型、そして釣果数ともに実績があるアルゼンチンとウルグアイの国境の川・ウルグアイリバーのコンコルディアにあるダムの下流域だ。

ドラードの釣り場となるダム。写真では分かりづらいが、ダムの下流側のため放水により、川のように流れている。ここにドラードが溜まる。水中には多数の岩があり、ヒット後にもたもたしていると、その岩でメインラインがやられてしまう。
釣行が決まり、その情報をアングラーズネストの山田さんに聞いたり、インターネットで探したりする。そこで分かったことを大まかに下に記しておきたい。これだけ分かれば、ある意味十分といえるかもしれない。
◎僕らの行く釣り場のダムの下流側は、ドラードが溜まっている場所ということ。
◎ヒット後はジャンプを繰り返し、最高のゲームフィッシュだということ。
◎魚が多いダムの近くは、1日にアルゼンチン側から2艇しか入れないということ。さらに週に4日しか探れないということ。ドラードは全てリリースがレギュレーションということ。
◎世界記録は、25.28㎏(55lb)で、僕らの行く場所でキャッチされていること。
◎釣行シーズンは、トップウォーターの速巻きが良く、そちらがメインとのこと。ダムの放水などにより、沈むプラグも必要ということ。
◎細軸のトレブルフックでは伸ばされ、潰されることがあること。口が堅く、ヒットしてもバレが多いこと。
◎歯が鋭く、周囲は岩が多いことから、リーダーがボロボロになることが多いこと。アングラーによってはワイヤーリーダーを使用すること。さらに岩による擦れを考え、メインラインもPE5号、6号と太めが良いこと。
◎ドラードは顎の力が強く、プラグはウッドだとすぐにボロボロにされること。
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ヒット後はジャンプを繰り返す。小型でも大型でも、激しいジャンプ。ボートの近くに寄せてきても飛ぶ。大型となれば迫力満点。最高のゲームフィッシュだ。
これらの情報からタックル類を用意していく。まずはロッド。軟なロッドだと大型のヒット時に走りを止めることができず、岩による擦れの危険性もあるため、バットにトルクのあるモデル、マングローブスタジオのアヴァロンAV-66B/MH、AV-70B/MHの2本をセレクトした。このロッドは3ピースモデル(仕舞寸法70.5cm、77.5cm)であり、大型のスーツケースであれば斜めにして入る。ただ、自分が普段使用している大型スーツケースには入らなかったため、ハードロッドケースで持ち込むことにした。特殊荷物となるロッドケースの長さ制限は、三辺で320cmなので余裕でクリア。荷物類に関しては、今回は23㎏を2個までとのことで、ロッドケースにロッドを入れてもスペースの空きがあったので、ルアー類、ライン(リーダーと替えのPEライン)を収納。これで少しでもスーツケースの荷物を分散させて重量を抑えた。その他の釣り具の持ち物に関しては、下の写真を参考にしてほしい。その他、着替え、釣りをするときの靴&サンダル、撮影道具、薬類、電源プラグ関係、パソコンが持ち物。撮影道具とパソコンは手荷物だ。

ロッドは、マングローブスタジオのアヴァロンAV-66B/MH、AV-70B/MHを持ち込んだ。3ピースモデルで、大型のスーツケースなら入るが、自前のスーツケースに入らなかったために、ハードロッドケースに入れて運んだ。
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ロッドケースを持ち込むことになったため、荷物を分散させるためにロッドケースにリーダー、ルアーを収納。なんと、リーダー、ラインのスプールはロッドケースの上部にジャストフィット。ルアーは100均で購入した袋に入れて、ロッドケースに詰め込んだ。
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リールは、ダイワ・タトゥーTWの300XH、400XHを使用。XHは速巻きでの誘いを考えてセレクト。ヒット後の巻き上げパワー、抵抗の強いシャッドの使用でXGはどうかと思ったが、グイグイと巻き上げられた。メインラインは、岩などの擦れ、大型のヒットを予想してPE4号、5号。リーダーはナイロンの80lb、100lbをメインに、歯や岩での擦れ対策にナイロン120lb、フロロカーボン100lbを用意。さらにそれでも切れるようならと、先糸用にザイロンの25号も持ち込んだ。
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プラグは、事前情報通りトップ系をメインに用意し、沈める系も用意。7割はトップ、沈めるタイプは3割で準備(※これが後に失敗したと分かる)。フックは、トレブルを使用して伸びるといった情報をインターネットで目にした。トレブルはフッキング時に力が分散してしっかり刺さっておらず伸びている、また顎の硬いところに針先が立つと判断して、シングルフックでカンヌキに掛けるということを考え、アシストフックタイプを製作して持ち込んだ。シングルフック化により、プラグの動きが変わる場合は、オモリで調整。あとは釣り場で、どのようなフックが良いのか様子をみることに。
いざ、アルゼンチン・コンコルディアへ。
12月28日、午前10時過ぎに羽田空港にメンバーは集合。ここから2日近い移動となる。まずは、13時の便でロスアンゼルスに飛ぶ(10時間)。到着して3時間後に国内線でマイアミへ飛び(5時間30分)、空港で6時間ほど待機してからアルゼンチン・ブエノスアイレスへ(9時間)。さらに、車で5時間ほど移動し到着した。結果として自宅を出発してから、43時間ほど掛かっただろうか。
ちなみに現地通貨はペソ。食事はロッジで朝昼晩と出ることから、現地通貨は使わないと判断。空港ではカードが使えるので、チップ用に用意するドルを多めにして持ち込んだ。ただ、帰りの車移動で立ち寄ったパーキングエリアのハンバーガ店ではペソしか使えず(行きは使えたのだが)、誰もペソをもっていなかったため、この時だけは途中での食事はできずに、空港までの移動となった。今回の釣りではペソは使うタイミングがほとんどないため、両替するか判断に困るが、使わなかった場合に帰りの空港でお土産を買う金額くらいは両替しておいても良いかもしれない。
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写真左は今回のメンバー。空港から手配していたタクシー2台に分かれて、宿泊先のロッジに移動。途中、休憩を一回挟んで5時間。道中の景色は、ほぼ右の写真のように草原。たまに馬や牛、羊が現れるだけ。
ロッジでの生活
ロッジは、2人1部屋で宿泊。水洗トイレ、シャワー、クーラー完備で快適な部屋だ。食事は全て食堂で食べる。ビュッフェ形式がメインとなる。ちなみに牛肉の消費量が、世界2位のアルゼンチン。毎日ステーキかと思いきや、ラムや魚料理などもあった。麺、米も出た。ただ、やはり肉が多く、味は濃い。そして野菜は少ない。ちなみに飲み物は、冷蔵庫にあるものを飲み放題。ミネラルウォーター、ソーダ、ペプシ、ファンタ、アルコールはビールとワインだ。ビールもワインも美味しい。初日は、到着してからシャワーを浴び、すぐに皆で乾杯して食事。翌日からの釣りの準備をして、倒れるように寝床へついた。
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宿泊のロッジは、近年建てられたもので綺麗な建物。以前あったロッジは、川沿いにあったようだが、流されてしまったとか?
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2人1部屋で宿泊。シャワールーム、水洗トイレと、水量はそれなりにあり問題なかった。衣類などは、指定のカゴに入れておけば毎日、洗濯もしてくれる。
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食事は毎回、宿泊部屋の横にある部屋で楽しむ。飲み物は冷蔵庫から自由に。お酒はビールとワイン。アルゼンチンはワインが有名。
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ロッジの綺麗な庭。朝早く出てみると、近くで飼われていると思われる馬が来ていた。
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食事は肉料理が中心。魚が初日だけ出た。牛肉の一人当たりの年間消費量が世界2位の国なので、牛肉ステーキばかりだと思ったら、豚、鳥、ラムとバリエーションがあった。味は濃い目。朝は、パンと卵、ベーコン、ハムなど。
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大晦日、ラムを一匹丸焼きに。半日かけて焚き火でじっくり焼いてくれた。
ちなみに釣りは、朝ゆっくりと食事を済ませてから船着き場へ移動し出船。お昼にロッジへ戻り、ランチをしてから15時まで休憩してから午後の釣りに。午後は19時前までやってロッジに戻る感じだった。20時近くまでは明るい。釣りは4日間。船はダム付近を探れる2艇と、ダム下を探る1艇に分かれる。皆がダム下を平等に狙えるように、乗る船をローテーションしていく。
また訪れた年末年始のアルゼンチン・コンコルディアの気候は、日本と反対になるため夏。朝、夕方以降は涼しく、日中はうだるような暑さ。日差しも強い。ただ、湿気は少なく、日陰は心地よい感じであった。
実際の釣りについては、次の記事【②実釣編】で。いよいよドラードとの出会いである。
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今回、7名での釣行であったため、ボートは3艇。右、中央がダム近くを探れる船。2~3名で釣りができる。左はダムの少し下流域で釣りをする。今回、この下流域は厳しかったが、僕らが帰ってしばらくしてからは、いろいろな魚が釣れていたようだ。
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写真は今回の釣行に誘ってくれた同行の新開さんと吉田さん。このサイズは、中型。次の記事では、実際の釣りについてと、迫力ある写真をお伝えしたい。