ラインテンションを掛けつつ、熱による強度低下を抑える

釣り糸にダメージを与えずにリールに巻く
魚矢×スタジオオーシャンマーク「糸巻工場」2023年NEWモデル

リールにラインを巻く作業は、釣り人にとって必要な作業。ただこの巻く作業をしっかりと行わなければ、トラブルに繋がり、やっとの思いで釣れた魚を逃すことに繋がることもある。そこで誕生したのが魚矢の糸巻工場やランテンショナーIK500。2023年、このラインテンショナーが更に進化、アイテム追加で登場。夢のサイズの魚を獲りたいと考えている人は、オススメのアイテムといえる。そこでその新作について、製造しているスタジオオーシャンマークのスタッフに、話を伺った。

釣り糸にダメージを与えずにリールに巻く<br>魚矢×スタジオオーシャンマーク「糸巻工場」2023年NEWモデル

スプールへの糸巻きは、ライン強度を落とさず巻きたい!

リールにラインを巻く、巻き換える際には、しっかりとテンションを掛けなければならない。フワフワにラインを巻いてしまうと、大型の魚がヒットした時にラインが喰い込み、さらに重いジグを使用した場合も同様に、ジグの重さ等でラインが喰い込むということが起きてしまう。またキャスティングゲームではキャスト時のライントラブルにも繋がってしまう。

ソルトウォーターでルアーフィッシングをする際、メインとなるのは引っ張り強度があり、細いことで潮の影響を受けにくいPEラインを使用するが、ラインの性質としてキズや熱に弱いという弱点がある。そのため、スプールに巻かれたラインに喰い込んでしまうと、その摩擦熱で強度が低下、さらに喰い込んだことでラインブレイクに繋がることもある。またその他のライントラブルも起こりやすくなる。さらにしっかりとテンションを掛けて巻かなければ、リールごとに設定されているランキャパシティ通りにラインを収めることができないこともあるだろう。そこで適度なテンションを保ったままスプールに巻くことになるのだが、これが簡単ではない。そこで2013年に、魚矢からの依頼でスタジオオーシャンマークが製作し、発売されたのがIK500だ。

このIK500が登場するまでは、ラインを巻く際に、販売時にラインが巻かれているプラスチックスプールを両サイドから布などを使用して抑えてもらったり、自分一人で巻く時にはプラスチックスプールの両サイドからテンションを加えられる器具を使用したり、リール手前でライン自体を布や指で押さえたりしてラインを巻くのが一般的であった。ただそれでは、一定のテンションを保つことが難しく、さらにラインを抑えた場合は、そこに熱が発生して、せっかくの新品ラインを強度低下させてしまう。「熱を与えず、ラインの強度を低下させずに、一定のテンションを保ったまま巻くことはできないものか?」。そんな釣り人の要望に応え発売されたのがIK500であった。

実はこのIK500の発売の前、「糸巻工場」という名で、テンショナー、ボビンスタンド&リール装着の台座がセットになったフルパッケージモデルのIK1000を登場させたのだが、当時は高価な製品という認識もありプロショップ等で業務用に使用される感じであった。ただ、その良さから自宅でも使用したいというアングラーからの意見もあり、その後に自宅のテーブルや作業代にセットすることで、しっかりとした糸巻きを可能にするテンショナーだけのIK500が発売。さらにラインホルダー&台座のみのIK700、改良を加えたIK750 ver.2と発売され、これまで多くのプロアングラー、ショップがテンショナー、ボビンスタンド&台座がセットになった「糸巻工場」を使用してきた。

なかでもプロアングラー、特に大物相手の釣り人は、ラインをスプールに巻く作業が慎重である。そして大物狙いの釣行では、新しいラインをいくつものスプールに巻く。なぜなら、掛かった大型魚は、なかなか会えないサイズの可能性もあるため、ラインブレイクで失敗したくないからだ。そこで、糸巻工場の出番。テンションを掛けつつライン強度100%でスプールに巻いて挑むのである。そんな糸巻工場が2023年、さらに進化させ、糸巻時のラインダメージを更に抑えられるモデルとしてラインテンショナーIK500ver.2、ボビンスタンド&台座のIK700BASE、さらに新作の小型のIK300COMBOが発売されたのである。

進化した糸巻工場。IK700BASEにIK500ver2をセットした状態で糸巻作業を行っているところ。IK700BASE、IK500ver2はラインに優しく、微調整が効くように進化している。

こちらは、持ち運びに便利なIK300COMBOを使用してラインを巻いているところ。コンパクトなのが一目で分かる。

より熱を発生させないラインテンショナー『IK500 ver.2』

では、IK500ver.2、IK700BASEはどこが進化したものなのか? まずラインテンショナーIK500ver.2だが、よりラインにダメージを与えないように進化させている。そもそもこのIK500のラインテンショナーは、大口径のドラムを採用し、熱が発生しやすい回転軸からまずラインを遠ざけ、さらにゴムを間に入れていることで回転軸の熱を遮断する仕組み。さらにドラム部分は、スピニングリールのドラグと同様の構造を採用しており、ラインテンションを調整できる仕組みになっている。もちろん、その数値は設定したら変わることなく最後まで巻き切ることが可能。ラインを指や布で押さえる簡易的な方法では、同じ力を掛け続けることは難しい。どうしても強い部分と弱い部分が出来てしまう。また、同じテンションが掛けられていれば、ラインを巻いている最中に休んだり、用事を済ませたりといったことで中断させることも可能なのだ。

ではNEWモデルは、どこが変わったのか? まずノブ部のスプリングを見直し微調整がより効くようになっている。また、テンショナーの右側にボビンスタンド、左側にはリールスタンドが装着されるが、テンショナーにラインが入る、出ていく際に、ラインを安定させる部分が、これまでのIK500ではコイル状のものを採用していたが、IK500er2ではこの部分をロッドガイドのようなセラミックリング仕様に。これにより、ラインの角度が付いてしまった時の糸のダメージを軽減するとともに、セラミック仕様によってリングの劣化によるトラブルを排除している。

テンショナーの中央にあるダイヤルを回して、ラインの出方を調整する。スタジオオーシャンマークのスピニングリールスプールの製造のノウハウを応用して製作されている。

上がIK500ver2、下が旧モデルのIK500。IK500ver2は、旧モデルのコイル状の糸受けから、セラミックリングを装着した形状に進化。よりラインにやさしい作りになっている。

よりスムーズにラインをテンショナーに供給、『IK700BASE』

次にボビンスタンド&リールをセットする台座となるIK700BASEだが、こちらもよりラインにやさしく、使いやすいように進化している。まず、今回のモデルはIK700 の進化したものであるが、フルモデルチェンジと言えるほど変更が施されている。これまでと見た目で大きく異なるのは、ボビンスタンド側と、リールをセットする側とが分かれるセパレート構造を採用している。また軽量化されている。これにより収納する際は、コンパクトになり、軽いことで出し入れもしやすい。

IK700BASEは、左右が分かれるセパレート構造。その間にIK500Ver2をビスでセットする作りとなっている。

こちらは旧モデルのIK500を装着したもの。旧IK500を装着する場合は、別売のジョイントアダプターを用意すれば装着可能だ。

さらに機能的に変更したのが、ラインが通り、ラインのブレを制御するローラー部分。ローラー部分は、縦ローラー、横ローラーで構成され、それがテンショナーを設置した時に、両サイドに配置される。これにより、ラインホルダー側から来るライン、テンショナーからリールスプールに繋がる部分でしっかりと制御。スピニングリールでは、大型になるほど上下左右にラインがブレる。また連結スプールのラインでは、斜めにラインがテンショナー方向へと流されていく。それらをこの部分で制御するようになっているのだ。

テンショナーIK500ver2からリールスプールへ伸びるライン、ラインホルダーからテンショナーに入っていく部分は、縦、横のローラーを組み合わせてラインを制御。

さらに今回のIK700BASEは、上の写真のようにラインが触れそうな箇所には角を取った加工も施している。万が一、ラインが触れた時にキズが入らないようになっている。またこのIK700BASEには、上の写真で紹介したように従来品のIK500をセットすることも可能。その場合は、別売のネジが必要となる。もしもIK500だけをすでに持っている人なら、IK700BASEだけを購入する選択肢もあるだろう。

ちなみに、IK500er2とIK700BASEのセットでは、PE2号から15号までのラインに対応する。青物狙いから、夢の特大ターゲットまで活躍するモデルだ。

連結対応シャフトも付属されている。上下の蝶ネジで位置を調整できるので、ローラーと角度を付けずにラインを送り出すことが可能だ。

ボビンスタンドには、ドラグワッシャーを挿入。しっかりとプラスチックスプールを押さえつつ、ワッシャーにより熱を発生しにくくしている。

遠征先でも活躍する『IK300COMBO』

2023年、新作として発売されたのがIK300COMBOである。このモデルは、まず見た目で分かるように、これまでのモデルよりかなりコンパクトになっている。使用する際に、セットされている削り出しクランプを外して、蝶ネジで可変部分を動かし、クランプ(万力)で机などに固定することで、遠征先に持ち込み使用することが可能。自宅ではコンパクトで収納しやすい。ちなみにPE0.8~6号に対応するモデルであり、PE6号までのキャスティングゲーム、ジギングのヒラマサ、キハダから、中深海、深海のスロージギング、シーバスなどのライトゲーム好きの方にはベストマッチ。ラインホルダーのピンは、連結ボビンで大量のラインを巻く人のために、延長シャフト(別売)も用意されている。

組み立て式で、かなりコンパクトになる仕様。持ち運びにも便利。このモデルなら、遠征先でラインを巻き換えることも可能だ。

組み立て

付属の万力を外したら、蝶ネジを緩めて動かしていくことで組み立てが可能。

ラインホルダー部分は、凸、凹があることでしっかりとハマり、長時間の糸巻でもズレることなく作業できるように工夫が施されている。

左が標準装備のシャフト。ただ連結ボビンのラインを巻く人もいる。そんな方のために、延長シャフトも用意されている。12連結にも対応する。

付属のクランプ(万力)は、マシンカット。しっかりとテーブルなどにIK300COMBOをセットすることが可能だ。

スプールにラインを巻く際の数値

ここまで、リールにラインを巻く際にはテンションを掛けつつ、ラインにダメージを与えないように熱対策が必要ということを書いたが、テンションを掛ける際、ただ高負荷を掛ければよいというものではない。使用するラインに対して負荷を掛けすぎると、巻いた時点でダメージを加えてしまう。ラインの強度によって、適した負荷が存在する。その数値は、スタジオオーシャンマーク推奨では、号数×0.7=設定㎏数というもの。例として、PE4号ラインなら、4×0.7=2.8㎏となる。この数値が、トラブルもなく、ライン強度も落とさない適正数値だという。

ちなみにリールスプールにラインを巻いていく際、まずは糸巻工場にラインをセットし、その時点でラインの放出される数値をハカリ(ドラグチェッカーがオススメ)で計測し設定。その後、ラインを巻き進んでいく。

テンショナーIK500ver2、またはIK500のダイヤルでテンションを調整しつつ、リール手前でその数値を計測。適正数値が出たら、糸巻きを開始する。

ちなみに、ここで紹介したアイテムは、どれもそれなりの金額である。ただ、長年使用することができ、さらにしっかりと均一に巻け、ライントラブルも少なくなり、何よりいざ大物がヒットした時に、より不安要素が無くファイトできるようになる。そして、記憶に残る大魚、夢の魚を手にできたならば、購入を検討する価値は十分あるだろう。何より、結果を残しているプロアングラーが愛用しているのだから、その価値は証明されている。購入する際、普段利用しているショップさんに無ければ、魚矢と取り引きがあるか確認し、取引があれば注文で入手可能だ。

販売価格
IK500ver.2 49,500円
IK700BASE 70,000円
IK300COMBO 49,000円
※販売元:株式会社 魚矢

糸巻工場 解説動画

文:アングラーズタイム編集部
取材協力:スタジオオーシャンマーク
https://studio-oceanmark.com/
製品詳細:魚矢
https://uoya-dw.com/item/5014/

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