ライト設定ながら、タフさも併せ持つ!
TENRYU
『JIG-ZAM WILDMARK』
ロッドブランクを手掛けるTENRYUが作り出すロッドには、様々なものがあるが、その中でオフショアの近海ジギングロッドの代名詞と言えるのがJIG-ZAMだ。ここでは、2022年春に新発売となったモデルの開発のきっかけ、その性能についてTENRYUスタッフの舟木雄一氏にまとめてもらった。
ジグザム・ワイルドマーク開発の舞台裏
TENRYUの近海ジギング向けロッドJIG-ZAM(ジグザム)は、個性の異なった3種のシリーズで構成されている。その中でも2022年の春に発売されたのが、JIG-ZAM WILDMARK(ジグザム・ワイルドマーク)だ。
既に色々なメディアで、コンセプトから各機種の特徴などを紹介しているので、どういったロッドなのかご存じの方も多いのではないだろうか。この記事に辿り着いた方は、既にワイルドマークのユーザーの方かもしれないし、今まさに購入を検討されている方もいるかもしれない。
今回は目線を変えて、ワイルドマークの開発に至った経緯や実際にテスト中の舞台裏を開発者の目線から明かしていきたい。
ライトタックル化の流れ
近年のオフショアシーンを俯瞰的に見てみると、だいぶライトタックル化の流れが進んできたように思える。スロー系ジギングやスーパーライトジギングといった、ライトタックルを主軸にした釣法は全国のターゲットに合わせて定着したと言えるだろう。ビンチョウマグロ(トンボ)をターゲットとしたトンボジギング(トンジギ)も、電動タックルとスロー系ジギングの2極化で人気が出たのも記憶が新しい。
TENRYUでもHORIZON-MJや、HORIZON-LJといったライト系ジギングロッドの人気は凄まじい物を感じていた。20年ほど前にライトジギングは、タチウオをはじめとして一気に人気なカテゴリーになった。一時的に釣果が落ち着き人気も横ばいのように思えていたが、タイラバやスロー系ジギングが台頭し、スーパーライトジギングが人気を博するとオフショアのライトタックルが劇的に進化してきたように思える。ロッドは繊細ながらも強さを持ち、リールは小型でトルクフルに、ラインは細くても強く、ルアーもタングステン製の小型メタルジグが後押しをした。
そこで、TENRYUの社内で持ち上がった企画が近海ジギングのライトタックル化だ。スローやSLJとくれば、近海タックルがライト化されるのは必然だと考えた。
若手の熱意で開発がスタート
ロッドの企画開発に関わる私もライト化の流れを感じており、新作のジギングロッドを画策していたところに若手スタッフUが手を挙げた。
彼からの提案は、伊勢湾を主戦場とした『近海ライトジギングロッド』であった。提案内容は荒削りな面はあったが、伊勢湾だけではなく全国的に流行の可能性もあるので、企画開発のミーティングを経て開発を始めることになった。そこで今作の開発には、発起人であるスタッフUに企画からテストまでを任せてみようと考えた。
正直なところ私が開発を進めたい気持ちが大きかったのが本音だが、手を挙げた若手のホープに期待したい面もあったし、開発に関わり始めた頃の自分を思い出していた。スタッフUにすれば初めてのロッド開発なので段取りはコチラで指示をするが、あくまで機種の選定から実釣テスト、変更の指示出しなどは彼に一任してきた。ロッド開発の責任は重大ではあるが、完成した物が認められた時の実感は開発に関わった事がある当事者しか味わえない。成功した時の楽しみを彼にも味わって欲しかったからだ。
テストを繰り返した、起案から発売まで
当時の書類を振り返ってみると、起案は2019年の秋となっており、最終サンプルの完成が2021年秋の事だった。およそ2シーズン、三重県(伊勢湾・伊勢鳥羽)、石川県(輪島沖)、福井県(三国沖)など各地でテストを行ってきた。プロモーションの為に一緒に実釣ロケに同行させて貰い、三重県の伊勢鳥羽のフィールドでは1週間に渡って各誌の取材でワラサを爆釣したのも良い思い出だ。
JIG-ZAM WILDMARK は2022年の春にリリースとなり、すっかり人気シリーズの仲間入りを果たした。ロッドの良さは発起人であるスタッフU本人が一番分かっているだろうし、写真投稿などでユーザーの方から色々とお話を貰って人気を実感しているはずだ。
今後、ライトタックルの人気はまだまだ伸びる傾向にある。勿論、ヘビータックルでなければ獲れない魚はいるので、適材適所でタックルが進化していく事だろう。次の一手が何になるのか、その開発の裏にある与太話をお伝えするのが今からの楽しみだ。