開発者自身の武器になるものを具現化する
小野誠×JIGRIP始動!
青物対応ジグ「SHIOU(シオウ)」
久米島テスト釣行
ジギングの楽しさ、奥深さを釣りメディアで伝える小野誠さんが立ち上げた釣具メーカー「JIGRIP」。これから様々なジギングアイテムが登場してくる予定だが、その中で最も身近なターゲットといえる青物を対象としたジグの開発がスタートしている。その名も「シオウ」。そのファーストプロトを持ち込み、2024年夏に久米島へキハダを狙いに釣行。NEWジグの解説とともに釣行の様子をお伝えしたい。
INDEX
小野誠のジグ開発。サクラマスジグからスタート
長年、様々なジギングを追求し続けている小野誠さん。これまで釣り具の開発、そしてその釣り具を使って釣りメディアでも活躍してきエキスパートだ。そんな彼が、2024年の2月に新しいメーカー「JIGRIP(ジグリップ)」を立ち上げた。小野さんのこれまでの経験を生かし、多くのアングラーが使いやすく、そして釣果を得られる釣具を開発しているメーカーだ。話は今回の久米島釣行から少しそれるが、JIGRIPが開業して最初に開発をスタートしたのが「AMENOUO」というジグ。サクラマスジギング専用として作り上げたジグであった。
AMENOUOは、小野さんがここ数年、サクラマスジギングに熱中していることもあり、釣行での発見を得て以前から頭の中にあったジグを形にしたもの。JIGRIPの開業がサクラマスシーズンの2月ということもあり、すぐにサンプルを作り、北海道、東北で実釣テストを繰り返した。
「ジギングで狙える魚はいろいろいますが、それぞれどんなジグの動きに反応するのか? ではサクラマスはどんなジグの動きに対応するのかを以前から考えていました。ジグの動き、そしてロッドの動き、リーリングの仕方などをまずは考察。サクラマスのバイトに対して何か法則的なものは無いかと。そこでリアバランスのジグに釣り負けることが頻繁にあったのです。サクラマスのジギングはワンピッチでフワフワとジグを動かし、フォールを長めに入れて誘うパターンが多いのですが、そのフォールの動きが重要だと言うことが分かりました。センターバランスのジグを使用していた自分は、ジャークの後にラインを張った状態でテンションフォールさせていくとテールから綺麗に入ってくれるのですが、そのままフォールさせるとユラユラと失速したフォールになってしまう。テンションフォールではサクラマスがいい反応を見せるが、失速フォールにサクラマスの反応が悪い。そこでJIGRIPのファーストジグとなるAMENOUOは、リアバランスデザインで取り組みました。リアから綺麗に素早くフォールする動きは、センターバランスのジグでもテンションフォールで演出できるものの、波や船の揺れによって毎回確実に綺麗に演出するのは難しい。そこで誰がどんな入力をしてもテールから落ち、斜めに素早くスライドする性能を目指して調整していきました。実際、このジグで良い結果を釣行の度に得られ、考察が確信へと変わっていきました。サクラマスジギングは、しっかりとジグが動き続ける性能が大切であり、ジャークの後のフォールの動きによって、サクラマスにより見切られにくい性能になります。AMENOUOはそんなジグです」
JIGRIP初の製品となったサクラマスジグのAMENOUO。2024年11月中旬にショップに並ぶ予定だという。その性能、効果については、改めて小野さんのサクラマスジギングとともに紹介したいと思う。
JIGRIP小野誠さんは、ジギングアングラーとしての釣りの現場での技量もさることながら、彼の特筆すべき点はジギングタックルの試作能力にある。ジグは自身でモックアップを削り、ラバー型の成形、鉛鋳造、ホロの熱転写、塗装に至るまで自宅の工房で試作品を作る。何とブランドロゴのエポキシポッティングアイまで自分で作ってしまう。通常のメーカーならアングラーとクリエイターは別々の仕事であるが、彼は現場で製品に対して感じた自分の感性を、直接本人がジグに反映させる。人に任せていてはどうしても遠慮や妥協が生まれる。彼はアングラー小野自身が納得出来るまで、もう一人のクリエイター小野が何度でも試作をやり直すのだ。さすがにフックやロッドは自宅で試作できる設備はないが、彼の住まいである兵庫県播州は、播州釣鈎と呼ばれる釣り針工場やロッド工場が集まった土地。頻繁に工場へ出入りして、自身が現場で培った経験や知識を伝える。ジギングフックやジギングロッドの試作打合せが工場の担当者と直接出来る立地を「JIGRIP」は拠点としているのだ。
さて話を戻して、ここからは今回は第2弾目として開発中の青物ジグ「SHIOU(シオウ)」ついて。小野さんは、ホームとなる兵庫県明石沖のブリ、サワラをはじめ、日本海、瀬戸内海のブリ、そして玄界灘のヒラマサ、沖縄や三重沖でのキハダ、遠征でのカンパチと様々な場所で青物ジギングを行ってきた。その経験をもとに開発しているのがSHIOUだ。身近な海から遠征まで出番が多いのは、青物をメインターゲットにした汎用性の高いメタルジグ。そのため小野さんは「ジグメーカーにとって、必ず必要なジグ」と言う。
SHIOU(シオウ)の名前について
ところで、このSHIOUと名付けられたジグ。名前の由来を聞いたところ小野から興味深い話がでた。江戸時代の学者である寺島良安によって作られた「和漢三才図会」という日本初の百科事典があり、魚類について記された中に「シオウ」が登場するという。文面によるとおそらくカンパチだと思わる内容ではあるが、「シオウ」に用いられた文字が面白い。鰤に続いて魚偏に王と書いて「シオウ」と読ませる。江戸時代の学者が、鰤によく似た魚をこのように表現したのだ。鰤よりも希少で大きく力強い魚に。鰤と魚の王を意味する「シオウ」。現代のジギングアングラーにとって、何と心躍る文字だろうか。
久米島に持ち込んだSHIOUのプロト
さて、SHIOUのテストで最初に訪れたのは久米島となった。久米島は小野さんが毎年計画している釣行。久米島といえばキハダ。国内で最も安定した釣果が望める場所である。ジギング、キャスティングともに狙えるが、バイト、キャッチの確率が高いのはパヤオ周りのジギングだ。もちろん小野さんは、ジギングメインで探る。
久米島のキハダジギングは、船長の指示ダナに素早くジグを落として、長めのフォールを入れたスローピッチジャークで探っていくのがメインのヒットパターン。ヒットが無ければ、数回ワンピッチでしゃくり上げてジグの存在をアピールするとともに、タナを大きく変え、また大きめのしゃくりとフォールで探っていくというのがセオリーだ。ジグのウエイトは200~300gがメイン。そのため小野さんは240g、260gのSHIOUのプロトを作ってきた。
「いろいろな形状のジグがある中で、JIGRIPの中で中心となるジグを作りたいと思い開発したジグです。中心とは、パイロットジグとして使えるジグです」(小野)
ジグには極端な特徴を持ち、パターンにハマった時に強いものと、様々な動きを演出できてパターンをみつけていくことができるジグがある。フォールの動きに特化したAMENOUOは前者、SHIOUは後者になる。
「ジグはオートマチックに動き魚をバイトさせられるものと、アングラーの操作次第でバイトに繋げられるものがあります。ジギングの面白さのひとつに、このアングラーの操作次第というのもあって、操作によってその日、その時の当たりパターンを探し、そしてバイトに繋げられた、連続ヒットに繋げられたというのもあります。そんなパターン探しができる、汎用性が高いジグを目指しています」
形状としてはセミロングのセンターバランス、左右非対称。フックセッティングやロッドの動かし方、ロッドの硬さなどによって様々な動きを演出できるという。巻き上げでダートさせることもできれば、フックセッティングやロッド操作でダートをあまりさせない動きもでき、フリーフォールによるヒラヒラとした動き、テンションフォールによるスライドフォールも演出できる性能。アングラーの操作、アイデア次第で動きを変化させられるジグだ。
「その日に一番反応する動きをみつけるために、SHIOUのようなある程度色々な動きを演出できるジグで探りつつ、答えが見つかったら、その動きを得意とするジグで攻めるというのが理想だと思います。SHIOUを使っていてダートさせるのが良いと思ったら、確実にダートするジグに替える。スーっと落ちるフォールが良ければリアヘビーに替えるといった感じで。SHIOUを中心にして探っていき、当たりパターンのヒントを見つけ、そこから展開していくのが理想だと思います」
久米島釣行でのタックルと攻め方の基本
今回の久米島は、3日間の乗船で予定を組んだ。船長からは出船前に「あまり状況が良くない」と聞いていた。今回の出船グループの前に入ったアングラーが、たまたま知り合いだったこともあり前日に連絡してみたが、その返事も「厳しかった」とのこと。ちなみにメンバーは、小野さんの釣り仲間3名とスタジオオーシャンマークの大塚隆さん。5名のうち3名は久米島キハダを幾度となく経験。残り2名も、他のエリアでキハダジギングは経験済み。状況が悪くても、魚さえいれば何とかしてくれるだろうと期待した。そして、厳しい状況を打破するために、数名がライトなタックルも準備した。
ちなみに、久米島キハダジギングは、30㎏ほどまでならPE3号を使用する。それ以上の大型の反応があり、ヒットの可能性が高そうな場合は4号の出番。喰いが渋い状況では2.5号に落とすアングラーもいる。今回の小野さんのメインタックルは下記だ。
ロッド:JIGRIP・4軸ソリッドカーボンプロトロッド510-4
リール:スタジオオーシャンマーク L50HiR
ライン:XBRAIDオッズポート#3
リーダー:XBRAID FCアブソーバー#14
ジグ:JIGRIP シオウSHIOUプロトタイプ 230g
フック:JIGRIP GRIPHOLEグリップホール 3/0
そして準備万端でいざ出船。船長が判断したパヤオに入る。反応は140mから90mに出ているという。船長の合図で一斉にジグを投入し、150、160mほどまで落とし、指示ダナを通るように探っていく。
探り方の基本は、前記したように大きなしゃくりの後にフォールを入れるというもの。フォールでのバイトが多いため、フックはジグのリアにのみ装着。その理由は、上下に装着してもよいが、どちらかがフッキングした後に、もう片方が余計な箇所に掛かると、巻き上げのやりとりで苦戦することがあるからだ。また指示ダナの中での探り方として、その層を全て大きなしゃくりとフォールで探っていくのも良いが、5~10mほどワンピッチでしゃくり、その後に大きなしゃくり&フォールという動きを暫く繰り返し、またワンピッチでしゃくるというのも効果的。ワンピッチでキハダに気づかせ、フォールで捕食させるイメージだ。また、探っている間に他の層に反応が出て、船長から伝えられることもある。そのような時は、その層に素早くジグを入れることも大切。船長が言う層を皆で共有し合い探っていくのだ。
SHIOUプロトでキハダは順調にヒット!
初日、キハダの良型(20~30㎏)は4本のキャッチであった。ジギングで3本、キャスティングで1本だった。船長からのアナウンス、水面で跳ねるキハダを見る限り、出船前の予想よりも活性は高いと感じ取れた。そしてこの日、小野さんは終始、ジグの動きをチェックしていた。しゃくりでどのように動くのか、フリーフォールではどう動くか、テンションフォールではどんな姿勢を作るかを確認。基本の動きをまず知れば、そこからロッドの動きやフックのサイズ、ラインのテンションの具合などでジグの動きは調整できる。もちろんジグ自体も、より良い動きが出るようにここから小野さんは調整していく。
迎えた2日目、この日は初日よりもキハダの雰囲気が濃かった。パヤオに到着すると、良型のキハダが跳ねている。キャスティングタックルを持ち込んだ大塚さんは、すぐさまキャスティングで攻めていく。一方、小野さんは船長の指示ダナへジグを落とし、ジグの動きを巧みに操作しながら探っていく。するとまずは大塚さんのプラグにヒット。上がって来たのは25㎏ほどの良型だった。その後、しばらく時間が空いたが、小野さんにも待望のヒット。こちらは20キロ弱の少し可愛いサイズ。さらにその後、小野さんのジグのフォールにまたしてもヒット。慎重にやりとりしてランディングされたのは30㎏のほど良型であった。自身のジグが通用することが分かったとともに、サイズ的にも満足の一尾だ。
3日目、最終日も小野さんのSHIOUはしっかりと仕事をこなした。船中ファーストヒット得て、30㎏オーバーの良型をキャッチした。その後、同船者がキャスティングで2尾の良型キハダをキャッチし、全員安打で終了。小野さんは今回の釣行でSHIOUのファーストプロトの性能を十分確認できようだ。
久米島キハダジギング遠征釣行 前編
プロトジグSHIOUで、キハダマグロを狙ってみた。
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SHIOUのラインナップ
久米島釣行を終えた小野さんは、SHIOUの改良を進めつつ、様々な青物ジギングで対応するように各サイズのプロトを作製。そしてできるものから、テストを繰り返している。結果、SHIOUのラインナップは120g、150g、180g、220g、260g、300gを予定しているとのこと。このラインナップであれば、近海のライトなブリ、ワラサ、サワラから、ヒラマサ、タチウオパターンのブリ、遠征のカンパチ、キハダなど幅広く対応することだろう。発売は2025年の3月頃を予定しているという。これまで数々のジグを生み出してきた小野さんが、誰にでも扱いやすく、そして釣果に繋がるジグとして追求し、作り上げたSHIOU。発売が楽しみなジグだ。
InstagramやFacebookで、随時JIGRIP製品について公開中。ぜひチェックしておきたい。
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