シイラの聖地・相模湾、完全開幕!
2025年は“当たり年”の予感!
シイラゲーム【タックル&テクニック】
例年、梅雨時から姿を現し、ファンたちが“待ってました”とばかりに動き出す相模湾のシイラフィッシング。日本におけるシイラルアーフィッシングの発祥の地であり、夏の相模湾を代表する釣りだ。相模湾でコンスタントにシイラの釣果を得るにはテクニックを要する。だからこそ夢中になるアングラーが多い。そんなシイラフィッシングが2025年も開幕! 今季の状況と、これからチャレンジする人に向けたタックル&テクニック解説をお届けする。

シイラフィッシングのススメ!
オフショアキャスティングの基本が凝縮されたシイラフィッシング。
最近ではいきなりヒラマサやマグロのキャスティングから始める人も多いが、キャスティング技術、ルアーアクション、魚とのやり取り、ランディングのタイミングといった一連の動作を総合的に学べるのが、シイラ釣りの魅力だ。
ライトタックルで手軽に挑戦でき、キャストやファイトの回数も多いため、スキルアップに最適。地域によっては専門に狙う遊漁船が少なくなってきたが、シイラが回遊する海域なら、他魚種を狙う合間にも楽しむことができる(事前に船長へ要確認)。中でも相模湾は、日本一のシイラ釣りフィールドとして有名。相模湾には今でも乗合専門のシイラ船があり、週末に一人でも気軽に出船できる。
シイラはヒット後の走りが強烈であり、10kg超ともなると簡単には寄らない。ライトタックルを使えば、迫力あるファイトをじっくり楽しめる。ただし、相模湾のシイラは日々プレッシャーを受けており、簡単には釣れてくれない。それを攻略するのが、テクニカルなゲームとしての面白さでもある。

強過ぎるタックルは、釣り味が半減するだけでなく、細かな誘いも行いにくい。軽量ルアーでの飛距離も出せない。シイラフィッシングに合ったタックルでなければ、コンスタントに釣果を得るのは難しいのだ。
2025年の相模湾は大型が期待できる
今年、シイラフィッシングの乗合船を出している平塚の庄三郎丸では、5月下旬にテスト釣行を行った。そして、この時にシイラは相模湾内に入っているのを確認できた。ただ、この時点ではまだ数は少なく、相模湾内にあるパヤオ(観測ブイ・浮き魚礁)に着いていただけであった。しかし日に日に良くなると予想して、数日後から乗合船を開始した。

5月下旬のテスト釣行では、このサイズがメイン。しかもまだ数が少ない状況であった。

パヤオにはシイラは着いていたが、その他ではなかなか姿を見つけられない状況。しかし、シイラの活性、水温との上昇から、すぐに上向きになると判断して数日後に乗合船が開始された。
その後、予想通り姿はより多くみられるようになり、パヤオだけでなく、潮目や流れ藻に着いた個体も確認できるようになってきたとのこと。そんなこともあり、6月下旬に再度、庄三郎丸に乗船させてもらった。
乗船日の前は、全長140cmオーバーの大型もキャッチされ、さらに潮目や流れ物(ゴミや藻)に着いている個体もかなり多かったとのこと。ただ、沖に出るとシイラはいるのだが、沈み気味の個体でなかなか反応させるのが難しい状況だった。大きめの流れものやパヤオに着いている個体は、すでに攻められてルアーを見切っているのか、なかなか簡単にはルアーを追わない。ただ、潮目や流れ藻によってはフレッシュなシイラもおり、そんなシイラはルアーに激しくバイト。しかも今年の特徴として、平均サイズが良く、さらに大型が多いのだ。この日は、最大で全長117cmのキャッチが最大であったが、その後は連日120、130、140cm、さらに150cmに近いサイズがヒットして賑わっている。
今年は、梅雨の長雨が少ない。数年前、梅雨の長雨によって、その後も良くないことがあった。しかし、今年は雨が極端に少なく、水温も順調に上昇している。それが大型の回遊に繋がっているのかもしれない。ただ連日の高気温、水温の上昇のしすぎによって喰いが悪くなる可能性もある。釣れているタイミングで、すぐに行動するのが一番ということだ。

この日は、特大は出なかったものの、良型が顔を出した。
タックルセレクト
ハイプレッシャーな相模湾シイラを攻略するためには、シイラにしっかりとルアーを見せ、そしてアクションで惹きつけ喰わせる必要がある。使用するルアーは、シンキングペンシル、ジャークベイト、フローティングペンシル、ポッパーとなる。最も出番の多いシンキングペンシルの平均サイズは110mm、120mm、130mm。ウエイトは30g、35gほど。このサイズのルアーを遠投し、しっかりとアクションさせるには、太いライン、強いタックルでは難しいため、PE2号クラスのタックルが基準となる。ロッドはPE2号クラスで、リールは5000番、6000番クラス。リーダーはナイロンの40lb、50lbをFGノットなど結び目が小さいノットで、短めの長さで結束する。リーダーの長さは、キャストする際にロッドの先からルアーをセットしたリーダーを垂らした状態で、リールスプールにPEラインとの結束部分が入らない長さだ。これはキャスト時のトラブルを少なくするためだ。またロッドの長さは仕立船であれば8ft以上でも良いが、乗合船となるとアンダーキャストが義務付けられているため、7ft前後が扱いやすい。

メインとなるロッドパワーはPE2号クラス。7ft前後のものが、乗合船では扱いやすい。また短いモデルのほうが、細かなアクションも入力しやすい。
ちなみに、今年2025年の大型シイラに対しては、ワンランク上のパワーのタックルを用意すると良いように思う。気難しい相模湾シイラを攻略するには、メインタックルは2号クラスだが、大型がいた時のために3号クラス、大型シンキングペンシル等もあると良いだろう。

メインはPE2号にナイロンリーダー50lb、60lb。ルアーフックは、バーブレスフックを使用する。

6月下旬の釣行時に、シイラが大型のトビウオを吐き出した。そこで次の釣行で170mmのシンキングペンシル(ボラドール170LS)を用意した上屋敷さん。狙いが当たり、見事大型を仕留めた。148cm、15.5kgのナイスサイズだ!
ルアーセレクト
シイラはトップウォータープラグで釣りたいと言う人は多いが、トップウォーターに反応するのは表層水温がちょうどよく、シイラの活性が高い状況の時。例年、シーズン初旬の表層水温が低い状況では、シンキングペンシルやジャークベイトなどの、少し沈むルアーがメインとなる。その後、水温が上がるとポッパーやフローティングペンシルに果敢にアタックしてくるようになる。そしてさらに水温が上がると、表層の高水温を嫌うため、やはりシンキングペンシルやジャークベイトが活躍するようになる。いずれにしても、沖に出てみないと状況は分からないため、どちらも用意しておくのが無難。シンキングペンシル、ジャークベイトなどの沈下系が活躍するのは6〜7割、残りをポッパー、フローティングペンシルと考えて用意しておくのが良いだろう。また、乗合船ではトラブルを防止することから、バーブレスフックが推奨されている。バーブレスフックを装着しておくか、カエシがある場合は、プライヤーでしっかりと潰しておこう。

メインルアーは、シンキングペンシル、ジャークベイトの11cm、12cm、13cm。小型ベイト対応、カツオ用に小型でありながら遠投性能の高いプラグも用意しておきたい。写真は、左上からサプライズ・スギペンシンキング110mm40g 、110mm32g。マングローブスタジオ・アトゥーラ120、ストライクジャーク120、マヒジャーク。写真右は、アトゥーラ90ヘビー(33g)。

活性が高いハイシーズンになれば、ポッパーやフローティングペンシルといったトップウォーターで楽しめる。ただ、これらが活躍するのは条件が揃った時。シンキング系をメインに用意しつつ、トップウォーターも数本というのが無難だ。
ヒットまでのテクニック
シイラ船では、潮目に沿って船を走らせながら流れ藻やゴミ、遊泳中の個体(フラツキ)を探していく。これらを乗船しているアングラーも船長と一緒に探す。流れ藻やゴミに着いている個体を狙う場合は、船はその手前で減速する。船が惰性で動いている状況では、ルアーをキャストして着水してからアクションを入れようとしても、しっかりと動かすことができない。まだ船が動いている状況で、いち早くキャストする場合は、着水後にとにかく速巻きで巻いてくる。しっかりとアクションしていなくても、水面に泡を出しながら疾走させるスキッピングの動きでシイラは反応してくることがあるからだ。また流れ藻やゴミ、パヤオにおいても、着水点は、すぐ近くのキワでなくても良い。キャスティングに自信があれば、より近くに落としても良いが、キワを狙いすぎて流れ藻などにルアーを引っ掛けてしまった場合、その場所は終了となる。その流れ藻にシイラが着いていれば、少し離れた場所でも着水音で反応することも多い。
また着水後にすぐにアクションを入れられるようにするために、サミングして着水させる。シイラが飛び出してきたら、すぐにアクション。シイラの遊泳層が深いようなら、シンキングペンシル、ジャークベイトを沈めてからアクションさせるのも良い。また、船の周りのシイラを目で見て狙い撃ちする場合は、シイラの泳ぐ方向の先にルアーを入れる。目の前でなく、少し離れた場所に入れるのが良い。ルアーアクションは、ルアーによって異なるが、基本はトゥイッチ。そのルアーをどのように動かすとシイラが反応するのか? それは、そのルアーの特性を知り、さらに経験しながら身につけていくしかない。
また船の走行中にフラツキを目撃した場合、大きな声でシイラがいたことを船長に伝え、船が動いていても素早くキャストする。そして素早く、回収するくらいの速度で巻き上げ、ルアーを少しでも動かす。フラツキはフレッシュな個体も多く、それだけで反応してくることも多い。

どこに投げれば良いか、瞬時に見極め撃っていく。流れ藻、潮目なら水面を観察しながら次々とキャスト。シイラを探し、姿を現したら、シイラの進行方向の先に的確にキャストしたい。
ファイト&ランディング
シイラがルアーを咥えたら、糸ふけがあればすぐに巻き取り、アワセを入れる。ただ、このアワセを早くし過ぎると抜けてしまう。ワンテンポ遅らせたほうがしっかりとフッキングに繋がる。そしてシイラはヒットした瞬間に走り始める。この時、無理に巻こうとせずに走らせること。ドラグの抵抗によって、適度に疲れさせる。この走りの際にラインブレイクをしないようにするために、ドラグは事前にセッティングしておく。ロッドを曲げた状態で、「ジリジリ」とラインが出るくらいがベストだ。数値であれば、使用ライン強度の1/3〜1/4程度だ。
そしてある程度走らせつつ、巻ける時はどんどん巻く。ラインテンションは常に保つことが大切だ。もしも船底方向に走ったら、ロッドを下げて対処。それでも対処しきれない場合は、周囲のアングラーに声を掛け、ミヨシやトモをクリアして逆舷に移動した方が良い場合もある。無理せず、船上を移動して対処したい。
また、シイラはジャンプをする。ジャンプ時にラインテンションが緩み、フックアウトの確率が高くなるので、ロッドティップを下げてジャンプを阻止する。
船にシイラが近寄ってくると、再び突っ込みを見せるため、そこで無理に巻かずに走らせ、徐々に寄せてくる。水面付近までシイラがきたら、水面から頭を大きく出してしまうと、シイラが暴れてフックアウトしてしまうことがある。船長や同船者が構えるネットの方向へ、水面直下を滑らすように誘導して掬ってもらうのが良い。ネットマンと呼吸を合わせることが大切だ。
この時、ロッドを縦方向に大きく煽ると、もしもルアーが外れた時にアングラーやネットマン側に飛んでくることがあるので注意したい。ロッドティップを下げてラインを巻き、シイラをネットに誘導しよう。ネットイン後は、すぐにリールのベールをフリーにする。ランディングされたシイラは激しく暴れるため、静かになるのを待ちつつ、フックリムーバーなどのフック外しのアイテムを使ってフックを外す。フックがネットに絡まることもあるので、その際は丁寧に外そう。

シイラの動きに合わせて、船内を移動することも。大型となれば、船を一周してしまうこともある。

シイラの動きに合わせて、慎重によりとり。ランディングはネットマンと呼吸を合わせることが大切。声を掛け合いながら行うと良い。

ネットイン後のシイラは暴れる。落ち着くのを待って、素早くルアーを外す。フック外し(写真はスタジオオーシャンマークのフックリムーバー)があると、より安心。
シイラは「腕の差」が出るから面白い!
シイラフィッシングの上手い人とはどんな人なのか? まずシイラをいち早く探す人。よく釣る人は、常に水面を意識し、フラツキの水面の波紋や跳ねを発見し、素早く対応する。さらにキャスト精度の高い人、アンダーでもロングキャストが可能な人、そして細かなルアー操作が上手な人、ファイトが丁寧な人、タックルバランスが取れている人、ドラグ調整や完璧なラインシステム、ルアーの選定、ベストなフックの選定(細軸でありながら強いもの)ができている人である。誰でもすぐに完璧に行うことは難しい。しかし経験を重ねることで、身につけていくことができる。そしてそのテクニックは、他のキャスティングゲームでも生かされる。シイラフィッシングが上手い人は、ヒラマサやマグロキャスティングも上手いと感じる。ぜひ、身近な海で腕を磨いてほしい。ちなみに相模湾・平塚の庄三郎丸では、シーズン中にシイラセミナーを数回企画している。気になる人は、ぜひ問い合わせてみてほしい。

庄三郎丸はシイラファンに人気の船。大型船でのびのび釣りができる。
https://www.shouzaburo.com/
TEL:0463-21-1012

シイラフィッシングの際にゲストで釣れるマツダイ。流れ藻に擬態しながら着き、ルアーが近くを通るとヒラリと動き喰ってくる。この魚のファンも多い。