連載 平松慶のオフショアワールドvol.21

オフショア実釣。春の日本海。
新潟、粟島沖でブリトップを楽しむ

日本海、新潟エリアはキャスティングゲームが熱い。GWが終わり、初夏を感じさせる神奈川県から一路新潟へ。ブリをトップウォーターゲームで楽しんでいる状況を聞き、さっそく現場へと向かった。初チャレンジとなる粟島周りのブリ狙い。ヒラマサとは違う狙い方を満喫。今回はその様子をお伝えしたい。

オフショア実釣。春の日本海。<br>新潟、粟島沖でブリトップを楽しむ

新潟県「粟島」。
初チャレンジとなるフィールド対策。

2月に行われた《新潟フィッシングショー》。私はピュアフィッシングのPENNリールブースに立ち、北陸エリアのお客様を接客させてもらったのだが、その際に感じたのは北陸エリアのオフショアキャスティング熱だ。ブースに訪れた方々は口々にブリトップが面白い、と言う。そしてアングラー方の熱が強く伝わってきたことから、今回の5月中旬の釣行へと繋がった。今回はフィッシャーズの店舗スタッフの方々と同行フィッシングをピュアフィッシングが企画。フィッシャーズ店舗は新潟を中心に地域に親しまれているお店。そこでPENNリールプロスタッフの私が実釣会にて技術披露を求められ、実現したというわけだ。こうしてイベントが決まり、5月中旬に新潟エリアへ。私が所在する神奈川県からは車で約4時間。高速道路を乗り継いでいけるのでアクセスも簡単。関東エリアからも良きフィールドとして親しまれている新潟エリアは、アクセスの良さもあるだろう。そんな事を考えながら新潟へと向かった。

今回、ブリトップを楽しんだフィールドは、新潟県の粟島周辺。佐渡島に続く人気ポイントのひとつ。

新潟フィッシングショーの時にPENNリールのブースに立っていると、ブリトップの話があり、今回のフィッシャーズの店舗スタッフの方々との実釣に繋がった。

船は新潟県北蒲原郡の東港に船を置く「シートランス」にお世話になった。

翌日の出船状況を18時過ぎに聞いてみる。すると朝まで風とウネリが残るとのことで、出船時間を遅らせることが決まった。午後からは凪。この一瞬のタイミングを逃すと再び翌日は荒れ予報になっており、チャンスは1日だけになりそうだ。我々は早々にタックル準備を済ませて翌朝に備えた。

タックルはヒラマサキャスティング時と同じものを用意した。事前確認では、PE5号クラスが主流と聞いたが、私はいつも通りのPE8号のバランスで用意した。これは、青物キャスティングゲームにおけるタックルバランスが常にヒラマサに標準を合わせており、ヒラマサを狙うスタイルでブリを誘い出してみたいから。経験の中で、ヒラマサを狙っていてブリをキャッチする事は多々あった。だから、ブリトップを想定すると、誘い出すまではヒラマサゲームと同じだという考え。ただ、魚がチェイスして来てからの喰わせや狙いを考えてやる必要がある、と判断。よってローカルスタイルよりもオーバーパワーな設定だが、気にせずにいつも通りのタックルバランスで挑むことにした。

地元の方々は、PE5号タックルが標準というが、自身はいつものヒラマサキャスティングの時に使用する8号タックルを使用。ヒラマサキャスティングでもブリは喰ってくる。オーバーパワーだが、この8号タックルでどのようにブリを確実に喰わせるか?を試したかったのだった。写真のキャスティングロッドは、PENNからリリース予定。リールは、オーソリティー、スラマー4DX。

「粟島」周りのキャスティングでの狙い方。

朝8時30分、新潟東港の船着場に到着。風が吹いて小雨が混じっている。何となく沖はまだ荒れているのでは? と気持ちが上がらない。しかし、フィッシャーズ店舗スタッフさんらは意欲満々。フィールドを熟知されている方々なだけに、状況が読めているようだ。今回お世話になるのは《シートランス》さん。優しい雰囲気の山田達也船長と中乗りのタカハシトモミさんが迎えてくれた。9時、ゆっくりと出港する。

ポイントとなる粟島までは約1時間。荒れ予報での出港であったが、東港を出ても多少のウネリはあるが、船は叩くことなく進むことができた。身体に当たる風が冷たい。北からの風で移動中は身体が冷えたが、ポイントに到着すると気持ちが上がってきた。山田船長から地形の状況や水深、魚探の反応などが丁寧にアナウンスされる。とても組み立てやすいアナウンスに、初ポイントの私も状況把握がしやすかった。さあ、キャスティング開始だ。

前記したように、今回はブリ狙いだがヒラマサを狙いの時に使用するロッドを握る。PENNスラマー4DX8500にPE8号、ルアーは21cmのプラグを選択した。これには理由があった。ファーストポイントでのプラグアプローチは、普段使い慣れているルアーで確認したかったからだ。潮とルアーのバランスや、魚からのコンタクト、アピールの様子などだ。これらを確認しながらチェイスがあれば、その状況にルアーチェンジをして魚との距離を縮めていきたかった。

ルグランタンゴ21cmのダイビングペンシルをキャストする。潮が寄れているポイント、それから私が立ったトモの位置から、全90度方向に探りながらキャストをしていく。波長を読みながら、プラグを動かしていく。波高を潜る様にタイミングを合わせてダイブジャークさせる。同じ方向だけでなく、潮で流れた位置となる右位置も丁寧に探ってみるのが大切だ。イメージとして、船はドテラ流しで流れているので、ルアーを通していない位置を把握しながら小まめに通すことがポイントになる。

ただ闇雲に投げるのではなく、キャストしてフィールドの状況を観察していく。いつものジギングと同じだ。水面か水中かの違いだけである。

ファーストコンタクトがあった。プラグが持ち込まれるのを確認して巻き合わせでフッキングし、寄せる。やたら魚が暴れているのがロッドから伝わってくる。嫌な予感通り、途中でバレてしまった。それほど大きくない魚がプラグのサイズと掛かりの甘さでバレたのだろう。しかし、これでひとつ組み立てが出来上がった。プラグのサイズを二回り小さくし、水面でしっかり掛けるような誘いをする事でバレは解消できるはず。朝イチからのファーストコンタクトは、バレてしまったものの私にとってはプラスになった。

参加したフィッシャーズ店舗ルアースタッフの方も、次々にキャスト。地元だけに、状況把握は早い。

平松流のマストパターン。

タックルを持ち変える。21cmプラグにミディアムタイプのKEI Hiramatsuキャスティングロッドから、プラグは同モデルの19cmに。ロッドは喰い込みをより良くしたファーストテーパーのKEI HiramatsuキャスティングロッドLMHに変更した。ミディアムタイプは荒れて波高のある時を想定したロッドであり、もう少しジャーク幅を短くし、じゃれつくようなバイトのブリに意識してチェンジした。ライン、リールサイズは全て同じ。PENNオーソリティー8500でギア比をノーマルにしたが、それ以外は大きく変わらない。

再びプラグをキャストする。ルアーサイズを小さくし、ダイブジャーク幅を短くしてルアーアクションを波長の間で見せるように細かく探る。ロッドティップで波高頭に突っ込ませながら、細かな引き泡を出す。次の波高がプラグに迫るタイミングで引き、ポーズを取る。リズムは波を見てロッドで操作する。時にリーリングで波を潜るようにも操作する。

ナブラ撃ちでなく、フィールドの状況を観察しながら、丁寧にプラグを操作しつつ誘い出しで探っていく。フィールド、魚の行動を考えるほど、釣りは面白くなる。

朝イチにポイントに着いた時からゆっくりと波高は落ち着いてきた。水深70m。船長が中層にかなりの反応が出ていると教えてくれる。プラグを引き、アピールをして波の間で焦らすような動きを出すと、ブリ(ワラササイズ)は元気にプラグ目掛けて飛び出してきた。ファーストテーパーなブラングだけに喰い込みが良く、ファーストキャッチとなった。

フィッシャーズのスタッフの方々もブリ(ワラサ)をコンスタントにキャッチ。

ここでヒラマサとブリの捕食スタイルの違いを少し解説したい。
ヒラマサはストローク幅の広い動きに反応が良い。捕食時の瞬発力が優れているから。一気にバイトし、力強くテリトリーに戻ろうとする。それに対してブリは群れで行動しており、ブリ同士で競争しながらの捕食スタイルになる。ヒラマサの頭から押さえ込むような捕食に対し、ブリは後方から啄むような捕食スタイルだ。ジギングではそれが顕著に現れる。

ヒラマサとブリが同調しているポイントで激しいジャークで誘えばヒラマサが口を使い、ワンピッチの一定リズムで誘ってやれば、ブリがバイト。釣り分けることができるのだ。バーチカルに考えるジギングに対し、サーフェス(線)で狙うプラグも、捕食スタイルは同じこと。だからひとつのプラグに何匹も揉みながら捕食してくるブリには、ストローク幅で誘い、喰わせは「見せる」を意識してやることで釣果が伸びるのだ。これがすぐに判断出来、釣果を伸ばすのが私の「マストパターン」となっている。

ブリトップ。今回はブリを狙ってキャスティングゲームを楽しんできた。中層の群れを上に向ける。ブリをルアーに近付ける。口を使わせる。こうした一連が理論上で説明できたのは、ジギングでヒラマサとブリの釣り分けをずっとやってきたからだ。サーフェスゲームには、シイラやカツオ、マグロやサワラと、それぞれ魚種に合わせた狙い方があるように、ヒラマサとブリもそれは明確にある。今回狙ったブリのサイズはワラサクラスではあったが、狙い方に特徴があることでとても面白かった。ベイトを喰い上げているナブラ撃ちではなく、誘い出して喰わす面白さ。今回は新潟、粟島沖で堪能させてもらったのだった。

今回の釣行では、このクラスは面白いようにルアーに反応してくれた。

キャスティングタックル

ロッド:PENN・Slammer PHSS-71M
PENN・Slammer PHSS-71LMH
(平松慶監修モデル)※プロトタイプ
リール:PENN・Authority 8500HS
PENN・Slammer DX 8500
ライン&リーダー:サンライン・X8フルコンタクト 8号+ナイロンショックリーダー130lb
ルアー:ルグランタンゴ190、210
偏光レンズ:グレンフィールド ZEQUE “STELTH”

お世話になったシートランスの山田達也船長とナカノリのタカハシトモミさん。

船:シートランス
山田達也船長 080 9532 2935
https://www.sea-trance.com/
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AUTHOR

平松慶

神奈川県座間市在住。 K-FLAT株式会社代表。オフショアゲームを中心に、自身で釣り具を開発しつつ、その他メーカーからのサポートも受け、プロ活動を続けている。国内外への釣行日数は、多い年では210日を超えたほど。長きにわたりメディアで文章を書き、枻出版社では「平松慶のヒラマサワールド」を発行。その他DVD多数リリース。

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